クリスマス特別編6
前回の話を呉羽目線でお届けです。
今、オレの目の前にはミカいる。
そしてベッドに腰掛け、お互い見詰め合っているという状況だ。
オレはこんな状況の中、今までになく緊張をしていた。
ずっとこんな日が来るのを待っていた。
でも、いざそうなると、こんなにも緊張するものなのか……。
いいんだよな……もう、我慢しなくてもいいんだよな……。
こんな所にまで邪魔なんて入る訳ないし、何よりさっきから、オレの中の煩悩(大和さん)が、
『よぅし、少年。頂いちゃいなさい!』
などと煽ってくる。
それに心の中で頷き、オレはミカにゆっくりと顔を近づけていった。
しかし、それは唇が触れる寸前で止められてしまう。
「あ、あああの! ま、待って下さい!」
「ミカ?」
何だ、嫌なのか?
そう思ってミカを見下ろすのだが、ミカは口を開けたり閉じたりしながら、何か言いたげにしていた。
やっぱり嫌なのだろうかと思い、無理強いはしたくないと、断られる覚悟をした時、ミカは漸く言葉を口にした。
「シャワー!」
「は?」
「シャワー浴びたいです!」
「あ、ああ……そっか。そうだな……。まずはシャワーだよな……」
オレはミカの言葉にホッとすると共に、
そうだよな。今日一日歩き回ったし、綺麗にしたいよな……。
と納得したのだった。
そしてオレは、ミカがバスルームから出てくるのを待っている間、物凄くソワソワとしていた。
微かに響くシャワーの音。何とも生々しい。
これから何をしようとしているのか、思い知らされるみたいだった。
「あ、そうだ……」
オレは自分のカバンを漁り、あの紙袋を取り出す。
サンタの爺さんから貰ったあれだ……。
何つーか、そのまま持ってきちまった……。
いや、だってな。爺さんは座敷翁だし、何となく先輩達じゃないけど、ご利益がありそうと言うか……。
うーん、まぁ……爺さん、ありがたく使わせてもらうよ。
オレは箱の中身を取り出すと、それを枕の下に忍ばせたのだった。
それにしても、ミカがシャワーを浴びたいと言ったのは、正直助かった。
オレは自分の手を見下ろす。
緊張のあまり震えていた。
そういう行為を女とする事は、別に初めてではない。
そして、今まで付き合ってきたどの女とも、ここまで緊張した事はなかった。
本当に好きになった相手には、こんなにも臆病になるもんなのかな……。
傷つけてしまうんじゃないかって、物凄く怖い……。
でも、抱きたい……。
抱いたら最後、めちゃくちゃに壊してしまいそうだ……。
「呉羽――」
その時背後から声を掛けられ、オレはみっともなくも動揺して、ビクンと肩を震わせてしまった。
振り返ると、バスローブ姿のミカが立っている。
思わずまじまじと見てしまった。
「――くん……あ、あの……シャワーあきました……」
ミカが小さい声で言う。
やはりミカも緊張しているのだろうか。
何よりも、そのバスローブの下は……。
そう考えると、今すぐ押し倒してしまいそうで、まともに見れなくなってくる。
「あ、ああ……分かった……」
オレはそう言いながら、何ともぎこちない足取りで部屋を後にした。
バスルームに入ったオレは、シャワーを浴びながら、ゆっくりと深呼吸をする。
落ち着けオレ……。
ミカは、オレ以上に緊張している筈だ。
なんたって、初めてなんだぞ、ミカは……怖いに決まってるよな……。
オレなんかよりもずっと。
オレはこれからミカを抱く……。
ミカの大切なものを…純潔を奪うんだ……。
何よりも、オレでよかったと思ってもらえるように、大事に…大切に扱ってやらなきゃな……。
オレは「よし」と頷くと、シャワーを止め、バスルームから出た。
寝室に行くと、ミカは窓辺に立っていた。
「ミカ?」
呼びかけると、此方に振り返ったミカが、オレの姿を見てほんのりと頬を染め、そしてフワリと笑った。
その様子に、それほど緊張している様子は見えず、少しホッとした。
「何してんだ?」
「えと……外を見てました」
その声も、思いの外落ち着いている。
オレのその隣に立つと、ミカと同じものを見た。
なるほど、オレは思ったとおりの言葉を口にする。
「綺麗だな……」
そうすれば、隣のミカも頷いた。
「はい、綺麗です」
そして二人で笑い合うと、ミカが此方を真っ直ぐに見て、こんな事を言った。
「呉羽君、ありがとう」
「ん?」
思いがけず礼を言われ、オレはミカを見た。
すると心からの微笑を浮かべ、更にこう言ってきた。
「こんな素敵なクリスマスプレゼントを、どうもありがとう……」
ああ、ミカらしいなとオレは思った。
そして、こんなミカが、これからオレに全てを捧げてくれるのかと思うと、嬉しい反面、その純粋な眼差しを受け、躊躇いが生まれる。
本当にちゃんと分かっているのだろうか?
オレ達がこれからする事を……。
分かってなかったらなかったで、これもまたミカらしいなと苦笑しながら、オレはミカに言った。
「オレ、これからお前の大事なもんを奪うってのに、お礼なんか言うなよ……」
すると、途端に真っ赤になってモジモジし出すミカ。
何だ? やっぱり分かってなかったのか?
でも、だとしても、こんなバスローブ姿のミカを見せられて、我慢なんかできる訳ないだろ?
「ミカ……」
そっとミカの肩に手を置き、そう呼べば、不安げな瞳とかち合った。
それを見て、オレもまた不安になる。
「……いいんだよな……」
それはミカに尋ねたのか、オレ自身に言ったものなのか……でもミカは黙って頷くと、そっと目を瞑ってオレのキスを待った。
胸が震えた。
オレを受け入れてくれる事が嬉しくて堪らない。
ふっくらとした柔らかな唇。
そっと触れれば、ミカも応えて自ら押し付けてくる。
優しくした唇を食んでやれば、ミカも真似して此方の上唇を食んできた。
また、唇を下でノックすると、薄く開いてオレを迎え入れようとする。
こいつは分かっているのだろうか?
今自分がどんな顔をしているのか……。
頬を染め、うっとりとした顔をして。
まるで、もっととねだる様なその吐息。
その全てがオレを誘い煽る。
愛しくて、狂おしくて。
オレは感情のままに、ミカをきつく抱きしめていた。
ミカが、それに答えるようにオレの首に手を回してくる。
柔らかなその体。
密着して、互いの心臓の音が伝わる。
この距離だと、オレの興奮も動揺も全てバレてしまうなと思いながら、この心地良さは離れ難く、更に体を密着させたくなる。
そして、時折聞こえてくる、唇の隙間から漏れ出る声。
もっと聞きたくて、オレは唇を離し、ミカの弱点である耳を咥えた。
「ひゃんっ」
そんな可愛い声を出して、一瞬体を強張らせた後、更に刺激を与えれば、体を弛緩させ、オレに必死になってしがみ付いて来る。
「あ…呉羽……」
漏れ出る吐息と共に聞こえた言葉。
最初は気のせいかと思った。
「呉羽……」
でも、今度ははっきりと聞こえた。
オレは目を見開き、ミカを見下ろす。
「ミカ? 今……」
「うん。これがクリスマスプレゼント……なんかちょっと恥ずかしくて、中々言えなかったんだけど……やっと言えた……」
プレゼント? これが……?
じゃあ、今日ずっと何か言いかけてたのは、もしかしてオレの名を呼ぼうとしてたのか?
ミカは恥ずかしそうにもじもじとした後、嬉しそうに、そして何とも幸せそうに微笑んだ。
それを見た途端、どうしようもなく愛しさが込み上げ、また感情のままにミカを抱きしめる。
「なぁ、もう一度……」
「く、呉羽?」
「もっと……」
「呉羽……」
何でこんなにも嬉しいのか……。
この聞きなれたはずのこの名前が、こんなにも特別に感じるのか……。
「呉羽…大好き……」
ミカがそう囁き、力を込めて抱きしめてくる。
ああ、駄目だ……。
そう思った。
オレ、ミカ無しではいられなくなってる……。
「ミカ、オレもだ……」
そう言って背中に回していた手を、髪の中に差し込み撫で上げる。
もう片方は腰に……。
オレの耳元で微かな喘ぎが聞こえた。
更なる声を引き出そうと、オレはミカのバスローブに手を掛けた。
しかし、その手をミカが止める。
やっぱり嫌なのか?
まだ早かった……?
抱きたくて気が狂いそうだけど、無理強いとかはしたくない。
「やっぱ、嫌か……? 嫌なら――」
「えっ、と…あのっ、違うの! あ、あのねっ! 勝負下着なの!」
オレが断腸の思いで手を離した時、ミカがそんな事を言った。
オレは思わず、
「……は?」
と、間の抜けた声を出してしまった。
「あのね? 乙女ちゃんがね、プレゼントしてくれたんです!」
「薔薇屋敷が?」
「うん…それでね? 呉羽をノックアウトしてって言われてるから、ちゃんと見て欲しいなぁ…って……」
ああ、あの屋上の時か……。
「ああ……ノックアウトって……薔薇屋敷が言ってたのってこの事か……」
というか、また薔薇屋敷によって、オレは邪魔されたのか?
「うん、あのね? 他にも色々試着とかさせられたんだけど……」
「し、試着?」
という事は、薔薇屋敷には見せたって事か?
オレは女相手だというのに、嫉妬してしまう。
「ピンクとか赤とか黒とかもあったんだけど……」
「……ピンク? 赤? 黒?」
いや、ちょっと待て。
彼氏のオレを差し置いて、薔薇屋敷はそんな色の下着姿まで見たのか!?
つーか、それ、オレも見たい……。
「結局はこれにしてね……?」
「っ!!」
そしてオレは、次にミカがとった行動に、完全にフリーズしてしまった。
なんとミカが、徐にバスローブを脱ぎ出したからだ。
そうして現れる、白くすべらかな肌。
均整の取れた見事なプロポーション。
「真っ白の方が、オーソドックスかなって思ったし……この方が、あなた色に染められてって感じじゃないですか……キャ~、はずかしぃ~!」
「………」
ミカは勝負下着の説明に夢中になっているのだが、オレの耳には全くそれが入ってこない。
「それにね? ここの飾りとか、可愛いと思って……」
オレはそのすらりと伸びた脚やら、キュッと引き締まった腰やら、柔らかそうなその胸やらを、食い入るように見つめてしまっていた訳だが、ミカは更に髪を書き上げ、背中を此方に見せた時、オレはハッと息をのんでしまう。
輝くようなその背中。
ミカが水着姿になった時でさえ、こんなにじっくりと見た事は無かった。
そして、弟の揚羽がミカと一緒に風呂に入った時に、ピカピカと称していた意味がよく分かった。
た、確かにこれはピカピカだ……。
いや、キラキラ?
「あのね、この背中の所に、天使の飾りが付いて……見えるかな?」
ミカが何か言っているのが聞こえるのだが、やはり耳に入らず、ボソリと呟いていた。
「……ピカピカだな……」
「え? あ、うん。天使の飾り、ピカピカして綺麗だよね!」
……? 天使? 何の事だ?
ああ、これの事か……。
漸く耳に入った言葉。
下着にぶら下がる飾りに目が留まった。
「いや、背中が……」
「へ? 背中?」
「すっげー綺麗だ……」
オレはまるで引き寄せられるように、そこに手を這わせた。
「え? ヒャア!?」
ミカの体がビクンと震えた。
すべらかなその背中を撫でながら、オレはそこに口付け、赤い印を残す。
「えっ、あうっ、その…くれ、は?」
戸惑うミカの声も気に止めず、オレは夢中になってキスマークを付けていった。
白い背中に、赤い花びらが散ったようで、物凄く扇情的で綺麗だった。
ふと視線を感じて目線を上げれば、ミカが此方を真っ赤な顔をして見下ろしている。
口をパクパクとしながら、青くなったり赤くなったりしていて、軽くパニックになってるようだ。
全く、こいつは無意識にオレを挑発する天才だよな……。
迂闊にも、凶暴な猛獣の前で、腹を見せている小動物となんら変わらないぞ。
それに恥ずかしがって真っ赤になってる様も、全身がピンクに染まって、これもまたいやらしいというか……。
「全く……お前、無防備すぎなんだよ……」
「え……? キャア!?」
オレはミカを背中から抱きしめた後、その体を抱き上げ、ベッドまで運ぶ。
その上に横たえると、背中に散った花びらが見えなくなるのが少し残念ではあるが、花びらを描ける場所は他にもあるのだとミカの姿を見下ろす。
「もう、止まんないからな……」
オレがそう言うと、ミカは恥ずかしそうに、でも笑みを浮かべながら、此方を真っ直ぐに見てこう言った。
「うん。私の事、食べてもいいよ、呉羽……」
その言葉が少しだけ可笑しくて、そして今はオレの望む意味合いであるのだと嬉しく思う。
ああ、全部食べるよ……。
骨も残さず、その魂さえも……。
ミカの全部、オレが貰うから……。
そうしてオレはまた、ミカの唇を味わうのだった。
少々忙しくて書く暇がなかった……。
お待たせしてすみません。
後一話くらいで終わりです。
この初えっちの内容はまた別に書いております。
18禁になってしまうかな。その時はムーンライト行きになるでしょうか。
その時は活動報告の方でお知らせするので、其方の方もよろしく。