第四十九話:恋人同士
「ああん、ここがお姉さまのご自宅ですのね! 乙女、感激ですわ!」
「うおぃ! 薔薇屋敷、靴脱げ!」
ミカの家に着くなり、薔薇屋敷は土足で家に上がろうとする。
「あら、そうでしたの? 駄目ですわね、わたくしったら」
おほほと笑いながら靴を脱ぐ薔薇屋敷。
空かさず杜若が、スリッパを何処からか取り出して、薔薇屋敷の足元に置いた。
いつも思うけど、何処にそんなもの隠し持ってんだよ……。
ぴったりとした燕尾服は、何かが隠してあるような盛り上がりも何も見受けられなかった。
そして杜若は、オレをチラリと一瞥すると、仕方がないという様にオレの前にスリッパを出してくる。
何だか態度が、著しく雑になったのは気のせいだろうか……。
「何のお構いも出来ませんが、いらっしゃいです……」
壁に寄りかかりながら、ミカが言った。
最初は杜若に抱えられていたが、マンションに着くと、鍵を開ける為に降ろされたミカ。
時折オレに寄りかかりながら(その時杜若が無言の圧力を掛けてきた)セキュリティーロックを解除してゆく。
「おい、ミカ? 大丈夫か?」
ボーとした顔のミカに、オレは声を掛ける。
するとミカは、嬉しそうにニコッと笑い、頷いた。
「はい、大丈夫です。呉羽君が心配してくれて、凄く嬉しいです……」
思わずオレは、バッと後ろを向く。
ヤバイ! 可愛い、可愛すぎる!
つーか、この可愛い生き物は、オレに好きって言ってきたんだよな。
晴れて両想いな訳で……ハッ、そうだ! って事は、オレ達恋人同士じゃね?
うわっ、何だこれ!? マジで嬉しいんですけど!!
正直、女と付き合うのは初めてではないが、こんなに我を忘れるほど好きになった奴は初めてだった。
オレはミカの方に向き直ると、不思議そうな顔をするミカに手を伸ばす。
辛そうだったから手を貸そうとしたのだが、オレが触れる寸前で、ミカは杜若に抱き上げられた。
「ミカお嬢様、お部屋は何処でしょうか? 辛そうですので、早く横になりませんと」
「え? あ、吏緒お兄ちゃん?」
「そうですわ、お姉さま! 何でしたら、この乙女、着替えをお手伝いしますわ!」
「ええ? そんな、いいよ乙女ちゃん」
オレは、伸ばしかけた手を、宙に彷徨わせたまま、ギュッとその手を握る。
か、杜若……ワザとだ。今のは絶対ワザとだ……。
怒りでぶるぶると手を震わせていると、いきなり玄関の扉が開いた。
「たっだいまぁ〜! あれ? どちら様?」
「おじゃましま〜す☆ あ、同志君だぁ」
扉を開けてでてきたのは、二十代前半と思われる女性。しかもその一人は、以前会った事がある。
名前は確か……。
「ええ!? 杏ちゃん、知ってるの?」
そう、杏ちゃんだ。
そして今、その杏ちゃんに尋ねているのは、何だか可愛い感じの女性であった。
「知ってるも何も、ミカちゃんの彼氏ですよぅ!」
「ええー!!」
その可愛い感じの女性は、オレをまじまじと見る。
「いやーん、この子もカッコいい! もう、ミカちゃん、お姉ちゃんに何にも言わないんだから!」
……お姉ちゃん? ハッ、って事は、この人が噂のミカの姉!?
な、何つーか、普通っぽいな……。いや、可愛い。可愛いんだが、ミカと比べちまうと普通な感じの可愛さだよな……。
「まぁ、お姉さまのお姉さまですのね! 初めまして、わたくし、ミカお姉さまの永遠の妹、薔薇屋敷乙女ですわ!」
「はい? お姉さま? 永遠の妹? 何それ――……っ!!
キャーー!! いやーん、ミカちゃん!? ミカちゃんが金髪碧眼の王子様にお姫様抱っこされてるー!! すごーい! メルヘン!」
ミカの姉は、薔薇屋敷を見た後、その傍らにいる杜若に目を向け、大きな声で騒ぎ出した。
ミカはというと、そんな自分の姉をうんざりした様に見ながら、辛そうに顔を顰めている。頭に響くのかもしれない。
「……吏緒お兄ちゃん、ちょっと降ろして下さい……姉にちょっとお仕置きをせねば……」
ミカがそんな事を言った。
杜若は突然現れた女性に、戸惑った顔を見せながらも、ミカの言葉に素直に従う。
ミカは降ろされると同時に、玄関脇に置かれているスリッパを手に取ると、思い切り振りかぶった。
スパーーン!
「いたーい! ミカちゃんひどいー!」
「酷いのはそっち。私の客の前で恥を晒さないで。それに声がでか過ぎる。頭に響く」
「え? え? ミカちゃん? 顔が真っ赤よ? それにふらふらしてるわよ?
ハッ、如何したの、その手!? 何か包帯巻かれてて……」
「カミソリで切った……」
シーーン……。
一瞬、玄関は静まり返る。
そして次の瞬間、ミカの姉は頬に手を当て、ムンクの叫びの如く悲鳴を上げた。
「キャーー!! ミカちゃんの白魚のような手がーー!!」
スパーーン!
「だから頭に響く!」
ミカはまたもやスリッパを振りかぶった後、頭を抱え、ふらっと倒れてしまった。
そして、その後ろにいる杜若が、空かさず抱え上げる。
「ミカお嬢様のお部屋は何処ですか?」
「あ、そうだ。ミカ、今熱あるんすよ。だから早く寝かさないと……」
オレと杜若が言うと、ミカ姉はハッと我に帰り、ミカの部屋に案内するのだった。
++++++++++
ううーん……頭がガンガンするぅ〜〜……。
私は、姉の頭にスリッパをお見舞いした後、皆に連れられ、自室へとやってきた。
ふと呉羽君を見てみると、キョロキョロと私の部屋を見回している。
ううっ、もっと違う形で、呉羽君を部屋に呼びたかったよ……。
それに、一応いつも掃除は欠かさないけど、大丈夫だよね?
散らかってないよね?
変な物、置かれてないよね?
時折、海外に行った母が、お土産と称して変なもの置いてくからな……。父は父で、メイド服やら水着やらエッチな下着とか置いてくし……。
「ん、何だこれ?」
呉羽君の疑問の声が聞こえた。
ハッ、まさか!?
恐る恐る見てみると、私のベッドの上に、ソレは置かれていた。
『パパが帰って来たら、これ着てご奉仕してニャン♪ パパより』
そんなメモと共にメイド服が置かれていた。しかも、ネコ耳と尻尾付き。
ソレを見た呉羽君はブッと吹いて顔を真っ赤にし、杏ちゃんは後ろを向いて肩を震わせている。
そして、吏緒お兄ちゃんはソレと私を交互に見てからポッと頬を赤らめ、乙女ちゃんは何だか萌え萌えしていた。
そして姉は、ネコ耳を手に持って私の頭に付け、それからメイド服を広げると、私に当てながらのたまった。
「堪んない! お姉ちゃん、もう堪んないから!」
「………」
私は、自分の頭に付けられたネコ耳を取り外すと、ペイッと床に投げ捨てる。
「ああん、何で取っちゃうのー? ミカちゃんのいけずぅ」
もう、何でもいいから、寝かせてください……。
++++++++++
その後、ミカを寝かせる為に、着替えると言って、部屋を追い出されたオレと杜若。
オレ達は目を見合わせると、何とも気まずい空気に包まれる。
「呉羽様……ミカお嬢様と何かありましたか……?」
「っ!!」
ハッとオレは杜若を見てしまう。
杜若は、無表情ながらも、何処か底冷えのする瞳でオレを見つめ返す。
そしてオレを見た奴は、ハァーと溜息をつくと、何か諦めたように言った。
「それは肯定と取ってもよろしいですね。まぁ、お二人の様子を見れば、何かあったと見るのが妥当でしょう。で? 何があったのですか?」
オレは迷っていた。
如何しようか? 言うべきなんだろうか? むやみやたらに、オレ達の事を話してもいいのか?
でも、牽制の為にも、こいつには言っておくべきだよな……。
……でもなぁ、こいつに言ったら、必然的に薔薇屋敷にも伝わるよなぁ……。それは何か怖い気もする……。何が起こるか全く予想がつかないぞ?
そして、オレは決心して頷くと、杜若を見た。
「ええっとだな、薔薇屋敷にはまだ黙ってて欲しいんだけど……。実は、ミカから好きだって告白された。オレもミカの事は好きだから、付き合う事になると思う」
さぁ、どうだ? どうでる?
オレは奴を見やり様子を窺ったが、杜若は拍子抜けするほどアッサリと「そうですか」と頷いた。
「は!? それだけ……?」
もっと何か言われんのかと思ってた。
何だか、こいつもミカの事、好きそうだったんだけどな?
気のせいだったのか?
「それだけ……それ以外に何があると? ミカお嬢様から告白なさったのでしょう? なら、執事である私が、主人の選ばれた方にケチをつける事など、出来る筈が御座いません」
……ちょっと待て、それってもし、オレから告白してたらどうなってたんだ?
すると、その心の声が聞こえたのかの様に、杜若はにっこりと笑って言った。
「しかし、もし呉羽様から告白なさったと言うのであれば、ミカお嬢様に言い寄る悪い虫として、私が全力で排除させていただく事になっていたでしょうね。
それから今後、ミカお嬢様を悲しませる事になっても、同じく排除させて頂きますから。しっかり覚えておいてください」
「………」
オレはその言葉を聞いて、こいつの本気を感じ取り、ゾクリと背筋に悪寒が走った。
「それから、確かに呉羽様の仰るとおり、お嬢様には、まだ言わない方がよろしいでしょうね。恐らく、ミカお嬢様の口から聞かなければ、納得なされないでしょう……」
「う、そうか……」
と、その時、ミカの部屋から、叫び声が響く。
その声は間違いなくミカのもの。
「ミカ!?」
「ミカお嬢様!?」
オレ達は同時に声を上げた。
++++++++++
「はぁい、ミカちゃん? 脱ぎ脱ぎしましょうね?」
「何、その言葉遣い。何でそんなに嬉しそうなの……」
私は、目の前で手をワキワキさせている姉を、じっとりと見やる。
「ええー? だってー、ミカちゃんのお世話できるなんて、ミカちゃんがちっちゃい頃以来なんですもの。もー、すっごい可愛かったのよ? お姉たん、お姉たんって言って、駆け寄るミカちゃん」
「そんなの覚えてないって……」
如何でもいいから、着替えさせるなら早くして欲しい……。
ハァーと溜息をついていると、
「まぁ、お姉さまのちっちゃい頃? それは是非にでも聞きたいですわ!」
乙女ちゃんが目をキラキラさせて、姉に取りすがる。
「それは勿論! それはもう、天使みたいに愛らしくて〜……」
姉は乙女ちゃんに向かって話し出す。こうなると長くなる事くらい、長年の経験で分かりきっているので、私は自分で着替える事にする。
うう〜、頭がくらくらするよぅ。
早く横になりたい……。
そしてボタンを外そうとすると、ズキッと包帯の巻かれた手に痛みが走る。
あうっ、上手くボタンを外せません……。
すると、見かねた様に横から手が伸びてきて、私のボタンを外してくれる。
そして上着を脱がしてくれて、ワイシャツのボタンも外しに掛かる。
「ううっ、ありがとう御座います……迷惑をかけちゃって、すみません」
「いえいえ、此方こそ、役得? ってゆーか、ミカ、無防備すぎ……」
耳元でボソッと囁かれ、私は声の主を見た。
蕩ける様に甘く微笑む、杏ちゃん。
そしてその手は、私のワイシャツのボタンを外している。
それは胸元まで下がってきて……。
………チーン。
「ひゃ〜〜〜!! いやー! 鬼畜オカ――ムグッ!」
「シー、言ったろ? バラしたら……」
私の口を塞いで、杏ちゃんがニヤッと笑う。
あうあうっ、やっぱり鬼畜オカマ変態です!
「ど、どうしたのミカちゃん!? いきなり大声出して?」
「そうですわ、お姉さま。一体、どうなさったの?」
姉と乙女ちゃんが吃驚して聞いてくる。
そして、激しく扉のノックする音がして、
「ミカ!? どうした?」
「ミカお嬢様!? お嬢様、ミカお嬢様に何かあったんですか!?」
呉羽君と吏緒お兄ちゃんも、慌てたように尋ねてきた。
「何でもないでーす! ちょこっと肌に触っちゃっただけですよぅ! もぅ、ミカちゃんてば、感じ易いんだからぁ」
杏ちゃんが言った。
姉がホッとしたように胸を撫で下ろす。
「何だ、そっか。もー、ミカちゃんったら、そういう時は、もっと色っぽい声出さなきゃ駄目よ? 彼氏君もがっかりしちゃうぞ?」
「うふふ、まったくですよぅ。ねぇ、彼氏君?」
扉の向こうにいる、呉羽君に声を掛ける杏ちゃん。
すると、慌てる気配が扉越しに感じられ、どもりながら、
「んなっ、何言ってんすか!!?」
と叫んでいた。
んん? この声の感じからすると、今呉羽君は、真っ赤になって純情少年になっているみたいです。
ってゆーか、彼氏……。呉羽君、彼氏……。
はうっ、何でしょうか、何だか凄く、嬉し恥ずかしです……。
そんな事を考えていると、杏ちゃんが立ち上がる。
「それじゃあ杏、何か用意してきまぁす☆ キッチン勝手に使っちゃっていいかなぁ? それと、冷却シートとかはどこにあるのぉ?」
そして杏ちゃんは、私からその答えを聞きだすと、部屋を出て行ってしまった。
全く、あの鬼畜オカマ変態はっ! 杏也さんじゃなくて、天塚さんに戻しますよ!
++++++++++
ガチャリと扉を開けてでてきたのは、杏という人だった。
「あはっ☆ 杏、ミカちゃんの為に、何か作りまぁす!」
片手を上げて、そう宣言する。
すると、杜若も、
「私もお手伝いします」
そう言って、キッチンに入ってゆく。
「ああん、手伝ってくれるんですかぁ? 杏、家事の出来る男ってステキだと思いますぅ」
彼女は杜若の傍に近付くと、ギュッと奴の腕に抱きついた。
うぉい! ちょっと待て! あんたってこの前、ダーリンとかって彼氏がいなかったか?
それに何故だか分からないが、寒気を感じるぞ?
杜若もそうなのか、サッと顔を青くすると、彼女の腕を振り払った。
「も、申し訳ありませんが、もう少し離れていただけませんか? 動きづらいので……」
「ええー、何か、つーめーたーいー、杏、傷付いちゃうぞ!」
プクッと頬を膨らますその仕草に、更に鳥肌が立つオレと杜若。
しかし彼女は、それ以上杜若に迫る事はせず、今度はオレの方にやって来た。
「この前はどーもー、同志君。ミカちゃんとはその後どう? さっき杏、君の事“彼氏君”って呼んだけど、君もミカちゃんも否定しなかったよね、あれってどういう事?」
オレにも迫ってくるのかと、半ば警戒していたので、その質問にちょっとホッとするオレ。
それにしても、この人の目つきが、ちょっと鋭くなった気がするのは、オレの気のせいであろうか。
「いえ、その……」
「もしかして、ミカちゃんに告白された?」
「っ!!」
「あ、その顔は図星だぁ。成る程ねぇ……早速告白したのか、ミカは……」
「?? 何すか?」
「んーん、こっちのことぉ。そっかぁ、じゃあ、同志君ってばOKしたんだぁ。それは、おめでとうかな?」
そこまで言うと、この人はオレの耳元にボソッと囁きかける。
「でも、例え君が彼氏でも、うっかりしてると横から掻っ攫われちゃう事もあるかもだから、気をつけてね?」
「っ!!」
ハッとオレは杏ちゃんを見た。
そういえば、この人って、ミカのバイト先の店員とかって言ってたよな。
じゃあ、ミカにプロポーズしてる奴とかの事、知ってるのか!?
オレが尋ねようとすると、杏ちゃんはフフッと意味ありげに笑って、キッチンの方に向かおうとする。
だが、そこでピタリと止まって、いきなりププーと笑い出した。
そして、オレもまた、其方を見て固まってしまった。
そこには、キッチンに立つ杜若が居たのだが、奴は何処からそんなものを取り出したのか、割烹着を身に着けていた。そして冷蔵庫から、適当に食材を取り出すと、実に手際よく調理を始める。
「お、おさんどん執事!? ちょっと、待って……。ヤバイ、ヤバイってそれ、俺のツボ……」
杏ちゃんは最早、床に膝をついて、突っ伏しながら笑いを堪えていた。
オレもまた、杜若の姿を見て、思わず吹き出しそうになる。
だってそうだろ?
金髪碧眼の、何処からどう見ても外国人にしか見えない超美形が、燕尾服の上から割烹着を着て、おまけに頭には三角巾までつけてんだぞ?
笑わない方がおかしーって!
しかし、杜若は至極真剣な面持ちで包丁を動かしている。オレ等が笑っている事なんて、気付いていないようだった。
そして、はたっと顔を上げると、ポツリと呟く。
「ハッ、デザートは何がよろしいでしょうか? 消化の良いプリンがいいでしょうか?」
その言葉がまた、杏ちゃんにはツボだったようで、更にブプーと吹き出し、顔を上げる事さえ出来ないみたいだった。
それを見て、オレは逆に笑いの発作は治まってしまう。
「あー、それでいいんじゃね?」
一応、オレはそう答えておいた。
++++++++++
「ミカ? 大丈夫か?」
ベッドの横には呉羽君。
そして、何故だか他には人はいない。
何でも、リビングにて、私の幼少時のアルバムを観賞しているとの事。
な、何ですと!? あの、恥を曝け出している写真の数々ですかな!?
ああっ、私がこんなでなければ、今直ぐ阻止するのに!
「大丈夫ですよ……。呉羽君は、アルバム観賞に参加しないんですか? 出来る事なら、あまり見られたくはないので……」
私がそう言うと、呉羽君は「う……」と目を泳がせる。
「……見たんですか?」
「いや、その、ちょっとだけな?」
「ううっ、呉羽君に見られたなんて……恥ずかしい……」
「でも、そこまで恥ずかしがるようなものは無かったぞ? 寧ろ可愛いというか……」
「………」
実の所、その可愛いと言われるのも嫌であったのだが、彼に言われ、何故か私は嬉しい気持ちになった。
ええ? 何で? もしかして、呉羽君に言われたから?
私が無言で顔を赤くさせていると、呉羽君が一度扉の方を見て、それから私に向き直る。
「あの、さ、ミカ……」
「ん? 何ですか?」
「一応、確認の為に聞くけど、ミカはオレの事が好きなんだよな?」
「ええ!? えと、あの、はい……好き、ですよ?」
「オレもお前の事が好きだ」
「っ!!」
私は目を見開いて、呉羽君を見た。
学校でも聞いた言葉だけど、こうして、もう一度改めて聞いてもまた、嬉しさが込み上げてくる。
それにあの時は、俺様呉羽君だった筈だ。
「それでな、これって両想いな訳だろ? だから、オレ達、恋人同士って事でいいんだよな……」
私はその言葉に目を見開く。
そっか、そうだよね、私と呉羽君は、恋人同士だ……。
何だか嬉しすぎて、叫びだしたくなるのをグッと堪え、私は呉羽君に頷いてみせた。
「うん、恋人同士です……。えへへ、これからよろしくお願いします」
すると、呉羽君は苦笑して、「なんだよ、それ」と言ってから、
「でもまぁ、此方こそよろしくな」
フッと優しく笑って此方を見つめてくる。
そして、笑みを引っ込めると、「ミカ……」と囁いて顔を近づけてきた。
私は一瞬戸惑ったけれど、彼に答えるように目を瞑る。
だがしかし、唇が触れそうになる寸前で、扉をノックされ、邪魔をされたのだった。
あうっ、ホッとしたような、がっかりした様な複雑な心境です!
またもや邪魔された二人。呉羽は内心、歯噛みした事でしょう。
さて、次回からは恋人同士になった二人の話です。