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第二十三話:父登場!

 とうとう父登場です!

 今回、殆ど呉羽視点です。

 オレは、一ノ瀬の後について行きながら、顔がにやけてくるのを止められなかった。


 でも、もうちょっとで一ノ瀬の唇に触れたのにな……。


 その点は残念ながらも、それ以上に一ノ瀬の家に遊びに行けるのが嬉しかった。


 一ノ瀬の家か……。

 部屋の中はどんなだろうな?

 やっぱり、女の子っぽいのか?

 そういえば、一ノ瀬の見せたいものって何だ? オレの喜ぶもの?

 オレが見たいものっつったら……一ノ瀬のエプロン姿?

 ハハッ、そんでその下裸だった如何するよ。

 裸エプロン――……。

 …………。

 ………。

 ……?

 っ!!


 は、裸エプロン!? ちょっと待て! 何言ってんの、オレ!?

 何このエロ親父的発想!!


「はーい、同志。ここを右に曲がりまーす」


 オレの前で右手を上に向け、オレを案内する一ノ瀬。

 そして、さっきの事を徐々に思い出すオレ。


 ……ちょっと待て、オレ。……オレさっき何した!?

 一ノ瀬の頭を撫で繰り回して、それで――……。


『何なら唇で触ってやるよ――』


 顔がカァッと熱くなってくるのを感じる。


 ってオレ! 何つー事言ってんだよ! 何様だよ、オレ!


 オレは頭を抱えて、その場にしゃがみ込むのだった。



 ++++++++++



「はーい、同志。ここを右に曲がりまーす」


 私がヒラリと右手を返し、ガイドよろしくでそう言った。

 そして、ふと後ろを振り返る。


 はぁっ!! ど、同志がいない!?

 ……って、何であんな後ろに!?


 見れば同志は、後ろの方で、道の真ん中にしゃがみ込んでいた。

 私は慌てて彼の元に走り寄ると、同志は頭を抱えて、何やらぶつぶつと呟いている。


「ど、同志?」


 私がそう声を掛けると、同志はビクッと肩を震わせ、ゆっくりと此方を見た。

 そして、私と目が合うと、ボッと一気に顔を真っ赤に染め、ズザザッと慌てて数メートル後ず去った。


 ……純情少年再び……。


 いやったー!! 同志が元に戻ったー!

 純情少年復活じゃーい! お帰りー、同志ー!!

 いやー、同志はやっぱりこうでないと。


 私がそう思っていると、同志が顔を真っ赤にしたまま謝ってきた。


「一ノ瀬、悪い! 本当にすまなかった! オレ、どうにかしてたみたいで……」

「はい、あれは確かにどうにかしてましたよね」

「うぅっ……ってゆーか忘れろ! いや、忘れて下さい! いや、もうできる事なら無かった事に!!」


 そう叫びながら、道の脇にある建物の壁に、頭を叩きつける。


「ギャー、同志! 痛い! それ痛いから!」


 建物の壁はコンクリート。


 同志の頭が割れてしまふっ!!


 私が慌てて止めに入ると、痛かったのか、涙目でおでこを押さえている。


「ほら、言わんこっちゃない! ああ、赤くなってるじゃないですか! しかもちょこっと擦り剥けてますよ!?」


 見れば、軽い擦り傷になっている。


「ほら行きますよ、同志。私の家、もう直ぐそこですから」


 そう言って、同志の手を引っ張って行く私。

 すると、同志は言った。


「あー、あの、一ノ瀬? その、本当に行ってもいいのか? 家……」

「はい? 何でそんな事聞くんですか?」

「いや、だって家に誘ったのって、俺を止める為の口実なんじゃあ……」

「ああ、そういう事ですか。別にそれだけじゃありませんよ。実は会わせたい人がいるんです」

「会わせたい人?」

「はい、私にオヤジ達シリーズを教えてくれた恩人です。前に同志の事を話したら、是非会ってみたいって言ってました。多分、今日は家に遊びに来ている筈ですよ」


 私がそう言うと、同志は明らかにホッとした顔になった。


「ですが父もいる筈なので、その、変な人でもあまり気になさらず。何か言われても、無視しちゃっていいですからね」

「ち、父!?」


 私が父の話をすると、同志は途端に緊張した顔になり、汗を垂らし始める。


 うーん、父はそこまで緊張するほどの人間じゃないんだけどなー……まぁ、最初は緊張するかもしれないけど……。


 そうして、私達は我が家のあるマンションへとやってきたのだった。



 ++++++++++



「…………」


 オレは黙ってそのマンションを見上げる。


「如何したんですか? ここの一番上の階ですよ、私の家」


 一ノ瀬がそう言ってきた。


 ……って最上階!?

 ここって、このマンションって、高級マンションじゃねえ?

 それで最上階って……何、一ノ瀬って金持ち!?


「おい……」

「はい? 何ですか、同志」

「お前ってもしかして、お金持ち?」

「へ!? 何言ってんですか、お金持ちだったら私、バイトしてませんよ」


 パタパタと手を振って、アハハと笑う一ノ瀬。


「そっか、そうだよな……。でも、ここって高級マンションなんじゃあ……」

「ああ、両親はお金持ちなんですよ」


 ………ってちょっと待て! それをお金持ちと言うんじゃないのか!?


「ち、因みに一ノ瀬、親から小遣い幾ら貰ってる?」

「?? 何ですか、藪から棒に……。まぁ、そうですね、大体月一万円ほどですかね。あ、でも、以前父にメイド服着てご主人様って言ってとお願いされた時に、百万円の束を三つ程をポンと目の前に出されましたけど、流石にそれは断りましたね」


 ……娘に何つーお願いしてんだよ、一ノ瀬の親父……。


「あ、でも、だったら弁当の材料費ってどうしてんだ? あれって見るからに金かかってるよな!?」


 そうだ、何で今までその事に気付かなかったのか……。

 豪華で量の多いあの弁当、一体幾ら掛かっているのやら……。


 すると、一ノ瀬は目を瞬かせたと思うと、腕を組み暫し考える。


「ええー、あー、うーん……、幾らでしょう? 食材って自分で買った事が無いんですよね。

 冷蔵庫の中には、いつもびっしりと食材が入っているので。それに、いつの間にやら買い足しもされていて……恐らく母が入れているんでしょう」


 そんな事をことも無げに言う一ノ瀬。


「……一ノ瀬」

「はい?」

「お前って、やっぱり金持ちだよ……」

「だから、お金持ちは両親であって、私は違いますってば!」


 もー分らない人ですねーと眉を顰めて、一ノ瀬は言うのであった。





「はーい、同志。ここが我が家の玄関ですよー」


 ヒラリと右手を返して、扉を示す一ノ瀬。

 ここまで来るのに、5つのセキュリティーロックを解除していた。声紋やら、指紋やら、網膜やらで……。


 スゲーなセレブって……。


 そして一ノ瀬は、扉を開けて「ただいまー」と言って、入っていった。

 オレも「お邪魔します……」と言って後について行く。


 うぅっ……何だかスゲー緊張してきた……。

 つーか玄関広っ!!

 あ、ちゃんと靴は脱ぐんだな。


 ちょっと安心するオレ。


「あ、母も帰ってきてますね……海外に言っていた筈なんですが、賞は取れたんでしょうか……?」

「は!? 賞?」


 何の賞だよっ!?


 見れば、脱ぎ捨てられた靴が、何足か存在している。

 一ノ瀬が、それらを綺麗に並べ直すと、俺の前にスリッパを出してくる。


「はい、どうぞ。上がって下さい」

「お、おう……」


 そして俺は、リビングへと通されたのだった。






「おおぅ、Myドーター、ミカたん! おかえりー、そしてオレただいまー。ずっとツアーで会えなくて寂しかったぞー!!」

「おー、おかえりミカ」


 オレはそこで金縛りに会った。

 何故ならそこには、俺の良く知っている人物が二人座っていたからだ。

 一人は赤、もう一人は金に髪を染めており、それはオレにとって馴染み深い色。

 そう、彼らはオレの好きなロックバンド『武士ギャラクシー』のボーカルYAMATOとドラムのAKIRAであった。


「あ、同志、あの赤い髪のアホっぽい方が私の父の一ノ瀬大和(やまと)です。そして、その隣にいるのが、父の友人の沢村(あきら)さんです。同志もご存知の通り、あの変な名前のバンドをしています」


 一ノ瀬の変な名前のバンドという言葉に晃さんは苦笑して見せ、大和さんの方はと言うと、先程からオレの事をじっと見ていた。


 な、何か、スゲー不審の目で見られてる気がするんだけど……。

 それにしても凄い美形だよな……。一ノ瀬は父親似なのか?


 以前一度だけ見た、メガネの下の素顔を思い出し、俺はそう思った。

 すると、大和さんは、オレをビシッと指差し叫んだ。


「おのれっ、何奴! 名を名乗れぃ!!」

「…………」


 その時、オレは思った。

 ああ、このノリ、間違いなく親子だな、と……。


「ああ、晃さんとついでに父。同じクラスの同志こと、如月呉羽君といいます」

「んまっ! ミカたんったら、ついでにだなんて! それに父じゃなくパパって呼んで!」

「父は父です。それと、彼は父のバンドのファンだそうですよ」

「何ぃ!?」


 大和さんがオレをまじまじと見る。

 俺は慌てて立ち上がり、頭を下げた。


「は、初めまして! 如月呉羽です! オレ、武士ギャラクシーの大ファンです! CD全部持ってます!!」


 緊張と興奮で、ちょっと声が震えた。

 すると、ポンと肩を叩かれ、顔を上げると、目の前に大和さんが立っていた。そして、親指を突き出してくる。


「ナイス、センス!」


 それから大和さんは、ガシッとオレの肩に腕を回すと、ボソッと聞いてきた。


「それで少年、正直ミカたんとは何処まで進んでる?」

「は!?」

「だから、ミカたんとはもうシちゃったのかって聞いてんの。如何だった? やっぱり、ナイスなバディ?」

「な、ななな何言ってんスか!?」


 本当に何言ってんだ、この人!?


 オレが真っ赤になっていると、大和さんは俺をじっと見詰め、そしてニカッと笑いまた親指を突き出した。


「ナイス、純情少年!」

「こらこら、その純情少年をからかうんじゃない」


 そう言って、オレの前に立ったのは、髪を金髪に染めている、ドラムのAKIRAこと晃さんだった。彼は、ドラムを叩いている時の激しさが、想像出来ない位、穏やかな雰囲気を醸し出していた。

 晃さんはオレをじっと見て、にっこりと気持ちよく微笑むと、右手を差し出す。


「初めまして、呉羽君だったかな? 君もオヤジ達シリーズの愛読者なんだって? 中々いい趣味をしてるね」

「あ、同志、この晃さんが先程言った、私にオヤジ達を教えてくれた恩人ですよ」

「そ、そうなんスか!?」


 オレは慌てて、右手を拭くと、差し出された晃さんの手を握った。すると、ギュッと力強く握り返してくる。


 おおっ!! この手が、あの超人的なリズムを作り出しているのか!


 オレは感動しながら、晃さんの手を見つめる。


「あ、そういえば、今日は翔さんと照さんは来てないんですか?」


 一ノ瀬の言葉に、オレはハッとした。


 そうだ、他のメンバーは!? ギタリストの翔は!? ベースのTELUは!?


 すると、晃さんが肩を竦めながら言った。


「ツアー終わって直ぐ、直行で帰っちゃったよ。今頃家族サービスしてると思うけど?」


 あ、そうだった、晃さん以外は結婚してるんだった。

 ………結婚? ハッ、そうだった! 大和さんって確か、女優の紅小鳥と結婚してたんじゃなかったか!? 

 あの、妖艶な女性を演じさせれば右にでるものはいないと言われ、数ある映画賞を総なめにし、海外でも注目を浴びるトップ女優の紅小鳥!!

 って事は、一ノ瀬のお袋さん……。


「お、おい、一ノ瀬?」


 オレは少々緊張した面持ちで、一ノ瀬に話しかける。


「はい、何ですか?」

「あのだな、お前の母親って、あの女優の紅小鳥、だよな?」

「ああ、はい、そうですよ。全く、両親揃って、普通じゃないですよね」


 ハーと溜息を吐く一ノ瀬。


 ……何か贅沢な悩みだな、おい……。

 って、呆れてる場合じゃなかった。


「で? その母親って、今何処に!?」


 俺がそわそわとそう聞くと、一ノ瀬はキョトンとした顔をした。


「え? 母なら先程から、ほらそこで、おせんべ食べてますよ」


 そう言って、一ノ瀬はソファーを指差す。


 な、なんだって!?


 オレがバッと其方を見ると、確かにそこには、座ってパリポリと煎餅を食っている女性の姿がが……。


 って、全然気付かなかった!!

 にしても、本当にあの紅小鳥か!? 何かポヤッとしてるぞ?


「母は、オフの日は、全くオーラが無くなっちゃいますからね。普通に外歩いてても、全く気付かれないし」


 一ノ瀬がそう言っていると、当の本人である、紅小鳥が此方を見て、


「どーもー、母ですー」


 と、間延びしたように言った。


 本当だ、全然オーラがねぇ……。


 その時、ズシッといきなり肩が重くなる。

 見ると、大和さんが俺の肩に寄りかかり、ニッと笑っていた。


「何、オレたちの馴れ初めが聞きたいだって?」

「え? いや、別に……」

「しょーがねーなー、特別に教えてやろう、オレとコトちゃんの運命の出会いを!」

「いや、だから……」

「そう、あれはオレらのバンドがデビューしたての時だった……」


 ………駄目だ、全然聞いてねぇ。

 

 一之瀬や晃さんを見ると、二人とも諦めた顔をしている。どうやら、こういう事はしょっちゅうらしい。ついでに、紅小鳥を見てみたが、この人はニコニコと大和さんを見ながら、煎餅をぽりぽりと食べているのだった。



 まぁ予想出来てた人は出来たと思う、父の正体ですが、こういうキャラです。

 母も登場。性格はおっとり系でしょうか。演技に入ると別人に変ります。

 ミカの見た目とノリは父親似で、マイペースな所は母親似でしょうかね。姉のマリはというと、見た目は母親似、性格はどちらかと言えば父親に似ています。

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