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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十章 コウタ、また増えた新たな仲間とともに僻地で訓練に励む』

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第八話 コウタ、探索を続けて絶黒の森の北の端にようやくたどり着く


 コウタとカークがこの世界で目覚めてからおよそ八ヶ月。

 一行はいま、絶黒の森北側の山すそに近づいていた。


「敵が多いなあ。みんな、フォーメーション『要塞(フォートレス)』で!」


「カアッ!」


「おー、まさかいちおう決めておいた陣形(フォーメーション)が役に立つなんてなあ」


「みなさん、無理しないでくださいね! 危ない時は逃げることも大切です!」


「はっ、コウタさんもカークも、嬢ちゃんもおっきい嬢ちゃんもいるんだ、まだヨユーだヨユー。……逃げるとなったら少年はあれ担いで走るんだよなあ……」


「しゃ、しゃべりながら戦うなんて、エヴァンさんが器用すぎるだ!」


「カァー」


 森の木々は黒く、このあたりは下草さえ黒みがかっている。

 逸脱賢者のアビーいわく、「それだけ瘴気が濃いってこと」らしい。

 瘴気が濃いと、動植物が変異してモンスター化することも多くなる。


 結果、コウタたちの目の前にはモンスターが群れていた。


 運んできた大岩を置いて、ベルが中に退避する。

 大岩の前には【健康】で傷つかないコウタと、身長3メートル超の巨人族(ギガント)・ディダが陣取る。

 二人の間からアビーが魔法でモンスターを狙い、空を飛べるカークと先代剣聖エヴァンは遊撃役だ。


 フォーメーション『要塞(フォートレス)』は、二人の盾役と大岩を中心にした守りの陣形のようだ。


 コウタとディダが引きつけたモンスターを、アビーが空間斬(ディメンションカット)でなぎ払う。

 空を飛ぶ殺人蜂(キラービー)は、空は俺のものだとばかりにカークが潰しに行く。

 殺戮蟷螂(キラーマンティス)のような、ディダには厳しいモンスターが来ると、エヴァンが飛び込んで()()で剣を振るう。


 迫る虫系モンスターも擬態した植物系モンスターも、四人と一羽はあっさり倒していく。

 殲滅するスピードを考えると、本当に「守りの陣形」かどうかは怪しいものだ。


「ねえアビー、瘴気が濃いからってこんなにモンスターがいるもの?」


「これもうモンスターハウス状態だもんな! 実はフィールドダンジョン化してんのか? けど、北の山は見えてるしな。景色が変わってねえんじゃ、せいぜい『ダンジョンなりかけ』ぐらいか?」


「へえ、そんな判断基準があるんだ。まあ見るからにおかしいもんね。こんなにモンスターがいて、動物は少なくて、どうやって食糧を……」


「はっ、考えるまでもねえだろコウタさん!」


「え? そっか、共食いとか、おたがい喰いあったり……」


「それもあっかもしんねえけどよ、モンスターは瘴気が濃けりゃ何も食わねえでも生きていけんのよ! それが獣との違いだな!」


「へ、へえ……どうなってんだ異世界……」


 大量のモンスターに迫られても、コウタたちは会話する余裕さえある。


「な、なんだか敵が強くなってる気がするだ!」


「おう、おっきい嬢ちゃんの見立て通りだ! いままでよりも強くなってんぞ、油断して怪我すんなよ!」


「おっさんこそな! ちょうどいい、新魔法を見せてやる! 大量の雑魚敵を倒すために開発した——『空破弾』!」


 アビーが前方に杖をかざす。

 と、何体ものモンスターが弾き飛ばされる。

 まるで、見えない手榴弾でも爆発したかのように。

 その光景は扇型に20メートルほど先まで広がった。


「どうだおっさん! 面制圧はオレに任しとけ!」


「す、すごいだアビーさん……おらは……」


「はは、比べることないよディダ。俺たちはしっかり守ろう。ほら、うしろのベルは戦えないんだし」


「……わかっただ! おらは、おらにできることをする!」


 アビーの活躍に引け目を感じるのではなく、それぞれができることを。

 ディダは、焦ることなく丁寧にモンスターの攻撃をさばく。

 安定した盾役は、モンスターとの集団戦において大事なものだ。

 怪我をしない・倒れない「堅さ」で言えばコウタだろうが、大きい分、ディダが守れる範囲は広い。


「おうおう、みんな訓練の成果が出てんじゃねえか! 優秀すぎる教え子たちで結構なことで!」


 兵隊蟻(ソルジャーアント)が群れで押してこようとしても、殺戮蟷螂(キラーマンティス)が鋭い刃で斬り裂こうとしても、殺人蜂(キラービー)が空から襲ってきても、植物系モンスターの状態異常攻撃や不意打ちも、コウタたちには届かない。


 フォーメーション『要塞(フォートレス)』の名前の通り、危なげなく撃退していく。


 小一時間も経つと、モンスターの波は途切れた。

 ベルがざっと【解体】して、使えそうな素材を大岩の内部にしまう。


 ひと段落すると、一行はふたたび進みはじめた。

 目指すは、絶黒の森の北の端。

 山すその手前で、目で見えるほど濃密な黒いモヤ——瘴気——が渦巻く地である。


「ダンジョンじゃないかもしれないけど……やっぱり、ボスはいるものかな」


「これだけの群れなんだ、いるだろな。植物系なのか、虫系なのか。合わせ技ってセンもあるかねえ」


「合わせ技……?」


「カァ?」


「ああ。獣やら蛇やらいた場所じゃ『キメラ』がボスだったりな。けど、植物と虫か……パッと思いつかねえ」


「コウタさんも嬢ちゃんも、そんな考えたっていいこたァねえよ。ぜんぜん関係ねえボスでした! なんてこともめずらしくねえ」


「はあ、そういうもんなんだ……」


「ガアッ!」


 盆地の北の端の木々は、黒くねじくれていた。

 南の地でクルトのダンジョン、もとい、研究所があった場所と同じような風景だ。


 ただし、空気が違う。

 敵意まじりの視線を感じて、ディダの口数が少ない。

 何が来たって倒してやるぜ!とテンション高めのカークとは対照的だ。


 コウタもカークも、何度も強敵と戦ってきたエヴァンさえ、慎重に進んでいくことしばし。


「カアッ!」


「みんな、あれ」


 やがて、黒いモヤの向こうにモンスターの姿が見えてきた。


「やっとお出ましか。さーて、どんなヤツかねえ」


「何が出たって斬るだけだ。そろそろ強いヤツを、新しい左手で試し斬りしてえところなんだが」


「お、おら、やるだ。みんなを守るだ。大きいって言ってくれた、この体で」


「カァー」


「みなさん、健闘を祈ってます!」


 五人が足を止める。

 一羽が定位置であるコウタの肩に止まる。


 黒いモヤの向こう。


 そこには、()()()()()()があった。





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