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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十章 コウタ、また増えた新たな仲間とともに僻地で訓練に励む』

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第一話 コウタ、先代剣聖エヴァンと戦闘訓練に励む


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから七ヶ月と三週間。

 絶黒の森に迷い込んできた先代剣聖・エヴァンを迎えてからおよそ三週間が過ぎた。


 いまでは、精霊樹と小さな湖のほとりで生活するのは五人と一羽だ。

 もっとも、ベルは街との往復のため不在がちで、ときどきクルト——古代魔法文明の生き残りアンデッド——が遊びにくるのだが。


 エヴァンが暮らすようになってから、コウタたちの生活は変わった。


 コウタが夜明けとともに起き出すのは変わらない。

 簡単な朝食をとって、畑の様子を見に行くのも日課だ。

 変化したのは午後。


「よろしくお願いします!」


「おう、こちらこそよろしく頼む」


 開拓した広場で、コウタは先代剣聖・エヴァンと向かい合う。

 手にはいつもの鹿ツノ剣ではなく、木の剣が握られている。


「えっと……」


「遠慮しねえで打ち込んでくるといい。いくら左手がまだ馴染んでねえったって、コウタさんに一本取られるほど衰えちゃねえよ」


「はい!」


 エヴァンも、持ち込んだ鉄剣ではなく木剣を手にしていた。


 昼食をとったあとの、午後。

 コウタたちは、「元剣術指南役」のエヴァンに訓練をつけてもらっていた。


「やあー!」


「カァー。カアッ、カア!」


「おー、やってんな。コータもなんだかサマになってきたんじゃねえか?」


「けどおらもコウタさんも、まだ誰もエヴァンさんから一本も取れねえだ」


「そりゃそうだろ。なんたって剣聖だぜ?……うし、あとでオレも訓練さしてもらうかな」


「アビーさんも剣を使うだか?」


「オレは『逸脱賢者』だかんな、魔法でやらしてもらうよ」


「ええっ!? だ、大丈夫だか?」


「心配すんなってディダ。おっさんは『魔法も回避できる。なんなら斬れる』って言ってたかんな」


「は、はあ。人間はすごいだな……」


 目覚めたらこの世界にいたコウタは、当然ながら剣の心得などない。もちろん弓も体術も古武術も使えない。

 コウタは普通の社畜だったのだ。元、だが。


「はあ、はあ………」


「うっし、ここまでにすっか。コウタさんはなあ、スジは悪くねえんだが……」


「その、どうすればもっとよくなるかな。森の北ではなかなかモンスターを倒せなくて」


「んー、気合いが足りねえ!」


「え、ええ……?」


「なあおっさん、そりゃ直んねえんじゃねえか? やる気満々のコータって想像できねえぞ?」


「カァー」


「あっうん、いい意味でな。コータのその緩さにみんな救われてんだから」


「やる気……」


「そうだなあ、いくら訓練ったって、コウタさんに斬られる気がしねえ。殺す気でかかってきていいんだぞ? 俺ァ元でも『剣聖』だかんな、そんぐらいでいいって」


「殺す気で……」


「おっさん。ちなみに、コータを『斬れる』気はすんのか? 前に言ってたろ、斬れるかどうかわかるって」


「ああ。コウタさんは、斬れる気がしねえ。全盛期の俺でも無理なんじゃねえか?」


「え? でも俺、いまだって何本も取られて」


「剣は当たる。けど斬れねえ」


「そっか。俺は【健康】だから」


「剣聖でも無理なのか。コータのスキルが反則(チート)すぎる」


「おう。だからコウタさんは、防御を考えねえでいいんだ」


「木剣でも、攻撃されたらついつい防ごうとしちゃうけど……たしかに、気にせず当てにいけば」


「おう。あの斬れ味がえげつねえ黒い剣の使い方も含めて、戦い方をちっと考えてみるといい」


「なるほど……ありがとうございました!」


 コウタが頭を下げる。

 エヴァンが来てから、コウタたちはこうして戦闘訓練を行うのが日課となっていた。


「ちなみにエヴァン。俺は『斬れない』と思ったみたいだけど、ほかの人はどうなんだろう。例えばカークは」


「カークなあ。当たりゃ斬れるんだけどよ、いまの俺ァそうそう当てられる気はしねえんだよなあ。持久戦ってとこか?」


「カァーッ! カア、ガアッ!」


 カークは望むところだ! とばかりに勇ましい。

 エヴァンは、義手をさすって眉をひそめていた。

 飛行するカラスを斬る繊細なコントロールは、まだ自信がないようだ。

 なおエヴァンは口にしなかったが、全盛期の頃なら余裕で斬れる。


「おー、すごいんだねカーク! アビーはどうだろう」


「嬢ちゃんは斬れる」


「即答かよ! くっ、実績ならオレがおっさんの次なんだけどなあ……」


「えっと、ディダは」


「斬れる。デカい分いい的だな」


「デカい、おらが、デカい。うぇへへへへ」


「ああうん、嬉しそうだなディダ……」


 ニマニマするディダに、アビーは肩を落とした。

 巨人族(ギガント)の里の中で一番小さかったディダにとって、強さよりも「デカい」と言われたことが嬉しいらしい。


「ベルは『戦えない』って言ってるからいいとして……あ! ここにはいないけど、クルトはどう?」


「…………斬れねえ。ただの魔法なら斬れるんだけどよ、クルトさんは底が知れねえ。よくて五分五分、たぶん、いまの俺じゃ負けんじゃねえかなあ」


「おー、すごい。さすがクルト!」


「は、はあ!? クルトはコータやベルに負けそうだったのに!?」


「そこはほら、相性なんじゃないかなあ。ベルの【解体】が効いたわけだし、俺の【健康】で効かなかっただけだし」


「やっぱ『スキル』が理不尽すぎる……」


 アビーの肩がますます落ちる。


「嬢ちゃんはあれだ、手数と威力の使い分けだな。そこが上手くなりゃ今代の剣聖にだって勝てるようになるだろ」


「慰めありがとよおっさん。くっそー、がんばろうなディダ!」


「んだ!」


 エヴァンのアドバイスを受けて、アビーはあっさり気持ちを切り替えた。

 サイズ以外は普通なディダが剣聖に勝つには途方もない努力が必要だろうが、それはそれとして。


「じゃあ今日の戦闘訓練はここまでにして……少し話す時間は取れるかな? 森の北のモンスターをどうするか、相談したいんだ」


 訓練の終わりを告げて、コウタが切り出す。

 絶黒の森の北側。

 植物系と虫系モンスターの群れに阻まれて、探索が進んでいないエリア。

 コウタは、前に撤退したことが気にかかって、戦闘訓練に励んでいるのかもしれない。



 コウタとカークがこの世界に来てから七ヶ月と三週間。

 剣と魔法の戦闘訓練、モンスターがはびこる危険地帯。

 コウタ、ダンジョンに続いてひさしぶりの「異世界らしい異世界生活」かもしれない。



ちょっと間が空いてしまいました……

今章はのんびり章。

今週平日にもう一話、更新予定です(願望


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