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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第九章 コウタ、流浪する先代剣聖と出会って戦い方を教わる』

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第十一話 コウタ、絶黒の森で先代剣聖の喜びの場に立ち会う


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから七ヶ月半。

 先代剣聖のエヴァンがコウタたちと暮らすようになってから二週間が過ぎた。


 コウタはイビルプラント化した芋やカラス麦の手入れを、アビーは自宅の内装作業を進めつつエヴァンの家を建てるべく用意を、ディダは一人増えた分の木製家具や日用品作りを、ベルはまた街まで往復する準備を進めた。

 先代剣聖のエヴァンが加わって、コウタたちはこれまで通り生活していたわけではない。


 クルトは理想の女性を創るための協力者——実験台——の出現にテンション高く義手の製作を進め、コウタとアビーは空き時間にクルトを手伝った。

 ノリノリでアイデアを出しまくった。むしろ、日常業務の方を空き時間で済ませるほどに。


 そして、エヴァンが聖霊樹と小さな湖のほとりで暮らすようになってから二週間。

 エヴァンは、緊張の面持(おもも)ちで広場にいた。


「エヴァン、体調はどう? しんどそうなら実験は延期するけど……」


「あんがとなコータさん。シラフだってこと以外は問題ねえよ。精霊樹の実(アンブロシア)を食うようになってから、痛みもラクになった気がするしな」


「それは気のせいだろおっさん。良くなるったってこんな早く効果が出るわけねえよ」


「うむ。だが、呪いは気にするほどに悪化するのもまた事実。存外、【竜呪】も例外ではないのかもしれぬ」


「なるほどね」


「カァー」


 広場では、コウタ、【導き手】にして三本足のカラス・カーク、TS転生した『逸脱賢者』のアビー、古代魔法文明の生き残り魔導士・クルトがエヴァンを囲んでいる。

 エヴァン以外の二人と一羽と一体も緊張した表情だ。


「じゃあ、試してみようか」


「ああ。覚悟はできてる。心配すんな、思うように動かなくても気落ちはしねえ。もう慣れっこだかんな」


「ははっ、大丈夫だっておっさん!」


「エヴァン殿、実験前にいくつか注意点がある」


「ほう? アンデッドに魂を捧げんのか?」


「いやさすがにそれは……えっと、エヴァンは魔力で『身体強化』? 『身体活性』? できるんだよね?」


「ん? あー、まあな、それが『魔法剣』を使う前提だかんな」


「よしよしよし。んじゃおっさん、くっつけたら体に魔力をまとってくれ。そんでつながるはずだ」


「へえ」


「コウタ殿とアビー殿は、神経をつなぐ際に激痛がはしるやもしれぬと予想している。我の魔法で感覚を麻痺させることは可能だが……」


「なあに、痛みにゃ慣れっこだ、わかってりゃなんとでもなる。感覚がボヤけてちゃ使用感がわからねえだろうしな」


「……剣士ってすごいんだなあ」


「いまのコータは【健康】で痛みを感じることもないだろうしな!」


 たがいに話すことで緊張がほぐれていく。

 頃合いを見てとって、クルトが布袋から一つのアイテムを取り出した。

 エヴァンが食い入るように見つめる。


「これが……」


「うん。俺と、逸脱賢者のアビーと、古代魔法文明の魔導士クルトが、精霊樹の素材で作った特製の義手だよ」


 クルトが取り出したのは、木製の腕だ。

 前腕から手首にかけては複雑な紋様——魔法陣——が刻まれている。

 一方で、木目のままの手はシンプルな造りだ。


「まずは試作第一号だけどな! ヒトの手は複雑すぎんだよ!」


「うむ。だが、うまくゆけばある程度は思い通りに動くはずだ。動いてもらわねば困る。2000年に渡る我が研究の成果ゆえな」


 エヴァンが竜との激戦の末に失われた左腕を上げる。

 アビーが袖をめくって、クルトがヒジの先に木製の義手を押し当てた。


「神経と魔力回路がつながるのに痛みがあるかもって。けど……がんばって、エヴァン」


「ああ、言われるまでもねえ」


 心配そうなコウタの眼差しを横目に、エヴァンが目を閉じた。

 カークはコウタの肩に止まってじっと見つめている。

 アビーも、クルトも静かにエヴァンを見守って。


「うし、いくぜ!」


 エヴァンが、体に流れる魔力を操作しはじめた。

 魔法剣——〈無間斬(ゼロ・ディスタンス)〉——を使う直前のように。


「いってえ!」


「だ、大丈夫?」


「ああ、痛えことは痛えけどこれぐらいなら問題ねえ。それよりも……」


 短く叫んで、エヴァンが目を開く。

 木製の左腕を眼前に持ち上げる。


 かちゃっと小さな音を立てて、左手が握られた。


 義手が、エヴァンの思い通りに。


「う、動いた……俺、俺の左手が……」


 呆然と呟いて、手を握っては開く。

 コウタとアビーとクルトはその様子を見て手を打ち合わせ(ハイファイブす)る。


 エヴァンはふらふらと歩き出して、腰の剣を抜いた。

 握る。

 剣の柄を、生身の右手と木製の左手で。


「手は複雑だから、まだ握るぐらいしかできないって」


「ロックするか緩めるかのどっちかだけだな。けど、剣は振れるはずだ。先代剣聖サマからしたら最低限だろうけどよ」


「うむ、複雑な動きは今後の課題である。これまでは生体としての創造を研究してきたゆえな。だが、生体との融合こそ理想へ近づく道やもしれぬ」


 コウタたちの説明が聞こえているのかいないのか、エヴァンからの返事はない。


 剣を上段に振りかぶって振り下ろす。

 袈裟に、横なぎに、剣を振る。


 木製の左手は剣の柄から離れることはない。

 もっとも、自由自在に動くわけではないため、ほぼ右手一本で振っているようだが。


 それでも。


「は、ははっ! ははははは! 剣が、剣が両手で振れる!」


 エヴァンは、夢中で剣を振り続けた。

 子供のように純粋な笑顔を浮かべて。

 涙をこぼして。


「エヴァン、ちょっといいかな?」


「なんだコウタさん? おっと、コウタさんもアビーさんもクルトさんも! ありがとな! いままで試してきた義手とはぜんぜん(ちげ)え! そりゃ完全に思い通りじゃねえけどよ、これなら!」


「ほら落ち着けっておっさん。そのへんはあとで細かくデータ取らしてもらうとしてだな、今回の試作一号機はそれだけじゃねえんだ」


「一回剣から手を離してほしいんだ」


「ん? こうか?」


「うん。それで、手を握って前に……」


「お、おお? なんか魔力が吸われるぞ? なんだこりゃ?」


「おし、ちゃんと動いてんな!」


 コウタとアビーがワクワクと目を輝かせている。

 一方で、義手製作を主導したはずのクルトの顔は思案げだ。


 エヴァンが〈無間斬(ゼロ・ディスタンス)〉を使う際の半分ほどの魔力が吸われて、義手はバチバチと音を鳴らした。

 魔法剣を振るう直前のように。


「よし! 準備OKだね!」


「さあおっさん、右手で左手の手首を掴んで下に倒すんだ!」


「こ、こうか?」


 アビーの指示に従ってエヴァンが義手を前方に向けたまま手首を倒す。

 と、穴が現れた。

 義手の前腕の中は、一部が空洞になっていたらしい。


 一瞬のち、魔力が弾けてバシュッと音を立てる。


 飛んだ魔力は前方の木に当たった。


「…………は?」


「おおー! 成功だ!」


「くうっ、やっぱり義手に隠し武器ってのはロマンだよな!」


 ぽかんと口を開けるエヴァンをよそに、コウタとアビーは何やら盛り上がっている。


「けど木も折れなかったかあ」


「しゃあねーってコータ、ここらの木はだいぶ丈夫だかんな! それにこれから威力を上げてきゃいいだろ!」


「うーん、やっぱり魔力じゃなくて拳を飛ばした方がいいかな?」


「おいおいコータ、おっさんは剣士だぞ? すぐ回収できねえロケットパンチは問題あんだろ」


「たしかに。じゃあ方向性はこのままかなー」


「な、なあ、いまのは?」


「コウタ殿とアビー殿の発案で仕込んだ遠距離武器である。剣士には必要であろう、とのことだ」


「あの、俺ァ魔法剣で斬撃を飛ばせんだけども……」


「ま、まあいいのではないか? なに、機構の邪魔になるようであれば二人とも諦めるであろう…………おそらく」


「魔力の砲撃で『魔砲』でどうかな?」


「おー、いいじゃねえかコータ! 名前はそれで決まりだな!」


 困惑を隠せないエヴァンに、クルトは力なく首を振った。

 コウタとアビーは楽しそうだ。

 使用者を置き去りにして。


 二人の謎テンションに、ふたたび剣を振れるようになった感動もちょっと薄れたかもしれない。


「カァー。カァ、カァ」


 精霊樹と小さな湖のほとりの広場に、まあ諦めるんだな、とばかりに投げやりなカークの鳴き声が漏れた。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてから七ヶ月半。

 カークの導きを半ば無視しつつも、先代剣聖エヴァン・ジェルジオは絶黒の森にたどり着いた。

 精霊樹のふもとで暮らす一行と出会って、エヴァンはふたたび剣の道を進むことになる。

 古代魔法文明の知識と技術と、転移・転生者の発想を活かした義手を手に。

 剣に生きて【剣術LV.10】と【魔法剣】を身につけた剣士が魔改造されないよう祈るばかりである。




遅くなりました……。

今週はもう一話更新予定です!



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新作もちょいちょい書いてます。

現代舞台の妹モノ?です!

ファンタジー要素は軽くで、ほのぼの日常。

妹は神ですがホラー要素はありません!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分としては小型のボウガン(ベルセルクのガッツやマッドマックス2のウェズ(モヒカン)みたいな)とかにテンション上がります。 [一言] 魔道具関係だと本当にストッパーいないなw
[一言] ドリルつけよう(使命感)
[一言] パイルバンカー……ドリル……ロケットパンチ……うっ、頭が。
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