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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第八章 コウタ、さらに増えた新たな仲間とともに僻地の開拓をはじめる』

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第六話 コウタ、異世界の魚を見てぎょっとする


「へえ、器用に包丁を使うんだね」


「小せえ魚を捌くのに小せえ包丁を使ってただ。これぐらいならなんとか」


「いやあ、ディダが処理までできて助かったぜ! オレだって知識はあるんだけどなあ」


「カァー」


「知るのと見るのは違うものだ。ふむ、ここに空気を通すことで発声していたのか」


「お魚が獲れるなら、街まで【運搬】したら売れそうですね!」


「どうだろう。ここは湖だし、たくさん獲ったら減っていっちゃうんじゃないかな」


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから五ヶ月と半ば。

 この地で暮らすコウタたちは、精霊樹と小さな湖のほとりの広場に集まっていた。


 ディダが初めて漁で得た魚を、捌いているのだ。

 四人と一羽はディダの調理に興味津々である。

 逸脱賢者のアビーも、古代文明の生き残り魔導士クルトも、実際に魚の解体を見るのは初めてだったらしい。


「あっ。そういえば、味付けはどうしよう。ベルが買ってきてくれた岩塩はあるけど……」


「まあ、塩焼きしかねえんじゃねえか? 火は焚けるし、なんなら魔法で焼いてやるぞ?」


「調味料を買いに行ってきましょうか?」


「えっ? いくらベルの足が速くても、さすがに腐っちゃうんじゃないかなあ」


「ベルの足より魚の足の方が早いってな!」


「魚に、足、ですか?」


 話している間にも、ディダの手は止まらない。

 いまは、二匹目の下処理に取りかかっているところだ。


 内臓を抜く。

 ウロコを取る。

 エラやヒレを外す。

 キレイな水でしっかり洗う。

 順番はともかく、工程はコウタが元いた世界と変わらない。

 刃のように鋭いヒレや、やけにギザギザで数の多い歯や、大きささえ気にしなければ。

 あと、一匹の口の一部にあるツノを気にしなければ。


「心配いらねえだ、コウタさん。おら、漁の前に香草を集めておいただ。これで臭みを取るんだべ」


「へえ、そういうのがあるんだね。ありがとうディダ」


「そ、そんな、おらの方こそありがとうごぜえますで」


「ううん、ディダがいなければ魚は食べられなかったか、美味しくは食べられなかっただろうから」


「そ、そうだか? うぇへへへへ」


「ほら、そのでけえ背を丸めてないで胸を張れ胸を! ありがとな、ディダ!…………それにしてもでけえな」


 魚が、ではない。

 いや、1メートルほどもあるのだ、魚がでかいことも間違いないのだが。

 アビーの視線は、ディダの胸部に向けられていた。

 女性だから女性を見ていても問題ない。

 TSを悪用した遠慮のない視線である。タチが悪い。


「さーて、最後はこいつだべ! 海で獲れたのしか見たことねえけど、たしかこいつはやわいから吊るして……うん?」


「思ったよりしっかりしてるね。これならこのまま捌けるんじゃない?」


「アンコウっぽいのがいて、似てるけどコイツはナマズっぽいからちょっと違うってことかねえ」


「ほう? 吊るさねば刃を通しづらい水棲モンスターがいるのだな? 柔軟性で刃を立てぬようにするのであろうか」


「海のモンスターも気になりますね! 道がわかって、売ってくれる人がいれば荷運び人(ポーター)として【運搬】するんですけど……」


 ためらいながらも、ディダが解体を進める。

 コウタたちはわいわいと話すばかりだ。

 カークだけは大人しくしている。喋れないので。


「なあコータ。オレたちは通れなかったけどよ、【悪路走破】があるベルなら西の山脈を越えられるんじゃねえか? ディダだって通れたんだし、不可能ってほどじゃないような」


「あっ、たしかに。それに、ディダがいれば」


「交易ぐらいはできるかもな! ディダが『一人前になるまで帰りたくねえ』ってんなら、紹介状でも書いてもらえばいいんだし!」


「おー! 待って、アビー。ベルが走破できるなら、ロープをかけてもらったり足場を作ってもらえば」


「……オレたちも、抜けられるかもな」


「異世界の海、巨人族(ギガント)の里……ちょっと、見てみたいかも。人が多い場所はまだ不安だけど、ディダの里なら人数は少なそうだし……」


「けど、『小さい人』って見下されるかもしんねえぞ? ま、そんときゃコウタかオレが模擬戦して蹴散らせばいいか!」


「ええ……? アビー、考えが豪快すぎない?」


「ふむ。ならばアレが使えるかもしれぬ」


「クルト?」


「当時、我が街から研究所に移動するのに使った()()()が残っている。まだ動くかどうかはわからぬが」


「魔導車?」


「マジかよおっさん! 古代文明の遺物じゃねえか! それも超高値で取引されるとびっきりの!」


 目を輝かせて、アビーがクルトに詰め寄る。

 2000年間ダンジョンに引きこもっていたクルトは、自らの移動手段の存在を忘れていたらしい。

 筋金入りの引きこもりである。コウタ以上に。


 盛り上がるコウタたちを横目に、ディダは魚の調理を続けていた。

 アビーが作ったかまどの横、調理台にナマズもどきの切り身と、ベルが街で買ってきた野菜を置く。

 コウタが組んだ石積みの焼き台に、串を通した魚をセットする。

 串と魚のサイズから、串刺し刑っぽい。魚は光を失った目でクルトを見つめている。アンデッド化はしない。


「準備できただ! アビーさん、魔法をお願いしてもいいだか?」


「あっおう、ぜんぶやらせてすまん、ディダ」


「はじめての漁の獲物だ、おらが自分でやりたかったんだ」


「ありがとう、ディダ」


「うっし、んじゃ行くぞ!」


 アビーが一声かけて火魔法を使う。

 すぐに、薪に明るい炎が宿った。

 クルトが言うところの「陽」の性質を宿した炎である。


 アンデッドであるクルトはかまどと焼き台からじゃっかん距離を取った。

 炎が気になるのか、カークは近づいてコウタに止められた。焼き鳥、もとい、焼き烏になるつもりだったのか。


「魚かあ、半年ぶりだなあ。あっ。ねえアビー、魚って毒があるのもいるような」


「大丈夫だコータ、さっき『鑑定魔法』かけといたかんな!」


「おー、すごいですねアビーさん!」


「我はまだ研究中ではあるが、我の『鑑定魔法』モドキでも害はないと結果が出た。心配であれば我から口にしよう」


「いや、アビーとクルトを信じるよ。いくらクルトがアンデッドだからって言っても、ねえ」


「カァ?」


「内臓はどうだろ。寄生虫の心配もあるし……カーク、我慢できる?」


「カァ、カアー!」


「ははっ、うんうん、ちゃんと焼いた魚をあげるからね」


 ぱちぱちと薪がはぜて、香ばしい匂いが漂ってくる。

 ディダとアビーとベルは目を輝かせて焼ける魚を見つめ、コウタとカークはいちゃついていた。男とオスだが。


「内臓って栄養になるんだっけ? なら精霊樹の根元に」


「あー、どうだろ。肥料にはなるけど、やり方もわかんねえしやめといた方がいいんじゃねえかなあ」


 コウタとアビーが見上げると、精霊樹の枝がザザザッと揺れた。

 いつもより激しい。


 コウタ、感謝の捧げ物はあっさり断られたようだ。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてからおよそ五ヶ月半。

 新たな住人を迎えて、絶黒の森での生活は徐々に充実に向かっているようだ。




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