第六話 コウタ、巨人族の少女にアンデッド魔導士を紹介する
「クルト、巨人族のことを知ってるの? さっき海トロールって」
「うむ。当時は、この大陸より西方の島々に暮らす種族だと考えられていたものだ」
「2000年も経ちゃ住むところも変わるか。んで『海』ってことは陸トロールもいるのか? まさか空も?」
「空は知らぬ。山トロールはモンスターの一種と認識されていた。低い知性と社会性を持ち、人を襲って食する醜悪なモンスターだ」
「うわあ……ディダが海トロールでよかった」
「んー、そっちは聞いたことあんな。いまはただの『トロル』って呼ばれてる。むしろなんでアレと『海トロール』が一緒にされてんのか」
「はい! 勇者さまがトロルを討伐したのを見たことあります!」
「なっ、なんでアンデッドと普通に喋れるだ!? コウタさんとアビーさんとベルさんは勇者だか!?」
「ははっ、オレは勇者の仲間になりたくなくて逃げて、ベルは追い出されたクチだな」
「アビー、いまディダはそういうこと言ってるんじゃないと思うよ」
「カァッ!?」
コウタが巨人族の少女・ディダを拠点に迎えて、自己紹介と能力の確認をしていたコウタたち。
だが、和やかな時間は終わりを迎えた。
精霊樹と小さな湖のほとりの拠点に、古代文明の生き残りアンデッド・クルトがやってきたのだ。
まあ、和やかな時間が終わったのはディダだけのようだが。
敵ではないというコウタの説明を聞いて、ディダは構えをといた。
クルトと戦う意思はないものの、まだクルトには近づけないでいる。
精霊樹の陰に身を隠して、強大なアンデッドと歓談するコウタたちを見つめている。
「ディダと言ったか、安心するがいい。我にコウタ殿たちと敵対する意思はない。また、生者を襲う意思もなく襲ったこともない」
「ほ、ほんとだか……?」
「うむ。ゆえに、そう怯えなくともよい。絶対に敵わぬと知りながら、コウタ殿や精霊樹を守ろうとした先ほどの闘志は見事であった」
「えへへ……みごと……へへ……」
「ちょっと褒められただけでちょろすぎかディダ。アンデッドへの警戒心どうした」
「ありがとねディダ。けど俺【健康】だから、次からは俺のうしろにいてほしい」
「いやあ、それは難しいんじゃねえか? どう見てもコータは戦えなさそうだからなあ」
「カァ」
「僕も初めて見た時は驚きました!」
「えっと、コウタさんは強いだか? こんな強そうなアンデッドと堂々とお話しできるぐらい?」
「コータは強いぞ。魔法は使えねえけど、防御は鉄壁だしたいていのものは斬り裂ける」
「ええっ!? す、すげえんだなコウタさん!」
「ちょっとアビー、言い過ぎだって。防御っていうか【健康】だから傷つかないだけだし、斬り裂くのも鹿からもらってクルトが加工してくれた剣のおかげで」
「過程はどうあれ、事実なんだから謙遜すんなって。あー、そうだな。一緒に暮らすんだし、模擬戦でもやるか? おたがいの実力を把握してねえといざって時に困るからな」
「え、ええ……? だ、大丈夫だか? アンデッド……クルトさんはともかく、おらがコウタさんやアビーさんやベルさんみたいな小さい人たちと戦って……」
「カァッ!」
「うん? カークもやるの?」
「ディダさん、僕は戦えませんよ! 荷運び人なんです!」
「ええ……? あんなに大きい岩を運べるほど力持ちなのに……?」
「うっし、そうと決まったらやるか!」
「うん。ちょっと怖いけど……この世界では、必要なことだよね」
「カア!」
「おー、コータもわかってきたじゃねえか。それに……」
「それに?」
「そこから先は模擬戦が終わったらな」
「はあ」
同じ角度で首をかしげるコウタとカークを置いて、アビーはクルトに近づいていった。
なにやらひそひそと話し合って、満足そうに頷く。
戦闘能力の把握以外にも狙いがあるらしい。
コウタとカークがこの世界で目覚めてから四ヶ月ちょっと。
拠点に新たな住人を迎えたコウタたちは、コウタとカーク、アビーとディダとクルトは模擬戦を行うことになったようだ。
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そして長くなったので分割してます。
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次話は確実に11/29(金)更新です!
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