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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第七章 コウタ、巨人族の小さな少女と出会って村づくりを進める』

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第三話 コウタ、巨人族の少女を拠点に連れて帰る


「それでどうするんだコータ、連れてくのか?」


「そうしようかと思って。カークがここまで案内してきた人だし」


「カアッ!」


「【導き手】のお導きか。コータとカークがいいんならいいんじゃねえか? なんだかんだ、ベルもクルトもカークが連れてきたようなもんだしな」


「ありがとう、アビー」


「カァー」


 拠点にしている精霊樹と小さな湖の西、連なる山々の中腹で、コウタとアビー、カークは巨人族(ギガント)の少女と出会った。

 大きくなりたいと願う少女を、コウタは拠点に案内することにしたようだ。


「じゃ、じゃあ!」


「うん、俺たちが暮らしてる場所に案内するよ。大きくなれるかはわからないし、精霊樹が果実(アンブロシア)をくれるかどうかはわからないけど」


「ありがとうごぜえます小さい人たち! ありがとうごぜえますカークさん!」


「『小さい人たち』って。そりゃまあ巨人族(ギガント)から見たら人間は小さいだろうけど」


「ディダが『里で一番小さい』ぐらいだもんね」


 巨人族の少女——ディダ——は、だばーっと泣き出した。

 うれしさのあまり抱きつく。

 コウタは柔らかな少女の胸に埋ま、らなかった。

 身長差のためコウタの頭はお腹のあたりだ。革鎧は硬い。


「網の繕い? はともかくとして、木工や細かい仕事が得意、か。ちょうどいいかもな」


「カァー」


 すっぽり抱えられたコウタを横目に、アビーは「村づくり」にぴったりだとうんうん頷いていた。

 コウタの肩から避難してきたカークも、アビーの杖の先で。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



 コウタとアビーが、カークに導かれたディダに遭遇した翌日。

 三人と一羽は、絶黒の森を歩いていた。

 拠点への帰り道である。


「へえ、じゃあその棍棒はディダが作ったんだ」


「んだ! 木を伐り出して乾燥させて、持ち手を整えて縄を巻いて……里じゃみんなもっと大きいから、おらの大きさに合ったヤツはなくて……おら、小さいから……」


「た、盾は? 表面の模様がキレイだね!」


 しゅんと落ち込むディダの気をそらすように、慌ててコウタが話題を変える。

 アビーとカークはじっとりした目でコウタを見つめる。


「うぇへへへ、そんな、キレイだなんて、これもおらが彫っただ。飾りでもあるんだけども、受け流したり引っ掛けたりするのにちょうどいいように工夫して」


「へえ、すごい! 俺なんてまっすぐ切れなかったからなあ」


「そ、そうか? すごいだか? えへへへ」


「単純か。けどまあ、予想以上に器用っぽいな。これは、コータの部屋もなんとかしてやれるかも」


「カァ?」


「カークが気に入ってるのはわかるけどよ、もうちょいしっかり造ろうぜ」


「カァー……」


 たしかに、とばかりに力なく鳴くカーク。

 精霊樹の根元にあるコウタとカークの寝床は、大きめの犬小屋といった風情の掘っ立て小屋だ。

 コウタとカークは気に入っていたが、アビーは「なんとかしたい」と思っていたようだ。

 なにしろいつ崩れてもおかしくない出来なので。


「それにしても、ディダは足が早いんだね。ゆっくり歩いてもらってるのについていくので精一杯だよ」


「そ、そうか?」


「身長がデカい分、足も長いからだろ。オレたちと歩幅が違いすぎる」


「なるほど。足の長さ、かあ……」


「デカい……おらが、デカい……うぇへへへ」


 コウタは足の短さを気にしてたらしい。

 どんより落ち込むコウタ、ニマニマするディダ。

 わかりやすい二人に、アビーはコイツら素直すぎだろ、とばかりに困り顔だ。

 カークは対抗心を燃やしてさっと飛び立った。俺の方が早いぞアピールである。


 ともあれ、帰路は順調だった。

 人間や動植物を(むしば)む絶黒の森の瘴気も、巨人族(ギガント)にはたいして影響がないらしい。

 それを見たアビーは「やっぱり魔力で体をデカくしたり強化してんのかもな」と推測していたが、それはそれとして。


「カァー!」


「あ、ほら、ディダ、見えてきたよ!」


「わあ、キレイなところだなあ!」


「帰ってきたって感じするな。オレもすっかり慣れたのかねえ」


「あっ! コウタさん、アビーさん、カークさん、おらのうしろに!」


「どうしたのディダ?」


「岩が揺れてるだ! きっと岩巨人(ロックゴーレム)にちげえねえ!」


 木々の切れ間から、そびえる精霊樹と湖が見えた。

 あと精霊樹の反対側に、揺れる大岩も。


「あっうん」


「カァ?」


「ディダ、あれは敵じゃねえ。だから気を張らなくていいぞ」


「えっ、だどもあの岩、揺れてるだけじゃなくて動いてて、こっちに近づいてくるだ!」


「えーっと、見てもらった方が早いかなあ。とりあえず、武器はしまってね」


「コウタさんが言うんなら……」


「コータへの謎の信頼感。まあいいこと、いいことだな、うん。いいことなはずだ」


 コウタ、すっかり懐かれたらしい。

 逸脱賢者といい古代文明の生き残りアンデッドといい、そもそもカラスといい、変わり者に好かれる運命なのか。

 それと。


「コウタさん、カークさん、アビーさん! おかえりなさい!」


「ベルもおかえり。今回もたっぷり【運搬】してくれたみたいだね」


「はい! 僕は荷運び人(ポーター)ですから!」


 勇者に追放された荷運び人(ポーター)も、すっかりコウタに懐いている。


「こ、こんなに小さい人があんな大岩を運んで……」


「あーうん、気にするなディダ。気にしたら負けだ」


「わあ! すごく大きな人ですね! たくさん【運搬】できそうです! ちょっと持ってみますか?」


「え? ベル、それ他人に触らせてもいいの?」


「はい! ご希望なら僕が荷運び人(ポーター)の特訓をします!」


「じゃ、じゃあ試しに、もしかしたら軽いかもしれねえし、おらより小さい人に負けるわけには」


「あっおいやめとけディダ、腰悪くするぞ」


「うんしょ!……ダメだ、持ち上がらねえ!」


「うーん、これは鍛え甲斐がありますね!」


「ベルもやめとけ。常識がおかしい村の常識がおかしい荷運び人(ポーター)の鍛錬なんてやらせたら普通の人は体壊すぞ」


「負けた……おらより小さい人に、負けた……」


「ほ、ほら元気出してディダ! ディダにはディダのできることがあるから! 俺もアビーもカークもクルトもあの岩を運べないし!」


「そうそう、体の大小なんて関係ねえんだって。体の性別だって関係ねえしな!」


「うう……コウタさん…………アビーさん…………」


「カァー」


 大騒ぎである。

 里にはいなかった「自分よりも小さな人」に負けたことは、ディダにけっこうな衝撃を与えたらしい。

 「デカいと強い」巨人族(ギガント)の価値観が真っ向から否定されたようなものなので。

 崩れ落ちたディダは、コウタとアビーの優しさにグスグスと泣きじゃくった。

 あとカークの慰めにも。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてからおよそ四ヶ月。

 「健康で穏やかな暮らし」に向けて、三人と一羽は新たな住人を迎えることになるようだ。

 全員が苦手だった木材加工の担い手である。

 3メートル超の巨人族(ギガント)の「細かい仕事」がどれぐらい細かいかは不明である。


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[一言] 巨人でも無理だったか…。
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