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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第六章 コウタ、新たな仲間とともに僻地の開拓をはじめる』

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第三話 コウタ、筋肉痛の逸脱賢者をいたわる


 古代文明の生き残り? のアンデッド、クルトから魔法を教わった翌日。

 コウタたちは、今日もまた精霊樹と小さな湖の間の広場に集まっていた。


「ぐっ。あー、けっこうキツイなこれ」


「アビー、大丈夫?」


「カァ?」


「すまねえけど今日は荷物運びは無理そうだわ。コータたちは平気なのか?」


 ぐっと腰を伸ばしながら、アビーがコウタに目を向ける。


「あっうん、俺はほら、女神様? に【健康】にしてもらったから」


「筋肉痛とも無縁なのか! 地味だけどうらやましいな!」


「大丈夫ですよアビーさん、体が痛い時も続けるとたくさん【運搬】できるようになります! 僕も子供の頃はそうやって鍛えました!」


「ハードすぎる。オレ、ベルの村に転生しなくてよかった。ありがとう親父。ありがとうおふくろ」


「生身の体であれば疲労が残っていたであろう。アンデッドも便利なものだ」


「くそっ、クルトもかよ! 疲れ知らず多いな!」


「カァー」


「ありがとうカーク。がんばっていこうな。オレたちは常識を大事にしていこうな」


 嘆くアビーの腕にカークが止まる。

 慰めているつもりなのか。

 三(・)本(・)足(・)のカラスの重みで、常識外れの『逸(・)脱(・)賢(・)者(・)』の腕がぷるぷる震えた。

 常識人ぶっている人ほど常識人ではないものだ。


「それにしても……魔法ってすごいなあ」


 昨日の成果をあらためて目にして、コウタはしみじみと呟く。

 広場の横、コウタが切り拓いた空間に、一軒の小さな家が建っていた。

 魔法で成形した石を魔法で固めた石造りの家は、昨日までなかったものだ。

 コウタが精霊樹の根元に作った、素人がDIYした大きめの犬小屋のようなものとはレベルが違う。


「ガラスが作れねえからなあ、木製の鎧戸でもつけるしかねえんだけど……」


「陽の光が届かない空間は快適なものだが」


「アンデッドと一緒にすんなって。光と風は大事なんだぜ?」


「それ、向こうで言われたなあ。だから朝起きるようにして、少しでも外に出るようにしたんだっけ」


「カァー、カア!」


 そしたら俺と会えたんだよな! とばかりにカークがばさばさ羽を鳴らしてアピールする。

 コウタの日課だった朝の餌やりは、カークにとっても喜ばしいものだったらしい。カラスを餌付けしてはいけない。


 石造りの家は平屋建てで、内部はふた部屋あるだけのシンプルな作りだ。

 部屋を分けたのは利便性ではなく、屋根を支えるための柱がわりだった。

 クルトは「心配あるまい」というものの、アビーは壁だけで屋根を支えることに尻込みしたらしい。


 光と風を採り入れるために開口部は多いが、外壁に窓はない。

 古代文明の生き残り魔導士であっても、「透明なガラス」は魔法では作れないらしい。

 あるいは研究者だったクルトの興味の範囲外だったか。


「採寸して、ベルに頼んで街で作ってもらう? 俺がやったら隙間だらけになっちゃうだろうし」


「とりあえずそうすっかな! んで、ヒマな時に透明なガラスの作り方を研究するか! どうやって作るんだっけなあ。魔法がある世界なわけで、多少強引でもなんとか」


「くははっ、素晴らしい意欲だ。どれ、気分転換に我も資料を漁るとしよう」


「研究の気分転換に研究のお手伝い……」


「二人ともすごいですね! 何か【運搬】する時は任せてください!」


「ベルは前向きだなあ」


「カァ? カァカア!」


 学者肌の二人を前に落ち込むコウタに、カークは「人には向き不向きがあるもんだ、胸はってやれることをやっていこうぜ」とばかりに慰めた。烏語は通じない。


「うん、そうだね。アビー、俺ちょっと畑を見てくるね。そのあとはカークと一緒に見まわりしてくるよ」


「カァ!」


 通じないのか?

 コウタとカークは、スキル【言語理解】である程度通じ合っているのかもしれない。


「サンキュー、コータ!」


「ふむ、では我も行こう。いまの世で『絶望の鹿(ホープレス・ディア)』と名付けられたモンスターが気になるゆえな」


「じゃあ僕はまた街に行く準備をしておきますね! あっ、けどもう一回ダンジョンで魔石を取ってきた方がいいかなあ」


「ナチュラルにモンスターを魔石扱いしてるなベル。荷運び人(ポーター)ってなんだろ。死も運ぶのか?」


 考え込むベルを前に、アビーの顔が引きつる。

 三人と一羽は気にしない。

 コウタは加工された「漆黒の剣」を手に、三本足のカラスとワイトキングをお供にスタスタ去っていった。

 ベルは大岩の中に潜り込んで、がさごそ整理をはじめる。


「うしっ、だいたい感じはわかったからな、次はコータたちの家をなんとかすっか!」


 残されたアビーは、また次の建築に取り掛かるようだ。




 コウタとカークがこの世界で目覚めてから三ヶ月が過ぎた。

 精霊樹の根元、小さな湖のほとりは、徐々に人が暮らす集落っぽくなってきた。

 もう少しすれば、建築に使える魔法を覚えたアビーの手により、コウタやベルの家も建つことだろう。

 健康で穏やかな暮らしは遠いが、一歩ずつ近づいていることは確かなようだ。


 ちなみに。

 異世界生活四ヶ月目にもかかわらず、コウタはいまだ人里に行ったことはない。

 引きこもる場所が部屋から森になっただけなのかもしれない。

 それでも、本人は楽しそうだが。心身ともに【健康】だし。




平日毎日更新なので次話は11/6(水)、の予定です。

次話は今章エピローグ。たぶん。


12/26に二巻が発売予定の

『アイヲンモール異世界店、本日グランドオープン!』もよろしくお願いします!

コミカライズ一巻も12/26に同時発売予定ですよ!(執拗な宣伝


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