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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第六章 コウタ、新たな仲間とともに僻地の開拓をはじめる』

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第一話 コウタ、街から戻ってきたベルを迎えて成果を聞く


 旅人や冒険者の侵入を拒む死の谷(デスバレー)を抜けた先、山々に囲まれた盆地。

 濃密な瘴気に満ちた「絶黒の森」と呼ばれるそこに、小さな湖があった。

 湖畔にそびえる大樹の下に、三人と一羽が集まっている。


「万物は陰陽いずれも宿しているのだ。『ワイトキング』の我でさえ、陽の魔力を持っている。ごくわずかではあるが」


「カァ? カアッ!」


「うむ、そうだカーク殿。しっかり陰の魔力が練れている」


「えっ? カークは俺と同じタイミングで練習はじめたのに……」


「なるほど、コイツを分けて考えるのか」


「アビーもカークもすごいなあ」


「あー、コータは意識が連続してるからよけいわかりにくいのかもな。カークは本能か? 元の世界じゃただのカラスなのになあ」


「アビーはどうだったの? すぐわかった?」


「魔力を感じ取るまで、オレは一ヶ月ぐらいだったかな」


「一ヶ月……俺がこっち来てからもう三ヶ月経ってる……」


「け、けどほら、オレは自分で動けねえ乳児で時間がたくさんあったからな! そう落ち込むなってコータ!」


 新たに知り合ったクルトに、古代文明の魔法理論を教わっているらしい。

 『逸脱賢者』で【魔導の極みLV.ex】持ちのアビーはすぐに感じ取り、カークは本能で理解したようだ。カークはカラスだが、この世界に来てから「三本足のカラス」になったので。


「うし、ちょっと休憩するか!」


「え? けど俺は【健康】で」


「最初から根を詰めてもいいことねえって、気分転換だ気分転換!」


「我はアンデッドゆえ休息は不要なのだが」


「疲れねえヤツ多いな! ブラック開拓はごめんだぞ!」


「カァ? カァー……」


「ははっ、カーク、アビーは黒がイヤって言ったんじゃないよ。カークの黒はツヤがあってキレイだと思うし」


「カァ? カァー……」


「すまねえカーク、勘違いさせちまったな」


 コウタの言葉にばっさばっさと羽ばたくカークを、アビーがするりと撫でる。

 跳ねまわるカークはなにやら動揺しているらしい。ツンデレか。カラスで、オスなのに。


「カッ、カアーッ! カァカア!」


 飛び立ったカークが大きく鳴く。

 照れをごまかした、わけではない。


「どうしたのカーク? あっ!」


「おー、岩が揺れてるな! 帰ってきたか!」


 コウタが途中まで切り拓いた道を、ひょこひょこ揺れる大岩が近づいてくる。

 大岩が動くその光景を見ても、コウタもアビーも焦ることはなかった。

 岩石系モンスターでもゴーレムでもない。


「ただいまです、みなさん!」


 岩の根元から明るい声がする。

 たたたっと駆けてくる。

 5メートルほどの大岩の重さなど感じさせないほど軽やかに。


「おかえり、ベル。いつもありがとう」


 勇者パーティから追放された荷運び人(ポーター)、ベルの帰還である。


「…………我、よく生き残れたなあ。死んでるけど」


 100トンは超えるだろう大岩を背負って駆け寄る荷運び人(ポーター)の姿を見て、クルトは思わず呟いた。

 ベル本人が言うには、「荷運び人(ポーター)は戦えない」らしいのだが。



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



「それで、どうだったベル? 魔石は売れた?」


「はいっ! これが明細です!」


「おー、あれだけありゃそれなりの額になるもんだな」


「小さな魔石は使い道が多いから、たくさん仕入れられてうれしいって言ってました!」


「んじゃその商人はよその街や村にさばくルートも持ってんのかも。よしよし」


「どうかなアビー? 開拓の資金源になりそう?」


「お屋敷や要塞を建てるわけじゃねえんだ、充分だろ」


「よかったー。……そういえば、魔石って何に使うの?」


「カァー。……カァ?」


 コウタの質問を聞いたカークがしょんぼりと視線を落とす。知らないで売ってたのかよ!とでも言いたいのか。もっとも、そのあとすぐに問いを重ねたようだが。カークも知らないらしい。賢くともカラスなので。


 三人と一羽は、最寄りの街まで往復してきたベルの報告を受けていた。

 先ほどまで魔法の練習をしていたのと同じ場所である。

 明細を確認するアビー、疑問顔のコウタとカークをよそに、ベルは大岩から荷をおろしている。報告なはずなのに。

 まあ、購入物のチェックも必要なことだ。

 決して「荷運び人(ポーター)は運んだあとのことは知らない」わけではあるまい。

 ベルもまた、村づくりのメンバーなのだ。


「ふむ、我も気になるところである。インディジナ魔導国では燃料代わりに使うことが多かったが……」


「その辺は変わらねえんじゃねえか? 魔石はだいたい、こういう魔道具に使うんだ。ほれ」


「おー、光った!」


「カァカア、カアッ!」


「明かりを灯す魔道具だ。魔道具の中じゃ一番普及してるかもしれねえ」


「へえええええ」


「ほうほう、現代ではこのような魔法式を使うのか。ふむ、興味深い」


「カァー」


 ベルが何気なく置いたカンテラをいじって、アビーが明かりをつけた。

 わかりやすい「魔石の使い道」にコウタは興味津々だ。クルトも興味津々だ。カークはうっとりしている。

 魔石をエネルギー源としたカンテラは、二人と一羽の顔をぼんやり照らす。


「こいつや点火の魔道具なんかはクズ魔石でも充分動く。だから商人が『たくさん仕入れられてうれしい』って喜んだんだろ」


「……つまり、乾電池みたいな感じ?」


「おう、やっぱ元の世界を知ってる相手だと話が早いな!」


「カァー」


 なるほど、とばかりにコウタが頷く。カークも頷く。クルトの目が爛々(らんらん)と輝く。『異世界の知識』だと察したらしい。

 ベルは荷下ろしを続けている。マイペースか。


「おっ、スケルトンの装備も売れたんだな。思ったよりいい値がついてる」


「え? あれ、けっこうボロかったような……」


「そのまま捨て値で売るか、鍛冶屋で直して安値で売るそうです!」


「けっきょく安いんだね」


「ははっ、買い取ってもらえただけ御の字だろ」


「この辺境では、武器も防具もどれだけあっても困らないって言ってました!」


「喜んでもらえたならよかった。じゃああのダンジョンは、思った通り資金源になりそうだね」


「おう! ただ、ほんとにいいのかクルト? 一番下、五階層には立ち入らねえようにするけど……」


「かまわぬ。むしろ、我の手で処理して売却を願おうかと考えていたところだ。現代の魔法書や魔道具、金属やモンスター素材に興味があるゆえな」


「なんというか、うーん……」


「難しく考えんなってコータ! クルトがいいって言ってんだ、OKだろ! ほら、ボスが雑魚モンスを狩るタイプのダンジョンがあってもおかしくねえって!」


 クルトは【ダンジョンマスター】だ。

 ダンジョンマスターだが、ダンジョンを荒らす侵入者の存在は許容できるらしい。

 そもそも研究所にたまたまダンジョンが繋がっただけであって、クルト自身に【ダンジョンマスター】の自覚はない。



 ともあれ、クルトの許可は出た。

 ダンジョンの素材は売れることも確認できた。

 「健康で穏やかな暮らし」を目指す三人と一羽の村づくりは、開拓の資金源を得たようだ。



「む、そうか。こうしてコウタ殿にアビー殿、ベル殿に出会えたのだ。手間をかけずとも、不要の魔道具や魔法書を売却すれば」



「待て。待てクルト。その話くわしく」



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