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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第六章 コウタ、新たな仲間とともに僻地の開拓をはじめる』

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第六章 プロローグ

短めです


「ふむ、絶望の鹿(ホープレス・ディア)とはよく言ったものよ」


「それで、どうかな? 斬れ味すごいし便利なんだけど、扱いづらくて……」


「いやあコータ、クルトがいくら『失われた古代文明の生き残り』ったって無理だろ。当時だって素材の加工は専門家の領域じゃねえか?」


 瘴気渦巻く絶黒の森で、三人が話をしていた。

 この世界に転移してきたコウタと転生した『逸脱賢者』アビー、【ダンジョンマスター】にしてダンジョンボスのワイトキングで古代文明の生き残り魔導士・クルトである。

 クルトはアンデッド化しているため生き残り(・・・・)と言えるかどうかは微妙だが、それはそれとして。

 ちなみにクルトの実体は黒い骨だが、ダンジョンの外では霊体を強めて痩せこけた壮年の姿を見せている。


「カァ?」


 コウタの肩に止まったカラスが首をかしげる。

 ともに転移してきて以来、カークはさらに賢さを増してきた気がする。三本目の足と一緒に知性も生まれたか。


「たしかに鍛治は専門外であるが——」


「やっぱり無理かあ。せっかくもらったツノだし、ずっと役に立ってくれてるし、整えられれば一番だったんだけどなあ」


「——瘴気を(かたど)ったこの素材であれば、整えるぐらいはできよう。ふんっ」


「うおっ、なんだその魔力!? マジか! マジか!!」


 絶望の鹿(ホープレス・ディア)がコウタに献上したツノを手に、クルトが力を込める。

 いや、込めているのは力ではない。

 魔力だ。

 それも、陰に振り切れて「瘴気」と呼ばれる魔力だ。


 目に見えるほど濃密な黒いモヤが鹿ツノ剣を包む。

 黒色に覆われて中は見えない。

 クルトの霊体がぽとりと汗を落とす。生物的な反応ではなく心情が現れたのだろう。たぶん。


 モヤが晴れた時。


「…………え?」


「カァーッ!」


「ははっ、すげえ、こんなことができんのか! すげえな魔法! すげえな剣と魔法のファンタジー世界!」


 そこには、一振りの剣があった。

 枝分かれした鹿のツノではなく、一本の漆黒の剣が。


 コウタはぽかんと大口を開ける。

 カークが目を見開いて叫ぶ。

 アビーが感嘆する。


「なに、たいしたことではない。陰の魔力経路を変更して一つの剣としたのだ。元が瘴気に満ちた素材であったこと、『斬る』という特性があったからの調整可能だっただけにすぎぬ」


「いやいやいや! 意味わかんねえぐらいすげえって!」


「カア!」


「すまぬ、コウタ殿。我の力量では柄の形成はできぬ」


「充分だよ、ありがとうクルト! 本当にありがとう!」


 受け取った漆黒の剣をかき抱いてコウタがぺこぺこお礼を言う。

 やはり枝分かれしたままのツノは使いづらかったらしい。当然である。


「あー、まあコータが使う分には柄がなくても問題ねえのか。いままでだってむき身だったしな」


「気をつけよコウタ殿、剣に満ちた瘴気は持ち手の精神を蝕み……いや、【健康】なコウタ殿にはいらぬ心配であったな」


 コウタがこの世界に転生した際、神から【健康】を授かった。

 クルトいわく「ギフト」、アビーが言うところの「スキル」で、そのレベルは最上の「ex」であるらしい。

 半引きこもりだったコウタが異世界で毎日活動できるのも、病も疲れもケガもないのも、このスキルのおかげだろう。

 モンスターの物理攻撃も精神攻撃も、コウタには一切影響がない。

 当然、光を拒むような禍々しい漆黒の剣も。


「ありがとうクルト。本当にありがとう。へへ、へへへ……」


 コウタは感謝の言葉と奇妙な笑い声を繰り返して、ぶんぶんとむき身の剣を振り続けていた。

 精神を蝕まれることはないはずなのだが。

 よっぽど気に入ったのだろう。


「コウタ殿? だ、大丈夫であるか? 我ひょっとしてやってしまったか?」


「ははっ、心配いらねえってクルト。あれは単にうれしいだけだろ。しばらくそっとしておいてやろうぜ」


「カァー」


 コウタとカークがこの世界で目覚めてからおよそ三ヶ月。

 コウタはようやく、武器らしい武器を手に入れたようだ。それも、ほかの人には扱えない自分専用の。テンションが上がるのも仕方のないことだろう。

 はしゃぎすぎて開拓が滞らないことを祈るばかりである。


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