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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第五章 コウタ、ダンジョンを探索して古代文明の生き残りアンデッドと遭遇する』

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第六話 コウタ、ダンジョンのボスと戦闘?を繰り広げる


「ふ、ふん! ならばスケルトン以外を喚び出すまで! 来たれ我が軍勢よ!」


 ベルにスケルトンナイトの軍勢を【解体】されたダンジョンボス——ワイトキングが手をかざした。

 ふたたび魔法陣が輝く。

 現れたのは、全身甲冑をまとったモンスターの群れだった。

 禍々しい鎧の隙間からは闇色のモヤが漏れている。

 何体かのモンスターは首から上がなく、兜を小脇に抱えている。


「また鎧姿のモンスターの群れかあ。アビー、あれは?」


「リビングアーマーとデュラハンだな。ナイトメアなしのデュラハンなら、ぜんぶアンデッド系統だ」


「え? リビングアーマーって、生きた鎧ってことじゃ」


「生きた鎧に思えるけど、鎧に取り付いたアンデッドが本体だ」


「じゃあもしかして……」


「ああ、どっちもアンデッド。つまり、()()()()モンスターだな」


「…………どうかな、ベル?」


「イケそうな気がします!」


 スケルトンナイトを【解体】して武器や鎧、魔石や骨をまとめて荷造りしていたベルが立ち上がる。

 迷うことなくアンデッドの群れに近づく。


 すでに()()()()モンスターに、ためらうことなく向かっていく。


「いきます! 【解体】! 【解体】! 【解体】!」


 ベルがナイフを振るうたびにデュラハンが、リビングアーマーが崩れ落ちる。

 複数現れれば街が危機に陥るほどのモンスターなのに瞬殺されていく。


 スキル【解体】。

 アビーが開発中の『鑑定魔法』で診断した「LV.ex」ともなれば、理不尽な効力を発揮するらしい。

 なにしろ、ケガも病気もしないコウタの【健康】と同じレベルなのだ。


「お、おおおおお、なんだこの現象は! 我が軍勢が一蹴されるとは!」


「なあワイトキングさん、アンデッドしか召喚できないなら何回やっても結果は変わらねえぞ? しかもアンタもアンデッドなわけで」


「ならば! 非実体系のモンスターで! 精神を壊してくれよう!」


 ワイトキングが、今度は左手をかざす。

 床ではなくドーム型の天井に魔法陣が広がる。

 すうっと流れるように現れたのは、ゴースト系統のモンスターだ。


「ふぅははははは! これならば【解体】できまい! いけ!」


 ゴースト、ファントム、バンシー。

 実体をもたないアンデッドがコウタたちに襲いかかる。


「ベル、下がってて!」


「はい! このモンスターたちは【解体】できる素材がありませんから!」


「コウタ、こっちは心配すんな。もう『魔力障壁』は張ってる、オレとベルに近づいてくることはねえ」


「よかった、じゃあ俺が壁役として……」


「一人を犠牲として逃げ出すか! くくっ、では存分に、我が研究所に無断侵入した男の心を壊してくれよう!」


 ベルと入れ替わるように、コウタが前に立つ。

 ゴーストとファントムがコウタに群がる。

 コウタと重なりすり抜ける。

 バンシーが悲鳴をあげる。


 常人であれば、生者を恨むアンデッドの度重なる精神攻撃で、心を壊してしまったことだろう。ワイトキングの言う通り。

 だが。


「…………えっと?」


 コウタは、半透明のゴーストとファントムとバンシーに群がられながら首を傾げた。

 特にダメージはない。

 この世界に来てから、コウタは心身ともに【健康】なので。


「あーうん、そうなるよなあ」


「す、すごい……勇者さまたちはゴーストに苦戦してたのに……」


「オレみたいに『魔力障壁』を張れなかった? それとも魔力の活性化ができなかったのか? 案外、幽霊が苦手なだけだったりしてな」


「これ、どうしたらいいんだろう」


「カアッ!」


 呑気なコウタの横手から、炎を身にまとったカークが飛来する。

 非実体系モンスターを通り抜ける。

 と、ぼああああと声にもならない悲鳴をあげて、ゴーストもファントムもバンシーも消滅していった。


 ドーム状の広間に残るモンスターは、ダンジョンボスのワイトキングだけだ。

 そのワイトキングは、カタカタと黒い骨を鳴らして戦慄(わなな)いていた。


「あ、ありえん! この数の霊体による精神攻撃なのだぞ!」


「アンデッドはこの二人相手には通用しねえみたいだぞ? 諦めたらどうだ? オレたちの資金稼ぎに協力してくれんなら討伐しないでこのまま——」


「我は! ここで死ぬわけにはいかぬ!」


 ワイトキングが両手を広げる。

 マントがはだけ、あらわになった胸骨の上でネックレスが輝く。


「侵入者に好き勝手されるのは業腹だが! 研究の完成こそ我が悲願! さらばだ理不尽な侵入者たちよ!」


 どうやら、相性の悪さを見て退くことを決めたらしい。

 だが。


 何も起きない。

 魔法の発動体であるネックレスの輝きが消えても、ワイトキングは両手を広げたままだ。

 黒い頭骨をかしげる。


「はっ、知らなかったのか? ボス戦からは()()()()()()んだ」


「あれ? アビー、さっきは逃げられるって」


「オレたちはな。けど、こっちが追い詰めてんのにボスに逃げられたくねえだろ?」


「そっか、俺たちが逃げられるなら相手だって逃げられるわけで」


「まあそんなダンジョンボスはいねえけどな。コイツは知能高いし、ひょっとしたらって仕掛けといたのよ」


「こ、これは、【空間魔法】? バカな、使い手は【陽魔法】より稀少な」


「おう。これだけ時間もらえりゃ、転移も霊体化も阻害できる結界を張れるってもんよ。オレだけ働かないわけにはいかねえからな!」


 うろたえるワイトキングを見て、アビーが誇らしげに胸を張る。服のつっぱりを感じてやっぱサラシ巻こうかなあなどとのたまう。

 コウタとベルがアビーを讃え、カークは油断なくダンジョンボスを睨みつける。


「くっ、我はここで死ぬわけにはいかぬのだ!」


「アンデッドみたいだし、もう死んでるんじゃないかな」


「死後アンデッドにならぬ者はどうなるのか! 魂は! ようやく糸口が掴めたものを!」


「えっと、複数の世界にまたがって輪廻転生するみたい」


「存在の不確かな神には頼らぬ! 命を創り出して我の理想の女性を——」


「神様、会ったなあ。女神様と少年みたいな神様、二人? 二柱? に」


 悲嘆に暮れていたワイトキングの動きが止まる。

 眼窩の炎が激しく揺れる。

 驚いて口を開けすぎたのか顎骨が落ちる。


 数秒後、フリーズしたワイトキングが再起動する。

 コウタに質問する。


「…………その話、詳しくお聞かせ願えないだろうか?」



 絶黒の森の南部、カークが発見したダンジョンの最深部。

 コウタたちは、ワイトキングと話をすることになったようだ。

 ダンジョンを攻略する者たちと、モンスターであるダンジョンボスの会話。

 もちろん、この世界の常識から外れている。

 三人と一羽の中に気にする者はいない。

 常識人はいない。ワイトキングを含めても。




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