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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十二章 コウタ、鍛冶に励むドワーフと出会って村に誘う』

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第九話 コウタ、二人のドワーフをクレイドル村に案内する


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 コウタたちはいま、拠点に帰るべく絶黒の森を歩いていた。


「ほう、すさまじいな」


「コウタ氏、よいのか? その、あのモンスターは彼らの同族ではないのか?」


「いいらしいです。意思が通じたり配下になるのは別ですけど、理解できないモンスターは同族って意識がないみたいで」


「カァ、カァー」


「そういうものか」


「では、トレント、幻惑花(ラフレシア)、に殺戮蟷螂(キラーマンティス)強殻甲虫(ハードビートル)殺人蜂(キラービー)兵隊蟻(ソルジャーアント)の素材は」


「いまのところ街で売ってますね。使えれば使いたいんですけど、俺たちには加工技術がないんで」


「我も、素材の性質を高めて本質を形取ることしかできぬゆえな」


「やっぱドワーフは素材に興味あるよな! 武器でも防具でも、作ってくれるならドワーフ……エルダードワーフでもいいけどよ、融通するぞ?」


 コウタたちだけではなく、見送りしてくれるらしい三体のモンスターと、コウタが招いたドワーフとともに。


 絶黒の森北側から拠点までは安全な道行きではない。

 あいかわらず虫系・植物系モンスターが襲ってくる。

 が、コウタたちが戦うまでもなく、同行していたドリアードとアラクネが一蹴する。あと希望の鹿(ホープネス・ディア)が二体のモンスターにお尻を叩かれて駆け抜ける。

 アビーいわく「ボスモンスター」は強く、戦闘よりも素材の剥ぎ取りと運搬準備の方が時間がかかったほどだ。


「でもアビーさん、街の商人さんのところにも持っていきたいです! いつも喜んでくれるので!」


「まあなあ、その繋がりは大事だよな。生活物資のほとんどを頼ってるわけだし」


「なに、『すべて譲ってほしい』というわけではない。儂らが試したい分を少々譲ってもらえれば。もちろん対価は払おう」


「師匠……アビー氏、おそらく氏らが取引しているのは儂が剣を卸した商会と同じではないか。最近、強力なモンスター素材を多く扱うようになってな」


「あー、なるほど。んじゃそのへん話通した方がスムーズかもなあ」


 大量のモンスターに襲われながらも軽く撃退して、ゆるい会話をしながら進む。

 エルダードワーフの二人はコウタたち一行に引き気味だ。

 なにしろ、アラクネやカークを見て死を覚悟したほどなので。

 彼我の実力差がわかるあたり、二人も決して弱いわけではないのだが。


「素材……だったら、アレが一番興味あるかもしれないね」


「うむ。コウタ殿の言う通りであろうな」


「ほう、何やら貴重なものがあるのか?」


「よいのか? 師匠はクルト氏と知己とはいえ、儂らは昨日会ったばかりというのに」


「二人は信用できると思いました。それに、いろんなものを加工できる人たちと繋がりを作れるのは大事だと思うから」


「たしかにな! まあイケるだろ、発見には【導き手】のカークも関わってんだし、エルダードワーフやら地下王国やら、存在自体を長年隠してきたヤツらなんだから!」


 ドワーフと出会って北の地を旅立って二日目。

 荷運び人(ポーター)・ベルが背負う大岩の中には、順調にモンスター素材が溜まってきた。

 今回も使える素材を収納して、ほかは燃やして埋めて後処理をして。

 ふたたびコウタ一行が歩き出してしばらくのこと。


「し、師匠。あれ、あの樹は……」


「あれは……クルト氏、あれはまさか。神酒(ネクタル)もどきの出所は」


「ふぅははは、焦らずともよかろう。我らはあの地へ向かうのだから」


「おー。2000年生きたエルダードワーフでも珍しいものなんですね」


「そりゃそうだろコータ。だから、できるだけ秘密にしとこうって話してんだし」


 コウタが整地した道の先に、森の木々よりも高くそびえる樹と、小さな湖が見えてきた。


「コウタさーん! おかえりなさいだ!」


 どすどすと地面を踏み鳴らして、笑顔で駆け寄る大きな女性も。

 巨人族(ギガント)のディダである。

 3メートル超の身長は、巨人族(ギガント)の中では小柄らしい。


「おっ、無事に帰ってきたみてえだな。そんでその人たちは……ドワーフ!?」


 続けて現れたのは、隻腕の元剣聖。

 エヴァンは、コウタたちの背後にいる二人のドワーフの存在に目を丸くしている。

 ボスモンスターに呼ばれて出ていったと思ったら、なぜかドワーフを連れ帰ってきたので。


「ただいま、ディダ、エヴァン。俺たちの村を守ってくれてありがとう」


「お、おう、そりゃいいんだけどよ」


「話は広場でしようか。エヴァンも興味あるでしょ?」


「そりゃな!」


 エヴァンは無意識に、義手の左手で腰の剣に触れる。

 ドワーフを警戒してのことではなく、ありふれた鉄の剣を卒業できるかもしれないと期待して。


 二人のエルダードワーフはエヴァンのたたずまいを見て息を呑んだ。

 じっと体つきを見つめ、左の義手に視線を移し、鉄の剣を見て顔をしかめた。


「なるほど。これは興味深い」


「ですね、師匠。腕が鳴ります」


「えーっと……?」


「まあまあコータ、どうせ話するんだ、いまは放っておけって。それよりほら」


 アビーにぽんと肩を叩かれてコウタが振り返る。

 ここまで同行した三体のモンスターが立ち止まっている。


「んー!」


 と、幼女姿のドリアードがさっと希望の鹿(ホープネス・ディア)の背に飛び乗って片手をあげる。

 アラクネは女性の上半身をぺこっと折り曲げて、片方しかないツノを掴まれた鹿は引きつった笑いで会釈した。


 三体のボスモンスターは、ここで別れるつもりらしい。


「見送りありがとう。また何かあったら知らせてね!」


「んっ」


「じゃあみんな仲良くねー。あ、襲われなければドワーフを見かけても襲わないように!」


 コウタが手を振ると、ドリアードも手を振り返す。

 アラクネと鹿はぺこぺこする。

 そうして、三体のモンスターは住処に帰っていった。

 絶黒の森の北側、新たに生まれたダンジョンへと。


「……なんというか、コータもなんだかんだこっちに適応してんだなあ。グリンドさんにガランドさん、大丈夫か? コータはあんなこと言ってっけど」


「アレを見て戦おうとする無謀なドワーフなどおるまい」


「道理である。不意に遭遇しても、逃げの一手であろうよ」


「実力差のわからぬ若手がいないことを祈っておこう」


 襲われなければ襲わないように。

 つまり、攻撃してきたら反撃していい。

 コウタの言葉に、ガランドは神妙な顔をしていた。意味もなく襲いかかられることはない分、異論はないようだが。


「さあ、帰ろうか!」


 コウタが声をかけると、一行はふたたび歩き出した。

 チラチラと興味深そうにドワーフを見るエヴァンとディダを引き連れて。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 急な呼び出しを受けたコウタは、ようやく拠点へと帰ってきた。

 行きにはいなかった、エルダードワーフの二人を連れて。



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