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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十二章 コウタ、鍛冶に励むドワーフと出会って村に誘う』

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第五話 コウタ、ドワーフに案内されて地下にあるドワーフの里に向かう


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 コウタは絶黒の森の北側にできたダンジョンにいた。

 いるのはコウタだけではない。

 三本足のカラス・カークに『逸脱賢者』のアビー、荷運び人(ポーター)のベル、古代魔法文明の生き残りアンデッドのクルト。

 ダンジョンの細い通路の入り口にはドリアードと鹿が、コウタのすぐ上にはアラクネが張り付いている。


 そして、コウタの正面、ダンジョンが崩れてできた穴の先にもう一人。


「なんという日だ! 死を覚悟したかと思えば、ありえぬ瘴気の剣と使い手を(まみ)えて! 儂らを知り、儂らの技術を持つアンデッドと出会うとは!」


 ヒゲを揺らして大笑(たいしょう)する、ドワーフがいた。


「えっと……?」


「なあクルト、これどういうことだ? 何か知ってるのか?」


「うむ。我もまさかこのようなところで遭遇するとは思わなかったが……」


 うしろにいたクルトがコウタの前に並ぶ。

 見た目は人間形態のクルトは、ごそごそとボロいマントの内側を探っている。


「アンデッドのお客人。儂らに認められた(あかし)はお持ちかな?」


「しばし待て。たしか腰骨の内側に……うむ、これだ」


 クルトの骨張った手に握られていたのは、ひと振りの短剣だった。

 鞘には細かな意匠が施されている。

 相手がアンデッドと知りながら、ドワーフは臆することなく近づいて短剣を受け取る。

 鞘の意匠を確認して、わずかにずらして刀身を眺める。


「間違いない。師匠の作だ」


「へえ、短剣の模様でわかるようになってるんですね」


「待てコータ。感心してる場合じゃねえ。師匠? クルトがアンデッドって知らなかったわけで、ってことはクルトが生きてる頃に知り合ったはずで。なのに師匠? おかしくない?」


「グリンド氏にはお世話になったものだ。氏は息災か?」


「ああ、お客人さえよければ里へ案内しよう」


「おー! クルトのおかげで話が早いね。ありがとうクルト!」


「いやいやいや! さらっと流すなコータ! クルトの知り合いが生きてるわけねえだろ2000年以上前なんだぞ!?」


「希望ならお仲間も案内しよう。ただ……その、モンスターは」


「あっはい。けどカークだけはいいですか? ほら、小さいし賢いし大人しいんで」


「カア?」


「う、うむ、わかった」


「わあ! ドワーフの里は初めてです! 楽しみですね!」


「みんな、ここまで案内してくれてありがとね。俺たちは大丈夫だから」


 コウタの言葉を聞いて、天井にいたアラクネがするすると地面に下りる。

 上半身の女性部分がぺこっと頭を下げて、元きた道へ戻っていった。

 狭い通路の入り口では見た目幼女のドリアードが無表情に手を振って、鹿は「帰っていいんですかい? 本当に?」とばかりに愛想笑いしながらじりじり後ろに下がっていく。


 カークがひと声鳴くと、三体のモンスターは通路の奥へ消えていった。


「じゃあ、よろしくお願いします。えーっと」


「ガランドだ」


「よろしくお願いします、ガランドさん。あらためて……俺はコウタ、肩にいるのはカークです」


 コウタと、ガランドと名乗ったドワーフががっちり握手する。

 ガランドの目はコウタの剣に釘付けだけれども。


「あああああ! なんでみんなスルーしてるんだ!? 2000年だぞ!? いや冷静に考えたらモンスターがさらっとコータの指示聞いてんのもおかしいけどな!? おおおおおお!」


「お客人、彼女は」


「時おりああなるのだ。我もあの気持ちはわからんでもない」


「はあ」


「気にせぬことだ。さきほどコウタ殿の剣を目にした時、ガランド殿も同じような状態であったぞ?」


 クルトに指摘されて、ガランドは納得いったとばかりに頷いた。

 コウタには聞こえていない。

 硬い表情で胸に手を当てて深呼吸している。

 肩のカークは心配そうにコウタを見つめている。


 流れからドワーフの里に向かうことになったが、コウタにとっては数年ぶりの人里。

 それもたくさんの見知らぬ人たちに囲まれることが予想されたので。

 コミュニケーションが得意ではなく、元の世界で半引きこもり生活を送っていたコウタが緊張するのも無理はないだろう。


 コウタ、試練の時である。




 コウタとカーク、アビー、ベル、クルトはダンジョンにできた穴を潜った。

 通り抜けた先にあったのは、明らかに人の手が入った通路だ。

 壁面や床は整えられて、ところどころ柱や梁で補強されている。

 ただ柱も梁もすべてが土か石材で、補強は魔法によるものらしい。


 先導するドワーフのガランドは夜目がきくようだが、コウタたちはアビーが灯した魔法の明かりを頼りに足を進めていた。

 だがコウタの足取りは重い。



「うう……」


「コウタさん? 大丈夫ですか?」


「カァー」


「そっとしといてやれベル。コータは緊張してるだけだから。それよりも!」


「う、うむ? どうしたアビー殿?」


「どうしたじゃねえよクルト! ドワーフの師匠? グリンド氏?と知り合いってどういうことだ!?」


「我の研究所を作るにあたり、グリンド氏に土魔法を教わったのだ。場所を秘する以上、自分で作るに越したことはないゆえな」


「へえなるほど、じゃなくて! 時間! 寿命! ドワーフの寿命はそんな長くねえだろ? 帝国にも少しはドワーフがいたんだ、オレでも知ってるぞ?」


「ふむ……」


「お客人。ドワーフには、()()()ドワーフと、()()()()()()ドワーフがいる」


「むっ、よいのか?」


「師匠が認めたお客人のお仲間さんだ。問題ない」


「普通じゃないドワーフ?」


「普通のドワーフは人族と変わらぬ程度の寿命だ。だが普通じゃないドワーフは寿命を持たん」


「…………は? 寿命がないっておかしいだろ!?」


「アビー殿。『普通じゃないドワーフ』は人里に降りることは稀なのだ」


「それにしたってさあ! え、じゃあ不死? 普通じゃないドワーフは不老不死?」


「いや、死ぬ。いわば精霊のようなものだ。終わりを受け入れたら、生に満足したら、死ぬ。定命がなくとも」


「精霊。あー、そういや『ドワーフは土の精霊』って説もあったか。知り合ったドワーフは普通だったからトンデモ説だと思ってたんだけどなあ。不死じゃないにしたってもっと有名で、研究されててもいいような」


「くはは、人族がそれを言うか。ではのちほど問うことにしよう」


「は? 何をだ?」


「のちほどな。さて、着いたぞ」


 先頭を歩いていたドワーフのガランドが立ち止まる。


 そこは、地中とは思えないほど巨大な空間を見下ろす崖となっていた。


 緊張してまわりが見えていなかったコウタでさえ、その景色にぽかんと口を開ける。


「ようこそお客人。ここが、(いにしえ)より続くドワーフの国。マウガルア地下王国だ」



 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 コウタ、初めての人里訪問はなし崩しであった。

 それも、人族は存在さえ知らないドワーフの地下王国へ。




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