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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第二章 コウタ、TS逸脱賢者と出会ってこの世界のことを知る』
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第四話 コウタ、女の子に熱弁されてちょっと腰が引ける

説明回っぽいナニカです

前話ラスト、「魔力の量ではなく質に驚く」に変更しました


「うげえ!? なんだこの魔力の質! こんなことありえんのか!?」


「え? え? あの、大丈夫アビー? 俺も大丈夫?」


 奇妙な声をあげて、アビーは座っていた丸太から滑り落ちる。

 くるぶしまであるローブがめくれて白いふくらはぎが見えている。

 コウタは気にしない。足派じゃないのか、ではなくて。


 コウタに許可を取ってからアビーが使ったのは「鑑定」魔法だ。

 自分を見られて驚かれたのだ、コウタが足どころじゃなくなるのも当然だろう。


「お、俺なんかおかしかったかな。魔力量がとんでもないとか」


「あーすまねえ、動揺しちまった。いや、量は問題ないんだ。普通の魔法使いの倍はあるけど、魔力量だけで言ったらオレの方がある」


「へえ、すごいんだねアビー」


「まあな! 帝都貴族学園どころか帝立魔法研究所イチの魔力量だったんだぜ?」


「一番かあ、俺には縁がなかったからなあ。すごい、うん、すごいよアビー!」


「へへっ、オレは幼い頃から訓練してたからな……じゃなくて!」


「カアッ」


 ダメだコイツら、とばかりに呆れ声で鳴くカーク。冷静なのはカークだけだが会話には参加できない。賢くともカラスなので。


「あ、そうだった。それで俺の何がおかしいの?」


「魔力の量は多いけど、それだけならたまにいる。おかしいのは量じゃねえ、質だ質」


「質? 魔力に違いがあるの?」


「ある。体内に魔石がある、人やモンスターには生まれつきの性質があってな、得意な属性なんかもそれに左右されんだ」


「え? 人の体の中に魔石があるの? 俺もあるのかな」


「カァー。カアッ!」


「そうそう、それはあとでなカーク。そんで、コウタの魔力の質、生まれ持った性質を初めて見たって話だ」


「……俺、大丈夫?」


「まあ問題はねえと思うんだけどなあ。質がな、キレイすぎんだよ。精霊に近いんだけど属性はねえ。なんだろうなあこれ……」


「目覚めたらいきなりここにいたし、顔も体もちょっと変わってるし、やっぱり生まれ変わったのかなあ」


「だろうな、転移ってことはねえだろ。日本にいた時からそれなら魔法を使えたっておかしくねえもん」


「けど、転生ならアビーもでしょ? アビーはどうなの?」


「質は普通だな。得意属性が偏ってねえ分、鍛えていろいろ使えるようになったけどよ」


「やっぱりアビーはすごいんだなあ」


「まあな! 鑑定魔法を開発したのはオレだし、失伝してた空間魔法を復活させたのもオレなんだぜ? まあいまんとこどっちもオレしか使えねえんだけどな!」


「空間魔法。あ、さっきいきなり現れたのは」


「おう、空間魔法の転移だ! まだピンポイントじゃ行けねえからな、さっきのはいくつか条件組み合わせたイチかバチかで」


「カアー」


 そいつは大変だな、とばかりにカークが鳴く。

 丸太に座り直したアビーの前に移動して、カァカァと柔らかく。褒めてるつもりか。


「女なのに女っぽくない、というかオレは男のつもりで。空間魔法、鑑定魔法を開発して。こっちの常識から外れたりもしてたからな、ついた二つ名が『逸脱賢者』だ」


「へえ。なんかかっこいい」


「うぇへへへへへ、あんがとよ」


「カァッ!」


 二人して天然か、マジメにやれ、とばかりにカークの鋭い声が響く。

 だが仕方あるまい。

 アビーにとって、コウタはこの世界で初めて「話が通じる」同郷の男なのだ。

 しかも心が男のままのアビーにとって、この世界初の「同郷の男同士」である。通じ合って褒められたらニヤつくのも当然だろう。


「空間魔法はなんとなく想像できるけど……『鑑定』がこっちにないんだったら、どうやって実現したの?」


「はっ、空間魔法が想像できるだけでこっちじゃ『常識外れ』なんだけどな。まあいいや、鑑定な鑑定! いやあ、大変だったんだぜ聞いてくれるか!」


「は、はあ」


「まずこの世界に『スキル』や『ステータス』は存在しねえ、いや知られてなかったんだ!」


「あ、そうなんだね。あれ、けど俺は【健康】で、鹿のツノでも傷つかなくて」


「そう! 明らかにおかしいヤツはいた! 見た目は細いのに怪力なヤツとか、特定の動きだけ早く力強くなる剣士とか、いきなり馬に乗れるようになる剣士とか、同じ魔力量で似たような質なのにぶっとんだ火力の魔法使いとかな!」


「は、はあ」


「カァカァ」


「だからオレは思ったんだ、知られてねえだけで『スキル』はあるんじゃねえかって! けどどうやって判別するか、どうやったら情報を得られるかがわからねえ。いや、わからなかった!」


「あの、アビー? ちょっと落ち着いて」


「そこでオレは考えたのよ! この世界には神がいるんじゃねえかって! 教会が崇めてる信仰上のカミサマじゃねえ、上位者、もしくはシステム管理者って意味の神だ!」


「あれ? 神様」


「カァ?」


「だったら情報があるんじゃねえかってな! つまりオレが開発した『鑑定魔法』は、人やモンスターを見るんじゃねえ! 世界記憶(アカシックレコード)にアクセスして情報を引き出して読み取る魔法だ! 開発中だしまだ断片的にしか理解できねえけどな!」


 理論から説明しなくとも話が通じるという状況が嬉しいのだろう、アビーの語りは止まらない。

 拳を振るって熱弁する金髪碧眼の美少女に、コウタとカークは引き気味だ。

 が、一人と一羽が揃って首を傾げた。


「神様ってあの女神様かなあ。俺に加護をくれるって言ってたし」


「カア」


「そうそうその神様が加護、言い換えりゃ『スキル』を人間に、って待て待て待て! 待てコータ! 会ったのか!? 神様に会って転生だったのか!?」


「あっはい。輪廻転生の案内役の女神様と、乱入してきた?っぽい男の子の神様に」


「しかも二人!? いや神様って柱で数えるんだっけってそれどころじゃねえ! いたのか! マジでいたのか神様! おおおおおおオレの苦労は、『神の実在』を証明するための戦いはあああぁぁぁ…………」


 地面にヒザをついてアビーが頭を抱える。

 ぬぉぉぉおおお、と過去の苦闘を思い出して煩悶する。地面を転げる。


 神の実在、あるいは不在の証明は、魔法があって「スキルっぽいもの」が存在する世界でも大変なことらしい。

 のたうちまわるアビーを慰めるかのように、カークはそばに寄り添う。三本目の足で頭を撫でる。


「ははっ、ありがとなカーク。そうだよな、いるってわかったのはプラスだ。うん、プラスなんだ」


 自分に言い聞かせたアビーが動きを止めた。

 すぐそこにいるカークと目を合わせる。


「……そういやカークは神様に会ってねえよな?」


 カークはフイッと視線をそらした。


「その、カークも俺と一緒に転生したから、たぶん会ってると思う。元は日本にいたから」


 コウタが喋れないカークをフォローする。


「おおおおおお! 転生なのにオレは会ってないんですけどぉぉぉおおお! ハナから会えてたらもっと簡単だったのによぉぉぉおおおおお!」


 アビーはふたたび転げまわった。



 一人と一羽が異世界生活をはじめてから一週間。

 同郷で同じ転生者であっても、境遇は違うらしい。

 あるいはコウタとカークが異端なのか。


「なんでこんなに違いが……あ、『記憶はなくなる』って言ってたっけ。転生ではあるけど、輪廻転生だからって」


「ぉぉぉぉおおおおおお! マジかよじゃあなんで前世の記憶が残ってんだオレ! 男なのに女ってけっこうしんどいんだぞ神様ァ!」


 大木と小さな湖と森が広がる盆地に、少女の悲嘆が響き渡った。



……アビーは緊急事態と興奮でテンションが高いだけです。たぶん。

落ち着けば普通になる、はず。

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