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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十二章 コウタ、鍛冶に励むドワーフと出会って村に誘う』

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第二話 コウタ、到着した森の北の奥地がダンジョン化したことを知る


「うん、急いで行くよ」


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 広場に集まっていたコウタは、慌ててやってきたカークに促されて立ち上がった。


「どこまでだろ、ドリアードと鹿が一緒ってことは、森の北側かな?」


「カアッ!」


「平気平気、俺は【健康】で疲れないからずっと走ってられるし」


「待て待てコータ、一人で行く気か? 何があるかわかんねえんだぞ?」


「そうだね、じゃあ」


「はい! 僕も行きます! 食料を運ぶ人は必要ですよね? いつでも出られるように準備してありますから!」


「ありがとう、ベル」


「スピードについていけんのか?ってベルは【悪路走破】に【体力回復】スキルもあんのか。荷物は必須だし適任っちゃ適任なんだけど……」


「ふむ。ならば我も行こう。戦えない荷運び人(ポーター)を守る者も必要であろうからな」


「クルト? ありがたいけど、大丈夫? ずっと走り通しになると思うけど……」


「なに、心配は要らぬ。我は『骸骨馬(スケルトンホース)』も喚び出せるゆえな!」


「便利すぎるだろクルト」


「精霊樹の至近には近づけぬが、周囲には防衛用のアンデッドも配置してくれよう!」


「いやほんと便利すぎるだろクルト。一家に一体ワイトキングだな」


「いろいろありがとう、クルト。行くのはこの三人でいいかな」


「待てコータ! オレも行くぞ! クルト、骸骨馬(スケルトンホース)はもう一体出せるか?」


「うむ、それほど高位のアンデッドではないゆえ数十体は可能であるが」


「アビー、馬に乗れるの?」


「はっ、オレは元貴族だぞ? 乗馬は貴族のたしなみだよ!」


「えっそうなの?」


「コーエン王国じゃ『貴族男性のたしなみ』だったけどねえ。じゃじゃ馬な嬢ちゃんだ。コウタさん、俺ァ残るよ。馬にゃ乗れるけど、乗りながら剣を振る練習はしてねえからな」


「ふむ、失念していた。義手の操作性を高めるために戻り次第、実験——訓練に協力してもらうとしよう」


「実験って言ってんじゃねえか! 喜んで協力するけどもよ!」


「コウタさん、おら、おら……」


「ディダも、エヴァンと一緒にこの場所を守ってくれるかな? 精霊樹も湖も、家も畑も。俺たちの大事なクレイドル村を」


「おら、命に代えても村を守るだ!」


「危なかったら逃げてね。大事な場所だけど、みんなの命の方が大事なんだから」


「うう……コウタさん……」


「コータ、オレたちは準備OKだ! 行けっか?」


「うん、行こう! じゃあエヴァン、ディダ、あとは任せたよ!」


「おう! 気ィつけてな!」


「いってらっしゃい!」


「カアーッ!」


 巨人族(ギガント)のディダと元剣聖のエヴァンに見送られて、コウタは走り出した。

 先導するのは三本足のカラス・カーク、やや遅れて希望の鹿(ホープネス・ディア)と、鹿の背に乗ったドリアードが続く。

 精霊樹から離れたところで古代魔法文明の生き残りアンデッド・クルトが二体の骸骨馬(スケルトンホース)を喚び出して、アビーとクルトが騎乗する。

 コウタと、荷運び人(ポーター)のベルは馬に乗ることなく走って。


 一行は、小休止を挟んだだけで絶黒の森を駆け抜けた。

 ちなみに、小休止はコウタでもベルでも骸骨馬(スケルトンホース)のためでもなく、希望の鹿(ホープネス・ディア)の息が上がったためである。街の一つや二つ滅ぼせるほどのモンスターであっても、一行の中では一番「疲れやすい」ようだ。ほかがたいがい人外なので。存在的に。




「カア、カアーッ!」


「連れてきたかったのはここかな?」


「んー!」


 コウタの質問に、見た目幼女のドリアードがふるふると首を振る。


 午前から走りはじめて、午後遅く。

 コウタたちは絶黒の森の北側、山脈のふもとにたどり着いた。

 かつて二体のモンスターが睨み合っていた開けた場所には、ねじくれた黒い木がひょろりと一本だけ立っている。


「な、なあ、あのくっそ禍々しい木ってまさか」


「変異した精霊樹であろうな。このわずかな期間で若木になるとは」


「この辺はなんだか空気が違いますね!」


 話し込むアビーとクルトをよそに、カークとドリアード、鹿は黒い木を通り過ぎる。

 その先にあるのは、岩肌に開いた3メートルほどの穴だ。

 カークと二体のモンスターに続いて、コウタたちもその穴に侵入する。


 入り口こそ狭かったが、中に入ると穴はそこそこ広かった。

 コウタが余裕を持って立ち、左右に腕を広げられるほどに。


「あれ? なんか明るい?」


「ダンジョン(モス)だな。これはやっぱり」


「先ほどの若木のあたりからダンジョン化したのであろう。これは興味深い」


「おー! 『瘴気』と『強力なモンスター』、『象徴的な何か(シンボル)』でダンジョン化するんだっけ? アビーとクルトの予想通りだね!」


「まあなあ。まさかこんなすぐに、あっさりダンジョン化するなんて思ってなかったけど」


「うむ。三体集っていたゆえか、あるいはこの地の瘴気ゆえか、それとも精霊樹がきっかけになったのか……かつての同僚であれば血眼になって研究したであろう」


 ゴツゴツした岩肌は、下方からほのかな明かりに照らされている。

 おかげでコウタたちは明かりをつけることなく穴を進めた。


「ダンジョンってことは、モンスターを警戒しないとね」


「たしかに。……まあ警戒するまでもなくカークたちが殺るだろうけどな」


「カアッ!」


 できたばかりのダンジョンに入っても、一行を先導するのはカークだ。

 うしろにいたドリアードは鹿から降りて、小さな足でトコトコ歩いている。

 時おり伸ばした手から枝葉を生やして前方に向ける。

 コウタたちが通り過ぎる時には、干からびた残骸だけが残されていた。


「コウモリにネズミ、かな?」


「できたばっかの洞窟系ダンジョンの定番だな。油断しないに越したことはねえけど、これなら鎧袖一触ってヤツだ」


 そうして、早足で進むこと二時間ほど。

 先頭にいたカークがコウタの肩に戻る。


「カアッ、ガアーッ!」


「この先が連れていきたかったところ、かな?」


「カアカァ!」


「アラクネまでいんのか。ほんと、何があったんだろうなあ」


「警戒すべき魔力反応は感じぬ。だが」


「持って帰りたい物を見つけたんでしょうか? その時は僕に任せてくださいね!」


 本道から外れた小さな側道の入り口に、下半身が蜘蛛で上半身が女性のアラクネがいた。

 カークやコウタの姿を認めて、しゃかしゃか手脚を動かす。自分が出した糸を回収しているようだ。

 しばらくすると、アラクネはすすっと脇に寄った。

 まるで、「コウタが来るまで閉じ込めておきました。お先へどうぞ」とばかりに。


「とにかく、行ってみよう」


「カアッ!」


 本道よりも小さな空間にコウタが足を踏み出す。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 コウタが踏み出した足は、できたばかりの村を新たな状況に追いやることになる。

 この一歩が何をもたらすのか、コウタはまだ知らない。あと三時間ぐらい。




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[一言] 3時間w 意外と深い
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