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【健康】チートでダメージ無効の俺、辺境を開拓しながらのんびりスローライフする  作者: 坂東太郎
『第十二章 コウタ、鍛冶に励むドワーフと出会って村に誘う』

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第一話 コウタ、村で話し合っていたところ急な訪問を受ける

※8/21 プロローグにあわせて途中までカーク不在に修正


 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 コウタたちは、クレイドル村の広場に集まっていた。


「それでは、第一回クレイドル村運営会議をはじめます」


「どうしたコータ、急にあらたまって」


「人も増えてきたし、こういうのも必要かなあって」


「そこはもう村長のコウタさんが決めればいいんじゃねえか?」


「んだ、おら難しいことはわからねえし……」


「僕もです!」


「ふむ、我は村民ではないゆえ参考程度にしてほしいが、こうした話し合いは必要であろう」


「うん。村長になったのは俺だけど、わからないこともまだまだ多いから……方針はみんなに相談したくて」


「なるほどねえ。うっし、わかった! んじゃ定期的にやってくか!」


 絶黒の森にある精霊樹と小さな湖のほとり、広場に集まったのはクレイドル村の住人である六人、オブザーバーとして一体だ。

 カークは日課の見まわりで不在だが、問題にはならなかった。村の大事な住人ではあるが、カークは喋れないので。


 村長で、この世界に来てから心身の【健康】を得たコウタ。

 帝国を出奔した逸脱賢者のアビーは、コウタをサポートするために筆記具を準備する。

 最初こそコウタたちに任せようと話し合いに乗り気ではなかった荷運び人(ポーター)のベルや、小さな巨人族(ギガント)のディダも、必要なことだと聞いて真剣な顔になる。

 先代剣聖・エヴァンは、小さな容器から一口酒をあおろうとしてやめた。

 古代文明の生き残りアンデッド・クルトは、一歩引いて住人たちの会話を聞こうとしている。


 一人と一羽ではじまった絶黒の森での生活も、気づけばずいぶん人が増えた。

 家ができて、畑ができて、生活していくだけなら問題のない環境が整っている。

 だからこそ、コウタは「今後の方針」を話し合いたかったのだろう。

 もし生活に支障があるなら、話し合うまでもなく問題の解決に動くはずだから。


「それで、テーマはなんだ? コータはなんか懸念があるんだろ?」


「うん。急ぎじゃないんだけど……死の谷(デスバレー)の先の街だけじゃなくて、もう最低でももう一箇所は交流があった方がいいと思うんだ」


「ん? なんか理由があんのか?」


「たとえば崖崩れで死の谷(デスバレー)を越えられなくなるとか、もし何かあった時にいまの状態じゃ困るかなあと思って」


「あー、なるほど」


「はい! どんな悪路でも僕が荷物を運びます! 僕は荷運び人(ポーター)ですから!」


「そういやベルには【悪路走破】とかいうスキルもあったっけ。けどベル、コータが言いたいのはそういうことじゃねえんだ。たぶん」


「うむ。コウタ殿が言いたいのは、生命線の確保ということであろう。生活の安定には必要なものである」


「生命線が切れてもクルトは無事だけどな! 引きこもり歴2000年のアンデッドだし!」


「俺ァ賛成だコウタさん。ここじゃまだ酒は造れてねえからな」


 コウタの魔力を肥料にすれば畑から芋やカラス麦は収穫できる。

 漁業資源の枯渇を気にしなければ、湖で魚も釣れる。

 一部のモンスターは食用もできる。

 もし街から物資を買えなくなっても最低限の生活は送れる。だが、あくまでも最低限だ。


 最低でももう一箇所、人里と交流を持つ。


 コウタの提案は満場一致で賛成された。


「できれば、東の死の谷(デスバレー)とは別方向がいいと思うんだ」


「もしもの備えだしな! 谷が越えられなくなったら意味ねえもんな」


「けど南はおっさんの住処で、北はアイツらが住んでんだろ? 人里なんてねえんじゃねえか?」


「うん。だから……」


 コウタがチラッと横を見る。

 ディダは、小さく頷いた。


「一人前になるまで帰りたくないっていうのはおらのワガママだべ。村に必要なら、おら里まで案内するだ」


「ありがとう、ディダ」


「だども、おらの里は巨人族(ギガント)しかいないだ。コウタさんたちが欲しい物が手に入るかどうか……」


「そん時はそん時だろ! ありがとよ、ディダ!」


巨人族(ギガント)の酒……待てよ、それそうとう量があるんじゃねえか!?」


「最初に反応するのが酒かよ! 自重しろおっさん!」


「大きな荷がたくさんありそうですね! 肩が鳴るなあ!」


「鳴るの肩でいいのか? 荷運び人(ポーター)よくわからねえ」


「緊張するけど……ディダの知り合いなら……それに村には必要なことなんだし、俺は村長なんだし」


「無理すんなよコータ。別に村長だからって、コータが行かなきゃいけないわけじゃねえんだからな?」


 巨人族(ギガント)の里を出たディダは、一人前になるまで帰りたくないと日頃から言っていた。

 だが、村のために自身の思いを曲げてくれるようだ。体だけでなく心も大きい。


「ありがとうアビー。でも、俺も行くよ。克服したいし……最寄りの街より、ハードルは低いと思うんだ」


「まあ人の数は少ねえだろうし、ディダがつないでくれるだろうしな! 何かありゃオレたちが前に出るから、コータはどっしり構えてくれてりゃいいって!」


 一方で、見知らぬ人との会話を想像したコウタの手は震えていた。

 この世界に来てから十ヶ月が経ち、外にも出て、開拓や農作業、それどころかダンジョン探索やモンスターの討伐までしている。

 だが、元の世界の「激務からの退職&半引きこもり生活」のダメージは癒えていないらしい。


 それでもコウタは村長として新たな一歩を踏み出そうとしていた。


 近いうちに別の人里と交流するという話はまとまった。

 行くメンバーを決めようか、とコウタがみんなを見渡した、ところで。


「あれ?」


「カアカァカアッ!」


「カーク? それに、ドリアードに鹿?」


 コウタたちが集まる広場に、一羽のカラスに先導されて、幼女を背に乗せた鹿が駆け込んできた。


 見た目は5歳ぐらいの幼女はドリアードで、鹿はただの鹿ではなく希望の鹿(ホープネス・ディア)とコウタに名付けられたモンスターだ。

 ここにはいないアラクネも含めた三体は、コウタに森の北側で屈服して以降、ときどき遊びに来るようになっていた。

 だが、いまは一羽と二体とも慌てた感じだ。

 きゅっと眉をしかめる幼女はともかくとして、鹿はいまにも倒れそうなほど息が荒い。


「どうしたの? 何かあった?」


「カァ! カァ、カァー!」


「ん!」


 コウタが話しかけるとカークはわめき、ドリアードがこくこく頷く。

 幼女はさらに手から枝と葉を生やしてワサワサ音をたてる。

 音を聞いたカークはカァカァ鳴く。

 まるで、説明しているかのように。


「カアッ! カア! ガアッ!」


「わっ、ちょっカーク!」


 いいから行くぞ、とばかりにカークがバタバタと羽をはためかせる。

 コウタの袖をくわえてぐいぐい引っ張る。

 のんびり座るコウタに業を煮やしたのか、頭に止まって軽くついばむ。


「こういう時、会話できりゃなあ。どうするコータ?」


「カアッ、ガアーッ!」


「なんか焦ってるみたいだしね、とにかく行ってみよう」


「ん!」


「ガアッ!」


「うん、急いで行くよ」


 追い立てられるようにコウタが立ち上がった。



 コウタとカークがこの世界で目覚めてから十ヶ月と少し。

 気がつけば、一人と一羽のまわりには何人もの仲間がいる。あと何体ものモンスター。

 元の世界では部屋に、この世界では森に引きこもってきたコウタの心境は、少しずつ変化しているようだ。村長として。




次話は来週に!(たぶん


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