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魔王『最近ゴーレム同士をバトルさせるゴーレムビルドファイトが流行っているので、勇者クンもワガハイと一緒に憧れのゴーレムマスターを目指すんだぜ!』 勇者「帰れ!」 その③


 迷宮最深部に有る、リッチの書斎。

 壁にはトロフィーが並び、ガラス棚には何体ものゴーレムが保管されている。


 リッチがその内の一体を取り出し、テーブルの上に載せた。

 全長か20cmほど。騎士の様な外見をしたゴーレムが、リッチの号令とともに起動し身構える。



《さあ勇者殿。これが市販されているゴーレムの一番プレーンな機体でゴザイマス。コンソール式とシンクロ式、どちらの操作方法が勇者殿に向いているか、マズはテストをするんでゴザイマス。さあ、入力装置を》



 そういってリッチが勇者に入力装置を手渡す。

 それは一枚の板に一本のレバーと六つのボタンが付いていた。

 勇者が入力装置をテーブルに置く。レバーを左手で握り、ガチャガチャと動かしてみる。右手でボタンの幾つかをペチペチと押してみる。



「ほへー。随分と簡単な造りなんだな」


《ソレがコンソール式の入力装置。基本的にはレバーでゴーレムの移動を制御。ボタンが攻撃やその他のアクションでゴザイマス。まずは→で前進》


「→ね。おお、動いた」



 テーブルに置いたゴーレムがのしのしと歩く。



《Pでパンチ》


「殴ってる殴ってる。連続で出せるのか」



 ゴーレムが何もない空間に拳を繰り出す。



《Kでキック》


「蹴ってる蹴ってる。お、回し蹴りだ」


《Jでジャンプ》


「跳んだ跳んだ」


《↓↘→Pでエネルギー弾》


「え? くぬっ! こ、こうか?! おお、出た!」


《→↓↘Pで対空迎撃》


「ええ?! いや?! くぬ! で、出ないだろコレ!」


《↙ → ↘ ↓ ↙ ← ↘ P+Kでレイジングストリーム》


「出せるか!!!」



 勇者が入力装置を殴りつける。

 リッチが呆れた顔で入力装置を手に持ち、軽々とレイジングストリームを発動させる。



《この技は属性攻撃の初歩でゴザイマスぞ勇者殿。属性攻撃が出来ねば、チョキのみでジャンケンするのと同じでゴザイマスぞ》


「ゴーレムが攻撃出す前にオレの手首がねじ切れるわ! ナシ! コンソール式無理!」


《ある程度の慣れは必要なのでゴザイマスが。ではシンクロを試してみるでゴザイマス》



 そういって勇者にバイザーと二本の短い棒を差し出す。

 勇者がバイザーを頭にかぶり、棒を両手に一本づつ握る。


 勇者のバイザーが起動し、眼前にゴーレム視点の光景が魔力で投影された。

 勇者が腕を振ると、ゴーレムも腕を振る。



「おお! これゴーレムの視点か!」


《そうでゴザイマス! バイザーを見ている方向がゴーレムの進行方向でゴザイマス!》


「なんだかこう、自分がゴーレムになった感じだな!」


《シンクロ率が上がれば上がるほど、より自分の体のように動かせるんでゴザイマス!》


「こっちなら行けそうだ! 魔王、じゃねえサトゥルヌシ少年! お前もゴーレム操縦してみ! ちょっとスパーリングしようぜ!」


『フヌハハハハハ! 地方大会優勝者をスパー相手にご所望とは良い度胸なんだぜ勇者クン!』



 そう言いつつ、魔王がゴテゴテとデコレーションされたゴーレムをテーブルに置く。

 魔王の号令と共にゴーレムが起動し、ファイティングポーズを取る。


 ゴーレム同士が小刻みなステップを踏んで、ジャブで相手をけん制する。

 その後ろでは、バイザーをかぶった勇者と魔王が薄ら笑いで腕を振る。



《コンソール式と違ってフィールドを俯瞰出来ないのがシンクロ式の短所でゴザイマス! 相手が死角に回らない様に警戒し、足技も控えるのがコツでゴザイマス!》


「何言ってやがるリッちゃん! 体の動きをダイレクトにトレス出来るんなら、勇者たるこのオレが負けるハズがねえ! ガハハハハ!」


『言うではないか勇者よ! 地方大会優勝者たるワガハイのキャリアの差を見せ付けてやろうではないか! フヌハハハハハ!』



 二体のゴーレムが書斎のテーブル上を駆けまわり、パンチやキックを繰り出す。放たれたエネルギー弾がソファーに焦げ目を作り、対空技が天井のシャンデリアを揺らす。

 勇者のゴーレムが回し蹴りを放ち、魔王のゴーレムがスウェーバックでかわす。

 魔王が足元の椅子を蹴り飛ばし、勇者が積んだ本を肘でなぎ倒す。

 二体のゴーレムがフックを繰り出し、両者のこめかみにヒットする。クロスカウンターが綺麗に決まり、二体のゴーレムが同時に倒れた。


 そしてテーブルの両端でも、勇者と魔王が四つん這いになり吐いていた。



「無理。酔う。げぷっ!」



 鼻水を垂らし涙目になった勇者が、青ざめた顔でイヤイヤをする。

 テーブルの反対では、魔王も悲壮な顔で唾液を吐いていた。



『なんかこう、ジントニックを一気飲みして全力疾走したような。ブフェッ……』


「サトゥシ君、ゴーレムファイトが唯一の取り柄だったのに。ないわー」



 カシミールが醒めた顔で魔王を見下ろす。



《お二人ともシンクロ率計測ではアンテナ一本。安定して戦えるアンテナ三本には程遠いでゴザイマスな》


『そんなリッちゃん! ワガハイは、カシミールちゃんを全国大会へ連れてゆくと約束したんじゃ!』


「目当ての生リッちゃん様に会えたし、もう大会は良いや、サトゥシ君も用は無いかな」


『そんな?!』


「クールだなカシミールちゃん」



 勇者が鼻をかみながら立ち上がる。



『しかしゴーレムの操作がこれほど難しいとは』


「ガキの遊びだと思って舐めてたな」


《そこも新規参入のネックなのでゴザイマスよ。そうでゴザイマス勇者殿。シカラバ第三の入力装置を試してゴザイマせんか?》


「コンソール式とシンクロ式の他にも何かあんのか?」


《新規開発中の、その名も音声入力式!》


「おお!」


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