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魔王『最近ゴーレム同士をバトルさせるゴーレムビルドファイトが流行っているので、勇者クンもワガハイと一緒に憧れのゴーレムマスターを目指すんだぜ!』 勇者「帰れ!」 その②


《おお、勇者殿もゴーレムビルドファイトを始めるんでゴザイマスな! 大会運営役員兼、大会三連覇のこのダークネスエルダーリッチめが、手取り足取りゴーレム沼に引き込みますでゴザイマスぞ! ホヘヘヘヘ!》


「ゴーレムマスターお前かよ!」



 ハイランド中央平原の中ほど。

 旧古代勇者古墳跡。今はダークネスエルダーリッチの秘密基地と化した地下迷宮入り口で、リッチ本人が勇者と魔王を出迎えた。



「大会役員で大会優勝者ってすげえマッチポンプじゃない?」


《最高峰のファイトをユーザーに提供するのも、運営の勤めでゴザイマスれば。小生のプレイが「ここまで出来る」というベンチマークになるのでゴザイマスよ》


「そんなもんか。てか、ちょっと見ない間にすごい建物増えてないか? ココ」


《冒険者育成施設に、完全アンデッド化実験農場に、異世界漂着物管理研究所に、リッチ&ブレイブスのブランド開発センターと、あとは小生の趣味の錬金工房。広大なる地下迷宮でもさすがに手狭になってゴザイマして、地上にも研究所や職員の宿泊施設をば》


『リッチをこき使いすぎなんだぜ勇者クン』


《イエイエ魔王殿。小生大変充実した日々を送ってゴザイマスれば。ホヘヘヘ》


「ああそうだ、ついでに占い師ちゃんからの伝言があったんだ。城の下の別荘街なんだけどさ、最近ヨッパライが増えすぎだって。オレとしちゃすげえ好みの街になったし、ハメ外したい貴族のオッサンたちにも受けは良いんだけどさ。奥方様たちから子供を外で遊ばせにくいって苦情が来てるらしいんだ」


《おお、それはいけませんでゴザイマスな。執事殿と早急に相談し、手を打ちましてゴザイマしょう》


「オッサンよりも子供だ。子供が減るのはオレが困る。夏に噴水公園でカイザースラウテルンする男の子だけが、オレの心のオアシスなんだ。それに領民さんたちの就職場所にもなってるからな」


『唐突に領主らしいことを言う』


「当たり前だろう? ハイランドは仕事がなくて若者が帝都へ出稼ぎに行って、人口が減る一方なんだ。きちんと雇用を創出し、若者を地元で暮らせるようにすれば、収入も安定し、家庭も持てるようになり、出生率も増加し、最終的には増えた男の子の一人や二人をオレのお嫁さんにくれるかも知れないだろ?」


『結論が! 生け贄を求める祟り神かおぬしは』


「つってもよー。教会のお嫁さん探しも難航してるみたいだし、お嫁さんの地産地消も視野に入れるべきだろう」


『おぬしの特殊過ぎる性癖をさて置くとしても、お嫁さんを地産地消なんて言ってる奴の所に来る嫁は居ないと思うんだぜ』


《そうそう勇者殿。これを占い師ちゃんにお渡しをお願いするでゴザイマスよ。リッチ&ブレイブスの新しいブランドTシャツ試作品でゴザイマス》



 勇者がリッチから受け取った紙袋から、Tシャツを取り出し広げる。

 そこにはアヘ顔Wピースを決めるリッチの姿がプリントされていた。



「……。ええー? 今こんなの流行ってんの?」


《小生のファンにバカ売れでゴザイマス》


「マジかー」



 勇者がTシャツにプリントされたリッチのアヘ顔をまじまじと眺める。

 その時、物陰から一人の女の子が飛び出した。



「ああ! やっぱりここに!」


「ん、誰? 魔王の知り合い?」


『ああ、あの娘は――』



 振り返った勇者と魔王の横を駆け抜け、少女はリッチの前でペコリとお辞儀をした。

 頭を上げた少女の目には、キラキラとハートマークが輝いていた。



「キャー♡! あの、ゴーレムマスターのダークネスエルダーリッチ様ですよね?! すごい! 生リッちゃん様だぁ! わたし、リッちゃん様の大大ッ大ファンなんです! サトゥシ君、リッちゃん様と知り合いって本当だったの?! またいつものフカシかと思っちゃった!」



 タンクトップとホットパンツにサスペンダーという露出狂じみた出で立ちの少女が、へそを出してぴょいぴょいと跳ね回る。



「ああ! も、申し遅れました! わたしは、サトゥシ君、サトゥルヌシ君の、セッ……ガールフレンドの、カシミールです! はじめまして! あ、あ、握手、いいですか?!」


「魔王の本名、イカツイな」


《良いでゴザイマスとも、元気なお嬢さん! ホヘヘヘヘ!》


「ギャー! 生リッちゃん様と握手しちゃった! もう一生この手洗わない!」



 興奮する少女を眺め、勇者がリッチに尋ねる。



「えー、なに? リッちゃん普通に子供とかに人気なんだな、アンデッドなのに」


《まあまあ、コレもリッチ&ブレイブスのブランド普及活動の一環でゴザイマスよ!》


「失礼ねオジサン! リッちゃん様は今や帝都一有名な死人なのよ?!」


「オジ……」


「死に顔Wピースやってもらっていいですか?!」


《良いでゴザイマスとも! ホヘヘヘヘヘヘ!》


「ぎゃー♡! もう死ぬぅぅ♡!」


「そんな名前なんだ、そのポーズ」



 顔をピンク色に火照らせたカシミールが、感極まった顔でリッチに懇願する。



「リッちゃん様! デビュー戦の時からファンでした! わ、わたっ、わたしの、わたしをオモチャにして下さい!」


『マジか』


「おいまて早まるなビッチのお嬢ちゃん。こいつのオモチャってお嬢ちゃんが考えるようなエッチな関係じゃなく、腕六本のキメラにされるとか、自我を持つアンデッドにされるとか、多分そういう方向性だぞ?」


《失礼でゴザイマスな勇者殿。小生はそんな遊び半分の人体改造なぞ致しませんでゴザイマスぞ。それはそうとお嬢さん殿。人体を光合成可能にする寄生植物のドナーを募集しておるのでゴザイマスが》


「やっぱりじゃねえか!」


《いえいえ勇者殿。これは人類を食事という面倒な作業から解き放つ、画期的な実験でゴザイマスぞ! 心まで植物のように穏やかになりすぎて身動きしなくなるのが現状の課題なのでゴザイマスが》


「完全に植物じゃねえか! そーいうのはオレに隠れてコッソリやれ!」


『……。』




 ☆




《ささ。立ち話も何でゴザイマス。何はともあれ小生の書斎に案内するでゴザイマスぞ》



 四人がぞろぞろと連れ立って、迷宮の階段を下る。

 最後尾でテンション高く周囲を眺めていたカシミールが、一つ前を歩く魔王に話しかける。

 


「そういえばさ、サトゥシ君、その喋り方どうしたの?」


『フヌッ?! ワガハイの喋り方が、な、何か変なんだぜ? フヌハハハハ!』


「ええ~? いつもは『カシミール殿ひどいでゴザルよ~でゅふふ』みたいな、リッちゃん様を半端に真似たクソキモい感じだったのに」


『そ、そんな喋り方だったのぜ?!』


「イキリ倒した髪型からは予想もつかんキャラだったな、サトゥルヌシ少年」



 前を歩く勇者がしみじみつぶやく。

 魔王が後ろ歩きで階段を降りつつ、カシミールに弁明した。



『イ、イメチェンなのだぜカシミール嬢! そのキャラもちょっと飽きてたから、新しいキャラ付けなのぜ!』


「地方大会で倒れて緊急入院してからは、この瓶底眼鏡もかけなくなったし」


『し、視力が悪いのもキャラ付けだったんだぜ!』



 カシミールが分厚いレンズのはまった眼鏡を取り出す。

 魔王が受け取り、慌ててポケットにしまう。



「そう。まあ前のキャラよりキモさ六割減だから良いか」


「キモさは有りきなんだ」


「ええオジさん。だって何やったってベースがサトゥシ君だし」



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