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魔王『最近ゴーレム同士をバトルさせるゴーレムビルドファイトが流行っているので、勇者クンもワガハイと一緒に憧れのゴーレムマスターを目指すんだぜ!』 勇者「帰れ!」


「いや待て! ――何歳だ?」


『フヌハハハハハ! 良くぞ気づいたんだぜ勇者クン! 今度のワガハイのアヴァターは十二歳だぜ!』


「……。生えて、いるのか?」


『モッサモサなんだぜ!』


「帰れ!! ナノミクロンの興味も失せたわ!! ソファーに座んなくつろぐな! 帰れ!!」


『そう言わずに勇者クンもワガハイと一緒に、今流行りのゴーレムビルドファイトをやるのだぜ! ゴーレム、ゲットだぜ!』


「ゲットしねえ! 帰れ! アストラル体のツノとツバサ似合わねえな! そもそも何だよその口調!」


『ゴーレムビルドファイターは大体こんな口調なのだぜ! ファイトをやっている内にこんな口調になっちゃうんだぜ!』


「そんな口調になりたくねーからやらねー! 帰れ! つうか何なんだよその真っ赤な頭! 定規で引いたような直線のみで構成された髪型しやがって! てか髪かそれ! 兜か何かじゃなかったのか! ん? おお?! お前の髪型、正面から見ても横から見ても同じ形状に見えるぞ? マジで何だこれ。時空歪んでんじゃねえのか?」


『ゴーレムビルドファイターは大体こんな髪型なのだぜ! ファイトをやっている内にこんな髪型になっちゃうんだぜ!』


「呪いの儀式なんじゃねえの?! そんな髪型になりたくねーからやらねー! 帰れ! そもそもゴーレムブームとか聞いた事ねえわ。まーたここじゃないどっかの異世界で流行ってるとか、そういう話なんだろ?」


『違うんだぜ! この世界で流行っているんだぜ! まあ確かに近年ゴーレム物と言うジャンルは、ナロー回廊で連結された億万の異世界で静かな盛り上がりを見せているんだぜ。特にキャラクターとしてのゴーレムは、ヒロインの数が増えてきたら変化球として出しとくかレベルの定番キャラなんだぜ!』


「嫌だろ、ひたいにemethって書いてある土くれのヒロインとか」


『ゴーレム観が古い! 最近のゴーレムは、もうほとんど人間と変わらない姿なのがテンプレなのだぜ。ゴーレムヒロインと言っても、関節がかろうじて球体関節とか、無知属性とか、女性器が付いてないからプラトニックラブを強要されるとかでキャラ立てしてるだけで、あとはほぼほぼ人間なんだぜ!』


「そんな子たちを戦わせるのか。酷いな」


『違うのだぜ! 異世界で流行ってるのはゴーレムヒロインとか、重機としてのゴーレムとか、家財道具としてのゴーレムなのだぜ! だけどこの世界には、ゴーレムビルドファイトという形で伝播し発展したんだぜ! キットを購入し、パーツをチョイスし、自分だけのゴーレムを組み上げてフィールドで戦わせる! それがゴーレムビルドファイト! 小金持った貴族の子供たちに大人気なんだぜ!』


「いーから帰れ! いや待て! ――子供に人気、だと?」


『そうなんだぜ! でも勇者クンが興味ないんなら他の仲間を探すんだぜ!』


「座れ! まあ座れ。話を聞こうじゃないか魔王よ。よく見るとアストラル体のツノもツバサも王冠も、中々似合ってるじゃないか。そうだ、ミルクティー飲むか?」


『頂くんだぜ! いや、違うのう。ミルクティー、ゲットだぜ! フヌハハハハ!』




 ☆




『昔はゴーレムではなく、その辺りのモンスターを捕まえて殺し合わせていたそうなんだぜ。でも今の皇帝が子供のホビーとしては残酷すぎるというんで、生類憐れみの令を出して禁じたんだぜ』


「確かにな。虫とかならともかく。んで代わりにゴーレムか」


『帝都では半年ごとに全国大会が行われるほどの盛況ぶりなのだぜ! 優勝者にはゴーレムマスターの称号が贈られる。子供たちの憧れの的なんだぜ! ワガハイのアヴァターであるこの男の子も、生前からビギナークラスのゴーレムビルドファイターでの。じゃが、地方大会で優勝した直後に死んでしまったんだぜ! だから全国大会に行って、この子の夢を叶えてやりたいんだぜ!』


「そんないきさつがあったのか」


『うむ。ゴーレムを操作する方法は、専用コントローラからコマンドを送るコンソール式と、ファイターが精神をシンクロさせ直接戦うシンクロ式の二種類があっての。この子はシンクロ率を高めるために大会前に禁止薬物をキメまくって、大会直後にオーバードーズで脳死したんだぜ!』


「……哀れだが自業自得すぎてビタイチ同情できねえな」


『ゴーレムは機体に色んな属性攻撃をセット出来ての。ただ肉弾戦のみで戦うんでなく、ド派手な属性攻撃で相手の弱点を突く! まるでボクシングと将棋を一緒にやっているような、インパクトのある戦闘ビジュアルと相性を探る頭脳戦! これがゴーレムビルドファイトが子供に大受けしてる理由なんだぜ!』


「ほー。属性とか相性とかあんのか」


『うむ。ノーマル属性ほのお属性みず属性くさ属性でんき属性いわ属性じめん属性……』


「多いな!!」


『全部で18属性あっての。それぞれに弱点・普通・耐性・無効化・反射・吸収の相性がある。例えばまぞ属性はさど属性の攻撃を吸収するが、おやばれ属性の攻撃が弱点となる』


「覚えきれるか!!」


『うむ。最初はもっと少なかったんじゃがの。ブースターパックが出るたびに追加され、今ではこんな状況なんだぜ! 運営委員会もそれを憂慮して、数年前から属性が三つだけのビギナークラスを新設し、新規ユーザー確保に努めてるんだぜ!』


「さっき言ってたな、ビギナークラス。まあ属性三つなら覚えられそうだ」


『属性の名は、あか属性・あお属性・き属性。あか属性はあお属性に強く、あお属性はき属性に強く、き属性はあか属性に強い。単純明快な三すくみなんだぜ!』


「おお。炎と氷と電気とかそんな感じか」


『いや。き属性はイエロー。すなわちエロス! き属性のゴーレムはいつも思春期の中学生が如く、異性への悶々とした妄念をたぎらせているんだぜ!』


「触りたくねえ!!」


『そしてあお属性はブルー。すなわちブルー! その心根は日曜夜の新入社員より陰鬱で、常に現実逃避じみた世迷い事を吐いては周囲を苦笑いさせるんだぜ!』


「関わりたくねえ!!」


『最後にあか属性はレッド。すなわち革命家! 常に暴力革命の実現を声高に扇動し、隙あらばブルジョアを吊るし――』


「スターップ! スタアァーッップ!!」


『ぬ?』


「レッドを詳しく説明するのは止めよう。な?」


『そうか。つまりはそういう三すくみよ。あか属性はあおに強い。革命の炎は沈んだ心に火を付ける! あお属性はき属性に強い。100万回生きたねこも言っておる。「可哀想なのは抜けない」と! そして、き属性はあか属性に強い。革命の炎もエロ衝動には勝てぬ。おちんちんファースト!』


「……子供に厄介な思想を植え付けてんなあ。ゴーレムビルドファイト」


『と言う訳で勇者クンもビギナークラスからゴーレムビルドファイトをやるのだぜ! 憧れのゴーレムマスターになって、子供たちのヒーローになるのだぜ!』


「うーん……。ま、まあビギナークラスならそんなに難しくもなさそう、か?」


『実はワガハイの知り合いが前大会のゴーレムマスターなので、頼めば手取り足取り教えてくれるんだぜ!』


「まじか! んじゃあいっちょ目指してみるかよ。男の子たちの憧れ、ゴーレムマスターってやつをよォ!」


『ウェーイ! フヌハハハハ!』


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