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魔王『最近ダンジョン経営するのが流行っておるそうなので、ワガハイにどこかお手頃な地下迷宮物件を紹介してくれぬか?』 勇者「帰れ!」



「いいや帰るな! ハハハハ! とうとう本性を表しやがったな魔王テメーこの野郎!! 魔王がダンジョンに悪の巣窟を構えるなんざあ、まんますぎて笑えるぜ! ワハハハハハハ! よーしオレサマ今日こそお前をブッ殺しちゃうぞおぉーーー……。骨だ」


『フヌハハハハハ! ……うむ』


「スケルトン……。だよな」


『そうなのじゃ、勇者よ。今回のワガハイのアヴァターは、スケルトンなのである』


「お前の無限転生の基本設定を、ちょいと確認し直したいんだが、良いか?」


『うむ。ワガハイも確認し直したいと思っておった所だ』


「古いお前が死ぬと、この国にある死にたてホヤホヤの死体の中のどれか一つに、完全ランダムで乗り移って生き返り、新しいお前として転生する。これで良いんだよな?」


『うむ。そうである』


「……」


『……』


「ホネじゃん!!」


『死体は死体じゃろ!!』


「死体だけれども! もう完全に骨じゃん! 死にたてホヤホヤじゃねーじゃん! 生き返ってねーじゃん!」


『スケルトンだってモンスターじゃろ! 倒されれば死ぬじゃろ! 倒されたてホヤホヤのスケルトンだったんじゃ! スケルトンとして生き返ったんじゃ! 転生ルール的に何も問題は無い!』


「スケルトン生きてねーじゃん! 転生じゃねーじゃん! 転死じゃん!」


『転落死みたいに言うでない!』


「だいたいルールがガバガバすぎんだよ! こないだ偽魔王を倒しに行った時だって、近くの死体に転生ラリーしやがって! アレ絶対にランダムじゃねーじゃねーか!」


『……まあのう。転生は原則として完全ランダムであるものの、深遠なる因果律の収束により、時折不可思議な連続性を見せる。今後の研究成果の待たれる所である』


「お前が研究するんだよ」


『しかしまあ、アンデッドに転生してしまったものは仕方がない。このアヴァターで新しき人生を、いや、人骨生をエンジョイする所存であるぞ。フヌハハハハハ!』


「……しかしこう、プレーンなスケルトンがアストラル体のツノと翼を生やして王冠かぶってるのって、悔しいけどちょっと格好良いな」


『お、そうか? フヌハハハハハ! ゴテゴテした姿よりシンプルな方が、かえってワガハイの魅力をストレートに表現できるのやも知れぬな。ふむ。二百年後に復活するワガハイの本体の参考としよう』


「……。とりあえず、ミルクティー飲むか?」


『うむ。頂こう』




 ☆




「そーいや前に別れた時、お前の依り代なんだったっけ? あんま覚えてねえ」


『ウサギであったな』


「そうか。まあウサギならすぐに死ぬか」


『そうでもないぞ? ウサギはウサギで死ぬまでに色んな冒険をしたのじゃよ勇者よ。タヌキを騙してお婆さんを助けたり、ワニを騙して島から島へと渡る踏み台にしたり、カメを騙して八百長レースに勝ってしまったり。まあ最後のブック破りのせいで騙した皆に袋叩きにあって死んだんじゃがの』


「何だろう。詳しく聞かなくてもお前がどんな生涯を送ったのか想像がつく」


『策士策に溺れる人生であった。泥の船のようにな。騙したタヌキやワニやカメにボコられながら、ワガハイ心に誓ったのよ。次の人生だけは、嘘をつかず他人を騙さず何も隠さず、全てをさらけ出して生きてみようと』


「それで生まれ変わってたら、今度は何も隠さずさらけ出してる骨になってましたってか? それお前スケルトンに転生した後で思い付いただろ」


『その通りじゃ。フヌハハハハハ!』


「初手で嘘ついてんじゃねえかこの野郎。んで、ダンジョンがどーしたって?」


『うむ! それよそれ。最近ナロー回廊でつながる億万の異世界では、ダンジョン経営が静かなブームとなっておってのう』


「ブームも何も、そりゃダンジョンが有りゃそこを管理してるヌシも居るだろうよ」


『いや、そう言うのではなくてじゃな。まあ悪のダンジョンマスターとして宝目当ての冒険者たちを倒して、装備をかっぱいでの小銭稼ぎも基本ではあるが』


「ダンジョンを経営ってそういうんじゃないのか?」


『違う。ごく普通の人間の家にダンジョンが生えたり、遺産として受け継いだりと理由は様々なのじゃがな。凡人が突如としてダンジョンを管理せねばならぬ状況に陥ってしまうという事象が、あちこちの世界で最近多発しておってな』


「邪魔くせえだけだろ、そんなん」


『だからこそ逆転の発想よ。そんな負の不動産を有効活用するために、自らダンジョンに潜ってレアアイテムをあさって売却したり、一般に開放してレジャー施設として運営したり、居住施設として開拓したり、まあ色々な事をするのがダンジョン経営じゃ。王道テンプレがまだ固まっていない分、今後の発展に期待が持てるジャンルであるぞ?』


「何の話だよジャンルって。つーかお前はダンジョン手に入れて何がしたいんだ? アレか? 地底深くに悪の巣窟を築くのか? ならぜひやれ。そしてオレに滅ぼされてくれ」


『誰がやるかそんなマゾヒスティックなホビー。ワガハイが胸算用しておるダンジョン経営はな。ズバリ、冒険者育成施設よ!』


「はぁ? 冒険者育成だぁ? 金も無ぇヒヨッコどもからどーっやて金取んだよ」


『チッチッチ。こんな山奥暮らしを続けておると世情に疎くなるのう勇者よ。今、この帝国は空前の大冒険者時代であるぞ!!』


「えぇ~? マジで~?」


『信じておらぬようじゃのう。おぬしがまだ現役バリバリの頃は、冒険者とは一攫千金を夢見る若者が集うハイリスクハイリターンな職種であったろう?』


「まーな」


『じゃが、おぬしが帝国内の強力なモンスターを軒並み退治したせいで、戦闘のリスクは激減。しかしおぬしが魔物たちの食物連鎖上位種を狩りまくったせいで、雑魚モンスターは以前より激増しておるのよ!』




「へー」


『……』


「……あ?」


『……。』


「……。あーあれか? えーと。……オ、オレのせい……なのか?!」


『そうじゃ! おぬしのせいなのじゃよ!! フヌハハハハ!!』


「うるせーよスケルトンのクセに嬉しそうな顔しやがってこの野郎。ふーん、んじゃ今や冒険者ってのは、ローリスクローリターンの安定した仕事って事か。ますます駆除業者じみてる気もするが」


『腕っぷしが弱くっても危険が少なく稼げるというのは良い事ぞ。しかも雑魚モンスターによる被害は増える一方じゃから、需要も多く駆除費も高値安定しておる。今や領地の貰えぬ貴族の四男五男なんぞは、剣の腕を生かして冒険者になるのが当たり前の時代という訳なのじゃよ!」


「戦争に行って武功積むよりは、まだしもラクか」


『剣の振り方しか知らぬ世間知らずのボンボンどもをおぬしのネームバリューでかき集め、ダンジョン内での処世術をレクチャーして差し上げるという寸法よ! フヌハハハ!』


「今までで一番真っ当な事を言ってるハズなのに、お前が今までで一番邪悪に見えるな。だがまあいい。俺のネームバリューでヒヨッコ集めるって所が気に入った。オレはな、こう見えてもチヤホヤされる事に飢えてるんだよ」


『どう見えて欲しいのかは知らぬが、おぬしの欲望に忠実な所はワガハイ大好きじゃぞ』


「でもダンジョンは領地内に幾つかあるけどよ。モンスター居る所なんて多分もう無いぞ? オレが全部狩り尽くしちゃったから。モンスターとのバトルみたいなホットなイベント無しに、受講生が満足してくれるもんかね?」


『すでに講師をやる気マンマンじゃのう』


「うむ。何か初めてお前と利害一致した気がする。儲け話が上手くいけば、ウチの財源の一つにしてえ。ここ法王庁のお給金で持ってるようなもんだからなぁ。教会にキンタマ握られてんのと同じだ」


『安心せい勇者よ。実はその道のスペシャリストを連れて来ておるのじゃ。というか、あやつに再会してこの儲け話を思いついたのじゃよ。条件さえ揃えば際限なくアンデッドを召喚できる、死霊術の達人! 紹介しよう。元魔王四天王が一人、ダークネスエルダーリッチ君であるぞ! フゥヌハハハハハ!』


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