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第05話

引っ越ししてきたばかりだからこの町のことはよく分からない。


そのため俺は図書館から『岩崎家の100年』という本を借りた。


この町に住む以上、男爵家のことについて知らないといけない。どんな家なのか。どんな功績を遺したのか。このまま知らないで済まないと思ったからだ。


本を借りると、俺は岩崎家についてノートにまとめた。


元々、興川は宿場町で岩崎家は旅館を経営する家だったが、1901年に生まれた弥之助により大きく変貌を遂げることになる。


弥之助は二男だったため、家督の相続を受ける権利はなかった。そのため、尋常高等小学校を卒業した後、当時最難関と言われた陸軍中央幼年学校予科を受験し合格。卒業後、そのままエスカレーター式で進学し、中央幼年学校。そして、陸軍士官学校へと進んだ。


当時の日本において陸士は特別な存在であり、「一高、海兵、陸士」と並び称されるほどだった。


士官学校卒業後、見習士官に任じられ数か月後には少尉に昇格。昇格後、第13師団に配属され、同年8月シベリアへ出兵。


後の沿海州上陸作戦はこの時の経験を生かしたみたい。


そして、1926年12月陸軍大学校へ入学。当時25歳。もちろん、同期の中では一番のスピード出世だ。


陸軍大学校を卒業した後は順当に階級を積み重ね、大佐に昇格した1931年、駐米大使館付武官としてアメリカへ派遣される。


アメリカへ派遣された後は参謀本部の第2部第5課(ロシア課)に配属され、対ソ戦争のシミュレーションを担当することになった。


当時、ソビエトは帝政ロシア時代に失った満州の利権を奪還すべく、満州で数多くの工作を行っていた。その最たる例が柳条湖事件だった。


これにより中華民国軍とソビエトは戦闘状態に突入。翌年の2月、満州全土を占領。満州人民共和国の建国を宣言。満州が再びロシアの手に渡ったことにより、日露戦争開戦前と同じ状態になった。


満州人民共和国の建国後、中華民国国内に残っていた共産主義勢力が一挙に満州に流れ込んだ。そして、中華統一をめざし、5年後の7月。ソ連軍と共同で中華民国へ侵攻、中ソ戦争が勃発した。


この時、岩崎は朝鮮、樺太、千島、北海道の防衛強化を訴えた。


中国大陸の戦況が落ち着いたら、間違いなくソ連はやってくる。


時の軍関係者は岩崎の言葉を重く受け止め、対ソ戦争へ舵を切ることとなる。


そして、4年後の8月11日。ソ連軍が樺太へ侵攻。その6日後の17日には千島列島の最北端、占守島(しゅむしゅとう)へ上陸し、戦いが始まった。


岩崎はこの時、第91師団の参謀長を務めており、占守島防衛に全力を注いだ。


いずれの戦いにおいても、帝国軍が勝利をおさめ、ソ連の侵攻を食い止めることに成功。岩崎はこの時の功績をたたえられ、少将に昇格。


ソビエトの上陸を阻止したことは全世界に伝わり、この情報はアメリカにも伝わった。


当時、アリューシャン列島はソビエトによって占領されており、アラスカはソビエトの脅威にさらされていた。


そのため、的確な戦略を組み立てることができる岩崎少将の力が必要だと、アメリカ政府が帝国政府に要請。その要請を受け、アラスカ方面混成軍が編制され、岩崎は最高指揮官としてアラスカへ派遣された。


アラスカ方面混成軍の司令官とし、アンカレッジ防衛戦、コテージ作戦、アッツ島沖海戦、アッツ島の戦いを指揮し、アリューシャン列島からソビエト軍を撤退に追い込むことに成功。


ゼネラル・イワサキの名前はアメリカ中に轟くことになった。


そして、アメリカ軍と共同で実施した沿海州上陸作戦に置いて日本側の最高司令官を務め、ウラジオストックの占領に成功。最終的には沿海州全域の占領を果たし、最後まで抵抗していたソビエト政府を降伏させたんだ。


そんな人物がこの町から生まれた。


そりゃ、尊敬されるよな。1951年には男爵の爵位を叙爵(じょうしゃく)


2年後の伯子男爵議員選挙に出馬し、ぶっちぎりで当選か。


「・・・おはよう。おはよう!」


えっ?俺は声がする方向に顔を向けると、眉間にしわを寄せた佐川がこっちの方を向いていた。


驚かせるなよ。


「朝の挨拶を何度もしたのに無視して」


えっ?そうだったの・・・。ごめん。ごめん。


「『岩崎家の歴史』?何度も言うけど、あの家に関わるのは止めなさい」


それがよく分からないんだよ。なんでなの?


「昔はよかったの。ただ、今の親父さんが産まれた時から傲慢になってきているんだ。あんたはいつも早く来ているから知らないと思うけど、岩崎先輩が学校にやってくると大名行列みたいになるからね」


同じクラスとかになったら窮屈するだろうな。


「今の4年生はそれがあるからクラス替えがいやだって言っていたよ」


なるほどね・・・。ちなみにさ本家ってどうなっているの?


「本家?旅館をやっているほう?」


そうそう。次男が男爵になったわけでしょ?いうなれば分家が力を持ったわけだし、どうなっているのかなって。


「確かに本家は爵位がないから影響力は少ないけど、それでも東口の開発とかには首を突っ込むからね」


なるほど。相対的に本家もそれなりの力を持つようになったのか。


「それなりにはあるけど、影響力は微々たるものだよ。分家の力とは比べ物にはならないから」


そりゃ、そうだ。


「何度も言うけど・・・」


分かっている。俺は平和主義者。佐川が考えているようなことはしないし。するつもりはないから。


「おはよう!おっ、由紀と滝村、朝から仲が良いね」


岡本がやってきた。


それはどういう意味かな?岡本。


「沙織、何か誤解しているんじゃない?」


「隠さない、隠さない。音楽の時間に遅れてきたり、制服の交換をした仲。そして仲良くお話し。もう、決まりですよね」


何か勘違いしているんじゃないでしょうか?岡本さん。


「由紀、日取りが決まったら教えてね」


「違うって言っているでしょうが!」


こりゃ、誤解を解くのは無理だ。形成事実って言うのはこうやって決まるのか。


第05話 終了

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