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第04話

茶番と世界観説明の繰り返し。

「貴族院には勅選議員というのがあり、基本的には終身の任期だが任命した内閣が退陣とかした場合、新しい内閣が任命した議員と入れ替わることが多々ある。任命されたものの多くは元官僚や財界で活躍していた人たちだったりする。定数は125名」


日曜日なんかあっという間に終わる。そしたら、月曜日が始まり、何時もどおり授業。


何だか。休んだ気がしないな。


「帝国学士院議員。帝国学士院会員で30歳以上の男女に立候補の資格があった。任期は7年。定員は4名。選挙が行われる年は伯子男爵議員選挙が行われる年に行われるから、これも来年の7月10日だな。多額納税者議員。一定以上の税金を払った30歳以上の男女に立候補の資格が与えられている。これも任期は7年で来年の7月に選挙が行われる。選挙や定数はいろいろと変わっているけど、1981年の選挙からは各都道府県から1名選出。定数は48名で落ち着いている」


貴族院・・・。まぁ、俺にはあんまり関係のない世界かな。


「朝鮮勅選議員、台湾勅選議員というのも昔はあった。だけど、1948年に台湾。その2年後に朝鮮が独立しているため、廃止されている。まぁ、これは豆知識レベルでいいかな。ここまでで分からんこととかあるか?」


「先生、多額納税者って資本家も立候補できるんですか?」


大森が訊いてきた。


「資本家は含まれない。まぁ、地主が議員になることがほとんどだけど、最近だとマンガ家や小説家からも多額納税者議員になる人はいるかな」


なるほどね。


「貴族院から大臣が出ることはあるんですか?」


水岡が訊いてきた。


「たまにあるかな。基本的には内閣総理大臣が閣僚人事を決める。しかし、貴族院対策として何名か選ばれる時があるかな。その時はもっぱら枢密院議長や宮内大臣、内大臣のどれかになるけどね」


貴族院で否決されたら法案は成立しないですからね。


「その通り。1960年から20年もの間、政権与党の座を維持した立憲民政党は、貴族院をうまく使い、長期政権を維持したと言われている。この成功例にあやかり、政権与党へ返り咲く政友会。そして再び政権を獲得する民政党は同じことをやった」


なるほど。


「じゃあ、次いくぞ」


教科書をめくると、国会で答弁する帝国宰相の写真が映し出された。


「1946年に行われた憲法改正により、明治憲法で不明確だった内閣の権限が明確になった。それまでは陛下の大命を受けてないと総理大臣に就任することができなかったが、国会で過半数を取った政党が総理大臣を輩出する権利を有することになった。これが俗にいう昭和憲法だ」


「しかも、戦争に勝った翌年に憲法を変えるなんてすごいな」


「佐川の言うとおりだ。本当ならば変えない。でも、先見の明ってやつかな。勝ったからこそ新しい憲法に切り替えなければならない。憲法改正の意義を問われた時、時の総理大臣はこう答えた。この発言以降、国内に蔓延する古い常識を壊そうという動きが出てきた。それが人権運動だ」


人権運動。何だか聞いたことあるな。


「1960年、若者の間で第一次人権運動というのが流行った。欧米諸国では当たり前になりつつあった基本的人権という考え方をこの国にも取り入れるべきだと主張。世代間対立まで発展した」


第一次ということは第二次もあるんですね。


「そう。第二次の時は女性の権利拡大がベースにあったかな。この時、運動の主役だった人物は政界に入り、平成の改憲で主導的な役割を担うことになる」


「明治、昭和、平成。大日本帝国憲法は3回改正されているんですね。大正はなかったんだ」


岡本がそう言ってきた。


「大正時代にも憲法改正の動きがあったんだけど実現には至らなかった。ただ、その時の下地があったから、昭和の改憲がスムーズに進んだものかと思う」


今ある基本的人権も昔は当たり前じゃなかったのか。


「お父さんやお母さんの頃は当たり前じゃなかった。俺が子供の頃、そんな考え方はなかったよ。この基本的人権という考え方。先人たちが苦労して掴み取った権利なんだ。第一次人権運動が始まって今年で40年。この考え方、大切にしろよ」


山口先生はそう言うと時計をチラッと見た。


「まだ大丈夫だな。内閣は大日本帝国の繁栄を第一に仕事をしている。景気が悪くなった。近隣諸国との関係を維持したい。災害が起きた。テロが起きた。いろいろなことがこの世の中起きる。それらの事象に対し、一つずつ対処する。それが内閣だ」


ページをめくると内閣の閣僚と各省庁の役割が記載されていた。


「ざっとこんな感じかな。さっき話した通り、枢密院議長や宮内大臣、内大臣は貴族院から選出されているよな。今までは政治の仕組みや議会について説明をしてきた。次回からは平成の出来事を説明するからな」


そう言うと授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。



「スカートってどんな感じ?」


河原が岡本にそう話した。唐突に何を言い出すんだ?


「すごく、気分がいいよ」


気分いいんだ・・・。


「そう。チーズも着てみれば?」


なに?スカート着るのか。


「一回はいてみたかったんだよな。じゃあ、制服の交換を行わない?」


この流れは何?河原、お前、何を言っているんだい?


「水沢は草川と。俺は岡本と制服交換をする」


「いいね、男子の制服を着られるのはめったにないわけだし」


すごい展開になってきたぞ。


「じゃあ、手順を説明するね」


ということで、岡本が説明を始めた。俺と佐川は蚊帳の外。見ているだけだ。


「どうなるんだろうね」


いやぁ~、想像もできないわ。


「私のスカート貸そうか?」


ご冗談を。


「私も男子の制服着てみたいな」


俺はスカートを履きたくないのでこのままが良いでーす。


「つまんないやつ。チーズを見習いなさい」


嫌なものはいや。て言うか、気になったんだけど。なんで河原のあだ名がチーズなの?


「河原が買っている犬の名前がチーズなんだ。それでいつの間にか本人もチーズって呼ばれるようになったのかな」


そう言うオチね。あっ、岡本と草川の着替えが終わったよ。


「うーん、沙織の男装は良いね」


「宝塚みたい」


岡本と草川の男装は違和感なかった。問題は河原と水沢だけど。


俺と佐川、岡本と草川は着替え終わりまで教室で話した。


「そういえば何で、由紀と滝村は制服交換してないの」


いまさら言うな。


「私は良いけど、滝村が反対するんだ」


「たっきーのスカート姿、見たかったな」


「滝村、意気地なし」


草川と岡本が厭味ったらしく話した。うるせっ!


おっ、あいつらが来たぞ。


そして、教室に入った河村と水沢を見て爆笑した。


これはひどい。


「笑うな!」


水沢が不満を爆発した。


「そうだ。それに、なんで、滝村は着てないんだよ」


嫌なものはいやなんだ。


「一緒に地獄へ落ちようぜ」


スカートを履いたことを後悔したのか、水岡が誘ってきた。俺はやらないからな。


そう断言した時だった。


「はい。滝村」


体操服になった佐川がそう言って差し出してきたのは、制服一式だった。


「何やっているの?早くあんたの制服頂戴」


俺の意思はないのか・・・。もうやけだ!


俺は制服を脱ぐと、その中に着ていた体操着の状態になった。そして、佐川が着ていた制服を着ると佐川は俺の制服を着た。


スカート・・・。何が気持ちいいんだよ。ばかやろう。


「そろそろ、下校時刻だぞ。なにやって・・・」


そう言いながら担任の長沼先生が入ってきた。


「何をやっているんだよ。お前ら」


長沼先生が腹を抱えながら笑っている。


「制服交換です」


予期せぬ展開が起きた為、河原と水岡は茫然自失になっている。


「まだ入学して1週間しかたってないのにお前らこういうことをやるのか。こういうのを待っていたんだ」


長沼先生はそういうと、教室をいったん出た。


何処へ行ったんだ。長沼先生。


「さぁ・・・」


そして、しばらくすると、長沼先生が戻ってきた。


手にはデジタルカメラを持っていた。


やっ・・・やめてくれええええ。


「えっ?写真撮るんですか?」


佐川が笑いながら話した。


「ほら、みんな真ん中に集まれ」


笑いながら長沼先生が指示した。


俺と佐川が真ん中。佐川の右隣には岡本と草川。俺の左隣には河村、そして水沢が立った。


「はい行くよ」


そういうと、長沼先生はカメラのシャッターを切った。


「ほれ、もう下校時間近くだから帰りな」


長沼先生がそう言うと、魔の時間帯は終わった。


「あっ、写真欲しかったら言ってね」


いりません!


もう、黒歴史確定じゃないか。これは。


第04話 終了


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