第29話
「滝村、岩崎先輩出るみたいだよ」
朝、学校にやってくると白井からいきなりそう言われた。
嘘だろ・・・。マジで出るの?
「マジでって滝村が煽ったからでしょ」
白井があきれた表情をしながらそう言うと、佐川が教室にやってきた。
「おはよう。何だか、朝から話題になっているね」
ということは、無投票で決まるのかな?
「そうなるかもしれないね。誰も、岩崎家とは戦いたくないし」
無投票でも就任演説は言わないといけないわけだ。考えるか。
「えっ?原稿考えるの?」
先回りしておかないとな。白井、頼みがあるけどいい?
「何・・・」
嫌な顔するなよ。この人事に適任な人を探してほしいんだ。
「書記と会計・・・。副会長は?」
剣道部にいるだろ?
「市川先輩?」
違う。もう一人の女性。
「・・・受けてもらえるかな。岩崎会長になったら、実務は副会長に丸投げだよ」
だからこその五十嵐先輩だよ。
「うーん、分かった。探してみる」
生徒会役員の人事は生徒会会長に一任されている。そのため、岩崎さんは好きな人を登用することが可能だが、岩崎さんはきっと俺のところに頼ってくるはずだ。その時に向けて準備をしないと。
その時・・・。多分、岩崎に対して不満を持っている人は沢山いる。そして、あのスキャンダルを知っている人もいる。何とか整理したが、でも、完璧じゃないんだよな。まだ。
「次の一手でも考えているのかな」
佐川がそう言ってきたため、俺は腕組みをして考えた。
岩崎さんが会長になったら何が起きると思う?
「お華族の息子さんが生徒会長でしょ?そうなったら、マスコミが注目するよね」
マスコミが注目するということはどうなる。
「岩崎先輩のことを調べる人が出てくるはず」
「ちょっと待って。滝村、もしかしてあんたが考えていることって」
佐川はどうやら察したみたい。
やつらが攻めてくる。
「奴等?えっ?滝村、奴等って誰?」
宮内省宗秩寮。
「宗秩寮って、華族のことを調べるところだよね」
間違いなくやってくる。一回下手を打ってしまった以上、調査されることは避けられないと思う。
「問題はそれがいつになるかだよね」
それは分からないな。
そうつぶやいた時だった。教室に扉が開き、誰かが入ってきた。
「い・・・岩崎先輩」
今度は岩崎さんが乗り込んできたのかよ。
「滝村、この間はごちそうだったな」
あんなものでよければいつでも来てください。玲子が喜んでいたので。
「それは俺のプライドが許さない。今度はうちに招待するよ」
ありがとうございます。それで、岩崎さん。ご用件は?
「噂になっているから知っているよな。生徒会会長選挙に出ることにした。だから、滝村にはスピーチ用の原稿と人事を決めてもらいたい」
予想通りの展開だ。
分かりました。ただちに準備に取り掛かりたいと思います。
「期待しているぞ」
要件はすぐに終わったため、岩崎さんはサッと後ろを向くと、教室を出て行った。
「ちょっと、ちょっと。滝村、岩崎先輩と一緒にご飯を食べたの?」
「しかも、夕飯に誘われたって」
お互いに好きな歴史上の人物について語り合ったな。岩崎さん、お好み焼きを初めて食べたって言っていたよ。
「あんた、すごい」
さてと、本格的に考えないと。佐川、添削は任せた。白井、メンツの件頼んだぞ。
「全く、仕方がないな。添削料は高いよ」
「滝村のためならば良いかな」
第29話 終了




