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第27話

テスト1日目が終わった。


国史は想定の範囲内ということもあり余裕だったし、博物に関しては可もなく不可もない状態だった。ただ、問題はやっぱりフランス語。佐川のスパルタ特訓が功を奏し、何とか回答することができたが、付け焼刃で何とかなるほど甘くはない。60点取れればいいほうかな。きっと。もしかしたら、50にも行かないかもしれないが。


とにかく、明日に備えないと。


明日はフランス語に匹敵する難敵ドイツ語が控えている。


地理は余裕。漢文は何とかなるけど、ドイツ語に関してはどうにもならない。家に帰ったら勉強だな。


テスト期間中は3時限しかないため、12時までには家に帰れる。


玲子や卓哉は小学校、親父は会社、母さんはパート。家に帰ったら自分で何かを作って食べないと。


「滝村、これからあんたの家に行くから」


帰りのホームルームが終わったと同時に佐川がそう言ってきたため、俺は驚いた。


えっ?これから?


「そう。明日はドイツ語があるでしょ?私が教えてあげる」


また佐川のスパルタか・・・。ため息が出そうだったが、フランス語が善戦できたのは佐川のおかげという側面もあるわけだし、ここは我慢しますか。


それは良いけど、昼はどうするんだ?


「滝村の台所を借りるよ」


佐川が作るの?昼?


「何か問題でも?どうせ滝村の両親は家にいないんでしょ?私も家に帰ったら誰もいないし。win-winだと思うが」


佐川の料理って大丈夫なのかな・・・。


「おい!これでも私は家で料理とかするから」


じゃあ、期待します。


佐川と一緒に帰ることに関してはもう慣れたと言ったところかな。最初の頃はいろいろと意識をしたが、今では自然体で振る舞うことができる。周りは俺と佐川が付き合っているんじゃないのかって思っているけど、正直、そう言うあれじゃない気がするんだよな。


いや、俺が気付いていないだけかな。


「えっ、なんで由紀がこっちにいるの?」


佐川と一緒に帰っていると、白井茜が胡乱な表情をしながら俺たちの方を向いた。


「滝村にドイツ語を教えるため」


「もしかして、滝村の家に行くの?」


白井がそう言うと佐川が頷いた。


「いやはや。二人の関係はそこまで進んでいたとは」


どういう意味だそれは!


「茜!それは誤解!」


「隠さないでいい!もう、滝村一樹と佐川由紀の関係はみんな周知の事実だから。公認の仲!第一号カップルとして認定されているよ」


「正直に言うけど、私は滝村から何かを言われたとかはないからね」


「それ、本当?信じられないんだけど」


嘘は言わない。俺は隠すのが苦手だから。何にも佐川には言っていません。


「じゃあ、今すぐ言ってよ」


いやいや、そう言うものじゃないだろ。


「確かにそれは一理あるかも」


それはそうと、木曜日は暇?


「今週の木曜日?暇だけど?」


「映画観に行かない?今上映しているアニメの映画だけど」


「デートの邪魔になるから行かないよ」


いやいや、デートじゃないから。


「沙織も行くって言っているから」


「沙織が行くならば私も行こう。滝村と由紀のイチャイチャを影から見守らねば」


そういうのはいらない!


「ふふふっ。じゃあ、お二人さん、また明日~」


くそっ。白井に振り回されっぱなしだったな。


「茜のやつ、今に見ていろ」


さて、家に着いたはいいけど、俺と佐川は二人っきり。何にも起きなければいいけどな。


「台所と冷蔵庫を借りるよ」


どうぞ。


さて、佐川は何を作るのだろうか。


俺はテレビをつけた。丁度、昼のニュースが流れている時間帯だが、どこもかしこも特番だらけ。それもそのはず、今日は現職の政治家が刺殺された日だからだ。


「正井孝典議員が刺殺された要因はやっぱりリクルートスキャンダルが根底にあると思っています。あれから12年が経過しましたが、政治的腐敗は変わっていません。今こそ、徹底した政治改革が必要ではないでしょうか」


コメンテーターがそう言うと、それに反論する人が出てきた。


「当時、正井議員にはリクルート社からの金銭授受が疑われていました。検察がしっかりとした対応をとっていれば防げた事件だ。今からでも遅くはない。当時の検事総長と呼びつけて、捜査状況を説明すべきだ」


「それは無茶ですよ。藤原官房長官に対しては証拠がそろった段階だったため、起訴することができましたが、正井議員は証拠がなかった状態。それで、逮捕しろというのは無理な話。帝人事件の再来です」


「正井事務所は領収書の破棄と言った隠ぺい行為を行ったと当時は報道されていました。そうなる前に踏み込んで証拠を押さえるべきだった!」


いろいろと盛り上がっているな。


そう思っていると、佐川が声をかけてきた。


「お待たせ」


えっ!カルボナーラ!


「いや?」


嫌じゃないけど、これ佐川が作ったの?


「そうだよ」


予想外の展開だ。てっきりチャーハンかなって思っていたが。


「じゃあ、いただきます」


いただきます。うっ!美味すぎる!


「良かった。慣れない台所だからあんまり上手くできなかったんだ。味変じゃない?」


そんなことはないよ。


「余ったソースとかはグラタンにしてね。レシピ置いておくよ」


ありがとう。


「それにしても、真剣に見ていたね。私は全然わからないよ」


政治家一人が死んでいるからね。政治家の暗殺事件なんかめったに起きないだけにインパクトはデカいよ。


「生きていたらどんな政治家になっていたんだろうね」


まぁ、ろくな政治家にはならなかったんじゃない?利権政治家で終わっていたとか。


「的確すぎる」


帝国宰相になることができる政治家の要件って知っているか?


「大臣をやるとか?」


まぁ、それもあるけど、朝鮮総督、台湾総督。今はもうないけど、南洋庁長官。この3ポストのうち、どれかを務めた政治家が将来の宰相候補って言われるんだ。


「ふーん、なるほどね」


朝鮮と台湾は独立国だけど、元首は日本政府が指名する総督だからね。大石総理はかつて、台湾総督を務めていたし、民政党の磯部幹事長は39歳で朝鮮総督だから。


「39歳で朝鮮総督は若い!」


天皇の代理と言われる総督を務めたらそりゃ、総理候補って言われるよ。


「じゃあ、磯部幹事長も将来は総理大臣か。日本初の女性総理になるよね」


もちろん。


「ちなみに今、朝鮮総督と台湾総督は誰がやっているの?」


荒木浩次という朝鮮系日本人が朝鮮総督、安藤真三という政治家が台湾総督を務めているよ。


「政友会は台湾総督、民政党は朝鮮総督と分けているのかな」


利権って言いたいのか?


「そりゃ、もちろん。民政党政権になったら、朝鮮総督は未来の総理候補が送り込まれ、台湾総督は現地の人が総督をやるのかな?」


流れ的にそうなるかも。


「大日本帝国はまだまだ安泰だね」


くだらない話をしながら食事をしているとあっという間に食べ終わった。


佐川、本当に美味かったよ。


「じゃあ、ドイツ語の勉強をやるか」


マジか・・・。


「ほれ、早くノートを出す。出す」


厳しい問題ばかり出したら、スカートめくってやるからな。


「そんなことをしたら、もっときつい問題出してやるけど」


冗談だよ。冗談。


そして、3時間、スパルタが続いたとさ。


第27話 終了


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