第26話
今日から中間考査。
フランス語は何とかなるけど、国史は分からん。お手上げだ。枢密院の役割がどうしても覚えられない。憲政の常道?大命降下?何それ?
昨日からずっとこんな感じ。
滝村大先生が来るまで棚上げにしようかな。
そう思っていると、由紀と滝村が仲良く教室にやってきた。
「茜おはよう。今日は珍しく早いね」
珍しいでしょ。たまには早く来ることだってあるんだよ。
「そうだ。聞いてよ。昨日、滝村が・・・」
「おい!」
どうせ、滝村に胸揉まれたって言うんでしょ?由紀。
「えっ、何で知っているの?」
話の流れからしてわかるわ。
「何度も言うけど、わざとじゃないって」
「百歩譲って押し倒したところまでが事故だとしよう。でも、その後、手が動いたでしょうが」
「それは・・・その・・・」
始まったよ由紀と滝村のイチャイチャが。二人で映画を見た。ソフトボールを見た。一緒に帰っている。しかも、滝村は由紀に対していやらしいことをやっている。これで二人とも付き合っていないって言うんだよ?信じられるかって話だ。
「昨日のあれはやっぱり許せない。フランス語の点数だけじゃ足りない!ドイツ語もプラスせねば」
なんだか、由紀。楽しそう。
「それ、絶対俺が負けるパターンだろ。レッテル貼りはごめんこうむる」
滝村、諦めろ。
「白井、お前までそう言う」
だって私は由紀の味方だもん。
「・・・そんなこと言うと、国史教えないぞ。初っ端フランス語なのに、国史の勉強をしているということは相当焦っているんだな」
それだけはやめて!本当に頭の中がパニックになっているんだから。
「仕方がないな。教えてやるよ」
「おい!茜を籠絡させるんじゃない」
「籠絡させてない!」
それで、枢密院の役割を教えて。
「天皇の諮問機関。緊急勅令とかを出すことができる機関なんだ」
ああ、阪神大震災の時に出されたやつね。確か授業でやったな。
「普通の法案が成立するまでの間のつなぎみたいなものだけど、緊急勅令の効果は絶大だよ。顧問官は主に24名から28名。そのうち、閣僚は枢密院顧問官を兼務するから、天皇臨席における閣議の延長線上みたいな形だと思ったほうが良い」
天皇臨席だと下手なことは言えないな。
「もちろん。だから、真剣になるわけだ」
「そう言えば、一内閣一閣僚が原則になっているね」
「一回、天皇の承認を得た以上、責任は全うしなければならないというのが趣旨かな。現職の内閣官房長官がリクルート事件で起訴された際、当時の総理大臣が責任をとって辞めたのは天皇陛下に任命責任が及ばないようにしたためって言われているからね」
その時の政権交代は憲政の常道で言うところの3番目に当たる事例?
「政治失政が起きた場合、野党第一党に大命降下を行う。リクルート事件の後に伊東内閣が出来たのはまさしくこれだよね」
滝村が水を得た魚のように意気揚々としている。わがフィールドやぞって言わんばかりだな。
「じゃあ、そろそろ国史の授業は良いかな?」
「えっ?フランス語やるの?」
「赤点取りたい?」
「嫌です」
「じゃあ、スパルタだから」
由紀はそう言うと、最後の追い込みと言わんばかりのスパルタ教育が始まった。あれは苦しいな。
やっぱり、滝村と由紀はお似合いだよ。
この二人が結びつかないなんてありえないと思っているから。
第26話 終了




