第22話
「滝村、ちょっと来い」
長沼先生にそう言われたため、放課後、職員室に行くと、校長、教頭、教務主任はもちろんのこと、他の教員たちが勘首を揃えて待っていた。
この人たちはなんなんだ。いったい・・・。
「さて、滝村一樹くん。何で呼ばれたのかは分かるかな?」
どうせ?岩崎さんのことだろ?俺はそう思ったが、明らかに岩崎家の方向しか向いていない教員連中にあきれてしまったため、わざと知らないふりをした。
よく分かりませんが。
「そうか。それだったら残念だよ。はっきり言う。君の行動によって、我が校は存亡の危機に立たされているんだ」
何でそう言う発想になるんだよ教頭。
「お前の軽率な行動で多くの人が迷惑をかけるんだ!それを分かっているんだろうな!ああ」
もはやヤクザの口調だ。教務主任がそう言うと、学年主任の松本先生が言いだした。
「滝村、悪いが、責任を取ってもらう」
責任とはどういうことでしょうか?
「・・・退学だ」
なるほど。そういう手段を使うんですか。あなたたちは。
「君のような愚か者を入学させた我々が間違いだった!恥知らずも良いところだ!今すぐ辞めてもらう」
あれやこれやいう先生たちがいるが、どうも本質が見えてこない。みんな、見えない何かに怯えている。そんな表情をしている。
「何とか言わんのか!滝村!」
教務主任がそう言ってきたため、俺は一瞬、校長先生の方を向いた。いろいろなことを言っているが、校長先生だけは黙ってこっちの方を向いて議論の行く末を見守っている。
あんまり言いたくないけど、仕方がない。やるしかないな。
與川中学校学則第35条!退学の通告する際には保護者臨席のもとで実施しなければならない!岩崎家からの報復が怖いから辞めていただきますって本気で言うつもりなのか?あんたたちは!
「そうしないとこの学校がつぶれるんだぞ!」
潰れません!学校を潰すためには文部省やらいろいろな関係部署の関わりがあるため、すぐになくなるってことはありません!教育委員会委員長が潰せって言ったって、正当な理由がない限りはできませんし、そんなことをやったら岩崎家は終わります!本気でそう思っていたんですか?
「なんだと・・・」
はっきり言います。先生たちは誰を見て教えているんですか?岩崎家の影におびえて仕事をしていませんか!教育委員会の委員長様の機嫌を損ねると、給料の査定に響く。そう思っているんじゃないでしょうか?この中にそうじゃないって言い切れる人はいるんですか!
そう言うと、反論する先生が一人もいなかった。
それでいて、都合は悪くなったら人を切り捨てる。そして、岩崎家におべっかをする。朝の大名行列がいい例だ!岩崎家から頼まれてやっているのか?どうなんだよ!おい!
「もう、そのあたりにしないか」
今まで黙っていた校長先生が口を開いた。
「我々も言いすぎた。退学と口走ったことは取り下げる。だけど、これだけは分かってくれ。みんながみんな、岩崎家の方向ばかり見ているわけじゃないんだ。本気で生徒のことを思っているものいるんだ。君を呼んだのも本当は事情を聴くためだけだったんだ。それがこんなことになるなんて」
明らかにそう言う態度ではなかったと思いますが?
「それは、滝村が知らないとかって言うからだろ」
松本先生が嘆きながら言って来た。
納得はできないけど、引くしかないか。
すいませんでした。先生たちが信用できなかったのでそういうことを言いました。
「・・・理解してくれればいい」
この町は岩崎家に過剰反応しています。それは良いこともあれば。悪いこともある。校長先生の耳にも入っていることではないでしょうか?市川舞衣さんの一件は?
「それは、もちろん」
相手がいろいろなことをやっても言わない。黙っているのはよくないと思います。
「それは、お互いの問題だから・・・」
であるにしても、何らかのアクションはすべきではないでしょうか?岩崎家を腫物みたいに扱うのではなく、しっかりとした態度で臨む。この町は岩崎家と一体なんです。彼らが悪いことをやったらダメになってしまう危険性だってあるんです。ならば、お互いがしっかりと支え合い、時にはきついことだって言わないとだめなんです!
「それと生徒会会長はどう結ぶんだ?」
中途半端に注目されている状態じゃダメなんです。華族の孫が中学校の生徒会会長になる。そんなことになれば、マスコミ各社は一気に注目します。今までのようなことはできなくなります。注目されたくないけど、裏からいろいろなことをやりたいなって思っている委員長様の考えをぶっ壊す必要があるんです。現状維持はない!常に人は進化しなければならないんです!町も!考え方も!
「先人たちがいろいろと考えてきたことを壊すということか」
時代は変わりました。今は平成です。その時代にあった考え方にシフトしていきましょう。
「・・・分かった。君の考え方はよく理解した」
失礼したいのですが、よろしいでしょうか。
「待ってくれ。最後に聞きたいことがある。君は、岩崎君や市川君と出会ってひと月しかたっていない。なのに、なんでそこまで考えることができるんだ」
一時でもお世話になったので。お世話になった人が苦しんでいる。その人を助けるのに、理由なんかありません。
「・・・理由なんかないか。ありがとう」
そう言うと、校長先生は悲しい表情を見せながらつぶやいた。
それでは、失礼します。
俺は職員室を後にすると、自分の教室に戻った。
ロングホームルームが終わってからすぐに連行されたから、荷物を取りに行かないといけないんだよな。めんどくさい。
外は雨が降っていて、厚く雲が覆われている。その影響だろうか分からないが、廊下は薄暗い。
明日からテスト。早く家に帰ろう。
そう思いながら教室に戻ると、扉が開いていて、机に誰か突っ伏していた。
誰だ?
俺は教室の照明をつけると、突っ伏していたのは佐川だった。
「・・・うん?滝村」
佐川、帰ってなかったのか。
「あんたに言われたことを調べていたの」
今やらなくてもよかったのに・・・。
「忘れないうちにやらないとね」
そう言うと、佐川はルーズリーフを一枚渡してきた。生徒会の年間スケジュールが書かれている。
ありがとう。
「滝村、学校辞めないよね?」
心配するな。辞めるつもりはない。出て行けって言われてもやってくるから。
「出て行けって言われても来るなんて面の皮厚すぎるだろ」
だって。ここが楽しいから。
「そう。ならば安心した」
佐川、心配してくれてありがとう。
「どういたしまして」
そう言うと、佐川は嬉しそうな表情をした。
じゃあ、帰ろうか。
第22話 終了




