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第19話

今日は滝村と映画を見に行く日。


一緒にソフトボールを見に行ったくらいだから、意識することはないと思う。でも、映画を見に行くってことはデートにならないのかな・・・。いや、周りから見たら絶対デートのなるよね。そんなことを考えていたため、あんまり昨日は眠れなかった。


私の考えすぎならば良いけど、滝村は私のことをどう思っているんだろう。


終わった後に告白とかされたらどうしよう。


「おはよう・・・」


妹の美紀が欠伸をしながら挨拶をしてきた。小学校4年生で、ついこの間まで通っていた町谷小学校に通っている。


おはよう。あんたはいつも起きるのが遅いね。


「せっかくの日曜日だからのんびりしたいんだよ。お姉ちゃん、どこか行くの?」


うん。これから映画を見に行くんだ。


「映画・・・。さては、お姉ちゃん。デートだね」


そう言われたため、思わず反応してしまった。


何でそうなるの!


「だって、お姉ちゃんスカート履いているでしょ。しかも、あんまり履かない短いスカートを」


ニタニタした表情をしながら美紀が迫ってくる。


たっ、たまにはスカートも良いかなって。しかも、それほど短くないよ。膝上10センチじゃないし。


「ふーん。お姉ちゃん、なんだか色っぽいよ」


気のせい。気のせい。


「よし、お父さんやお母さんに頼んで私もどこか出かけよう。秩父あたりに行って、夕飯も向こうで食べる。そうすれば、夕飯も一緒になるね」


おい!夕飯までには帰るから!


「帰ってきたら誰もいない。そんな状態になっているかもしれないから」


こいつは、何処でそんなことを覚えたんだ。


じゃあ、出かけてくるから。


はやし立てる妹をしり目に、私は待ち合わせ場所に向かった。


そういえば、お父さんは不安そうな表情、お母さんはわくわくした表情をしていたな。なんなんだよ。この家は。ただ、映画を見に行くだけなのに。


何だか、風が強いな。スカートをチョイスしたのは失敗したかも。


待ち合わせに指定した場所に到着したが、滝村はまだ来ていない。


5分前。まぁ、さすがに二回連続で道草ってことはないだろ。


そう思ったが、どうやらその通りになってしまったみたい。


8時45分。滝村は来ません。


誘っておきながら遅刻とかいい度胸じゃないか。


そして、息を切らしながら滝村がやってきた。


おい、遅刻だぞ。


「ホントにごめん!」


手を合わせながら滝村が謝ってきた。


一度ならず二度も遅刻するなんて。


「ちょっと、いろいろあったんだよ」


いろいろ?


「剣道部の部長と話をしていたらこんなことになってしまったんだ」


もうちょっと余裕を持ちなさい。


「余裕を持ってやってきたはずなんだけどね」


もしもの想定が足りない!先輩に会うんじゃないだろうか?鳥の糞が落ちてくるんじゃないだろうか?いろいろなことを考えながら、行動しないと。


「以降、気を付けます」


本当に走ってきたんだな。滝村の息がまだ乱れている。そして、呼吸が落ち着くと、私の服装に気が付いた。


「えっ・・・佐川、スカート?」


なに?スカートを履いちゃいけないの?


「いや、そう言うわけじゃないけど」


そう言うわけじゃないけど、何?


「イメージしていなかったなって。この間はジーパンだったから、佐川はジーパン派なのかなって思っていたんだ」


なるほどね。一応、スカートは履くよ。私だって。


「・・・短くないか?」


スカートの長さは膝丈だけど?


「なんだろう。短く感じてしまう。制服を着ている時とは違うからかな?」


制服の場合だと校則があるからね。長さも違うし。


「じゃあ、俺と制服交換した時とは違うわけ?スカートの長さは」


まぁ、そう言うことだね。


そう返答すると、滝村は愕然とした表情をした。


「信じられない・・・。あの時でさえも苦労したのに」


女の子はそう言うのに慣れているの。


「時代は変わったんだね」


そう。ミニスカートという文化が持ち込まれた時点で、こうなる運命だったんだよ。


「世の中の男はメロメロだな」


じゃあ、行きますか。


そう言うと、滝村はカバンからクリアファイルを出してきた。


「はい。この中に前売り券があるから。クリアファイルごと貰ってくれ」


あっ、ありがとう。このクリアファイルって前売り券を買ったらもらえる奴だよね。えっ?そんなに前から私を誘うつもりだったの?


「実は・・・」


そして滝村から言われた言葉に私は唖然となった。


一回・・・見ているだと。


「ごめん!本当は家族で観に行く予定だったんだ。でも、親父と母さんが見に行かないって言い出したから、事前に買った前売り券、2枚余ったんだよ。それで、佐川を誘ったってオチかな」


何だか、ちょっとがっかり。


「ネタバレとかはしないから」


新鮮な気分で見たかったんだけどな。


「この事言わないほうがよかったのかな?」


うーん、言わないほうがよかったのかな?でも、どの道ばれるんだったら、あらかじめ言ってもらった方が良かったのかもしれない。だから、滝村の判断は間違ってないよ。


「ありがとう」


ねぇ滝村。クリアファイルまだ余っている?


「ああ、もう一つあるけど」


妹にあげたいんだけど大丈夫?


「妹いるんだ」


小学校4年生だけどね。


「俺と同じだな」


うん?滝村にもいるの?


「ああ、西小学校に通っている妹がいるよ。同じ小学校4年生。さらにその下、小学校1年の弟もいる」


三人兄妹なんだ。なるほど。ということは、前売り券5枚買ったのか。


「ご名答」


ようやるな。あんたも。


「もう二度とやらないって決めたけどね」


そんなやり取りをすると、開場の時間を迎えた。


とりあえず、滝村。ネタバレ禁止な。


「言わないから!」



全然、映画の内容が頭に入ってこなかった。


いや、つまらなかったわけじゃないよ。


毎週のように見ていたアニメだったから、外すわけがない。そう思っていたが、隣にいる滝村の表情が気になって仕方がなかった。


ここ最近見せる暗い表情。どこか険しい表情をしていた。


映画を見ているけど、多分、別のことを考えていたんだろうな。この間の図書室の時もそうだ。


正直、滝村が怖いと思う時がある。


何て言うか、不安定な恐怖。何をやるのかわからない。そんな恐怖を覚えてしまう。そんなことを思っていたため、映画の内容が頭の中に入ってこなかった。


映画ってこんなに楽しくないものだったっけ?


「・・・佐川どうしたんだ?」


なんでもない。


そう返答すると、滝村はまたしても何かを考えだした。


何を考えているのかは分からないけど、せめてさ。昼を食べているときは止めてもらいたい気がする。


「・・・これからどうする?」


そうだね・・・。本屋に行って原作の漫画を買う。そして図書館に行こうかな?滝村はどうする?


「もちろん、一緒に行くよ」


食べたのか食べてないのかよく分からない昼を済ませると、私と滝村は本屋と図書館に向かった。


確かにいろいろな話はしたよ。


でも・・・、なんだろう・・・。


今までとは違う気がする。


滝村の表情を見ているとなんだかイライラしてくる。せっかくの休日がこうなるなんて思いもしなかった。そして、時折、私の表情を見ると、なんだか気まずい表情を見せる。


悪循環。


なんでこうなったんだろう。


そして、何時しか黙っている時間が長くなった。雑貨屋や100円ショップとかいろいろ回ったけど、ほとんど一人で何かやっていた気がする。


ホント・・・最悪。


私は時計を確認した。15時・・・。もう帰ろうかな。そう思った私は、滝村に話しかけた。


そろそろ、帰らない。


「そうだな。家まで送るよ」


本当は滝村から一刻も早く離れたかったが、送ると言われた以上は仕方がない。我慢しよう。


ありがとう。


気の弱い返事をすると、私は滝村と一緒に住んでいるマンションへと向かった。


沈黙が続く。多分、滝村も感じているんだろうな。この空気を。住んでいるマンションまで我慢しようかなって思ったけど、もう無理だ。我慢できない!


私は滝村の目の前の回り込むと思いっきり睨みつけた。


ねぇ!さっきからなんなの!


「どうしたんだよ。急に」


どうしたんだよじゃない!滝村、あんた、さっきから何か考え事していない?


「・・・考え事?」


どうやら図星だったみたい。


映画を見ているときからずっとそうだよ。いや、今月に入ったらずっとだから。この間の図書室もそう!その表情!それが私はいやなの!


「佐川には関係ないことだろ」


そう言われた瞬間、我慢していた何かがはじけ飛んだ。


ふざけるなぁ!何が関係ないだよ。私は!滝村のことが心配なの!その表情を見ると、私は不安なんだよ!理解しろよ!


「・・・佐川」


あれ?私、何やっているんだろう。気が付いたら、私は滝村の胸倉を思いっきりつかんでいた。


ごめん・・・。ちょっと、言いすぎた。


胸倉から手を放すと、滝村が話しかけてきた。


「心配していたんだな。佐川は」


一人で抱え込んでいるのが見え見えだよ。ばか!


「ありがとう・・・」


私には関係ないことって言っていたけど、本当にそうなの?


「・・・佐川は巻き込みたくないんだ」


そう言われた瞬間、私は何かを悟った。


もしかして、岩崎先輩のこと?


「そうだ」


悩んでいたということは何か行動を起こそうとしているのかもしれない。私はそう持った。


何やるつもりなの?


滝村は周りの視線を確認している。ここじゃダメということは公園にしよう。


向こうの公園ならば話せる?


「たぶん大丈夫だと思う」


歩いて数分の場所にある小さな公園にやってくると、私と滝村は鉄棒に寄りかかった。


「ここならば大丈夫かな」


そう言った滝村が重い口を開けた。


「近藤部長には話した。でも、正直まだ迷っているんだ。本当にこのやり方で良いのか」


そして、その内容を聞かされた時私は腰を抜かすかと思った。


それは・・・ダメだよ。


「やっぱり、そう言うと思った」


ねぇ、滝村。今の生活を守ろうよ。相手がどう出るかわからない。成功する可能性は低いんだから。


「確かにこれだけだったら。でも、俺にはこれがある」


そう言うと、滝村はメモ紙を見せた。何か電話番号が書かれている。


それって、どこにつながるの?


「宮内省宗秩寮」


そうちつりょう?


「華族のことを管理する部門だ。もし、市川先輩のことをここに流せば、間違いなく動く。そしたら、一発でアウトだ」


そうなるよね。


「でも、俺は・・・そんなことはやりたくない。それは、本当の意味での正解にはならない気がするんだ」


本気で悩んでいる。電話一本ならばタレこみで解決できる。でも、滝村はそれをやりたがらない。でも、もう一つの案だと、どういう反応を示すのかが分からない。この学校にはかつて、暗い事件があった。あれは親父だけど、息子の反応が読めない。だから、二の足を踏んでいるのかもしれない。


私は・・・どうすればいいんだ。


「俺、なんでこんなことで悩んでいるんだろうな。他人の人生。普通ならばどうでもいい気がするんだけどな」


でも、滝村はそうは思っていないんでしょ。


「一時でもお世話になった先輩だからね。あんな悲しい表情を見たら何とかしたいと思うよ」


ならば、どっちの道を選んでも間違いじゃないよ。


そう言うと、滝村は私の方を向いた。


出会って1か月ちょっとだけど、滝村は変わったやつだってことがよく分かった。私にはどうすることもできない。あんたの好きなやり方で先輩を助けてあげて。それは、市川先輩だけじゃない。特別な身分に生まれ、やりたいことを途中で諦めてしまう。そう言う立場にいる岩崎先輩の背中を押してあげて。


「・・・佐川、ありがとう」


私にできることなんか限られると思う。あんたが地雷を踏んで、酷い立場になったとしても、私だけは見捨てない。今まで通り話して。今まで通り遊ぶ。その立場に変わりはないから。


「その言葉を訊けて俺は安心した。岩崎さんのことがきっかけで他の人から嫌われても俺は構わない。でも・・・佐川だけには嫌われたくなかったんだ」


それって・・・。えっ?


「一緒にいると落ち着くって言う意味かな?」


だったら、映画を見ているときとか昼を食べているときに別なことを考えるのは無しだからね。


「すまん」


何か困っていることがあったらすぐに言う!良い?


「分かったよ」


ああもう!映画の内容が全然頭に入らなかったよ。もう一回見に行くから!


「また行くの?」


当たり前でしょ!滝村は3回目になるかもしれないけど、我慢すること!良いね。


「まぁ、ある意味俺のせいだからね。分かったよ」


テスト期間中ならば、午前中で授業が終わる。部活もない。3日間のうち、どこかで行くから。


「テスト期間中に映画を見るのか」


仕方がないでしょ。テスト期間が終わったら、部活動が再開するんだから。そうなったら、予定を組むのが難しくなるし。


「それだったら、みんなで行かない?岡本とかを誘って」


それもいいかもしれない。


「じゃあ、決まりだな」


滝村はそう言うと寄りかかっていた鉄棒で逆上がりをした。


「佐川はできるのかな?逆上がり」


挑発的な表情。


失礼な!逆上がりくらいできるわ!


「じゃあ、やってよ」


舐めやがって。見ていろよ滝村!一発で決めてやるから。


鉄棒をぎゅっと握りしめた私は逆上がりをする体勢に入ったが、横にいる滝村の視線がおかしい。こいつは何をたくらんでいるんだ?そう思った私は下を見ると自分の服装を思い出した。


あぶねぇ!こいつ、知っていて挑発してきたな。


滝村!


「えっ?ど、どうしたの?」


魂胆がばれたのか声が震えている。


あんたは今、何を期待していたのかな?ねぇ。スカートを履いた状態で逆上がりなんかしたら、どうなっていたのかわかるよね。


私は滝村のほっぺたを思いっきり引っ張った。


「悪かったよ。いててて。許してくれ」


許さない!そう言う趣味があったの?あんたは!


「ちょっとは気になったんだ」


ねぇ?まさかとは思うけど学校で変なことやっていないでしょうね。


「やってない!やってない!」


ほんと?一緒に日直の仕事をやったときとか、何にもやっていない?


「やってない。大丈夫だ」


引っ張っていたほっぺから手を放すと、私は滝村のことをじっと見た。そう言えば背中を叩かれたこともあるな。無意識的にやっているのか?それとも意図的か?しばらくは警戒したほうがいいかもしれない。


「佐川?怒っている?」


そりゃ、危うく見られそうになったんだから。反省している?


「しています」


じゃあ、次の映画も滝村が負担ね。


「全員分?」


私だけでいいよ。


「分かったよ」


あと!学校で変なことしないでね。


「やらない。やらない」


滝村はそう言ったけど、なんだろうこの違和感。何かを隠しているな。


ねぇ?最後に聞くけど、本当に何にもやっていないよね?


「そりゃもちろん」


断言したけど、視線はそらしている。あっ、これは何かやりやがったな。本当はもっと追及したかったけど、夕飯の時間が差し迫っていたこともあり、ここまでかな。


今日はここまでかな。また明日ね。


「佐川、不快な一日になってしまってごめんな」


今日だけだからそんな日は。約束してね。


「もちろん」


そして、公園から歩いてすぐの場所にあるマンションに向かった。


「部屋まで送ろうか?」


それは大丈夫だから。ここで平気だよ。


駐車場のところでお別れ。そう思った時だった。いつも止まっている場所に車がなかった。


あれ?


「うん?どうした?」


両親の車がない。


「ということは?」


美紀!本当にやりやがったな!夕飯、外食だよ。でも、これはチャンスかもしれない。


「じゃあ、俺はここで」


滝村が逃げようとしたため、私は滝村の腕を掴まえた。


夕飯一緒に食べよう。


「えっ?一緒に食べるの?」


もちろん、滝村のおごり。聞きたいこともあるしね。学校で何やったのか。全部話してもらうよ。


「・・・はい。分かりました」


そして、訊かされた内容は耳を覆いたくなるようなものだった。


とりあえず滝村、お前は私の後ろに立つな!階段を上るときも前を歩くんだ!


第19話 終了


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