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第18話

今日は佐川と一緒に映画を見る日。


待ち合わせの場所に遅刻をするわけにはいかない。


「おはよう。朝ごはん出来ているよ」


今日の朝ごはんはピザパンとコンソメスープか。食パンの上に、ピーマンと玉ねぎ、ベーコン、そしてチーズがたっぷりと乗っかっており、良い感じに焼き上がっていた。


いただきます。


テレビをつけると朝のニュース番組にチャンネルを回した。


「来年3月に実施される中華民国総統選挙に関するニュースです。江蘇省と福建省で野党国民党の党員集会が実施され、元国防部部長の唐柏村(とう・はくそん)候補が勝利を果たしました。当初、有力候補と目された連誠(れん・せい)陣営は選挙戦略の見直しを迫られることとなり、地元の陝西省で開催される党大会で圧勝し、反転攻勢したい構えを見せています」


中国の総統選挙はアメリカの大統領選挙とほとんど同じ流れだな。


「おはよう。一樹、電話だよ」


そう言いながら親父がリビングに入ってきた。親父の携帯電話に俺宛?誰だよ。


はい。お電話変わりました。滝村一樹です。


「おお!一樹くんか?元気にしているか?」


電話の主はこの間家にやってきた原さんだ。朝っぱらからなんだよ。


「一昨日あたりだったかな?宗秩寮にイタ電があったんだって。一樹くんがやったんでしょ」


何でわかったんですか。


「そりゃ、俺がそう仕向けるようにしたからだよ。これで切り札は手に入った。華族相手でも遣り合えるよ」


俺は平和主義者なんで遣り合うなんてことはしません。


「またまた。お父さんから聞いたよ。地元の男爵の家が悪いことをやっているみたいじゃないか。その電話をかければ一発だよ」


それだと本当の解決にはなりません。自浄努力で何とかするしかないんですよ。


「自浄努力はあんまり期待しないほうがいいと思うよ」


大丈夫です。そういう風になります。


「おお、自信満々だね」


どう転ぶかは分かりませんけどね。


「そうだ。この間話をしていた内容覚えているか?」


沼田家の話しでしたっけ?


「明後日。宗秩寮の緊急監査が入る」


緊急監査の日取りが漏れている時点で意味ないと思うが。


「そして、その緊急監査はテレビ中継される」


えっ?マスコミに漏れたんですか?


「漏れたというよりは、あえて漏らしたと言ったほうが正しいのかな?マスコミ各社が待ち構えた状態で査察が入るみたい。各テレビ局はすでに臨戦態勢だよ」


相当えげつないですな。


「去年異動してきた黒崎という監査官がうるさい人物で、おねえ口調で歌舞伎役者みたいな顔をしているんだよ。傲慢でヒステリックな性格の持ち主で別名、“華族狩りの黒崎”って言われているから、岩崎家も目を付けられたらやられるかもしれないからね」


俺が電話一本流せばあの家は真っ先に終わるってわけか。


ところで、なんでその話を俺にするんですか?


「叔父さんは、困っている青年の出助けをしたいだけなんだ。お父さんに代わってくれる?」


そう言われたため、携帯電話を親父に渡した。


さてと、準備していきますか。


残っていたピザパンとコンソメスープの処理を済ませると、出かける準備をした。前売り券はあるだろ?クリアファイルもある。財布の中身も大丈夫。髪型も寝癖とかはないな。


「おはよう。あれ?どこか行くの?」


ああ、これから映画を見に行くんだ。


「映画って・・・もしかして、この間見たやつなんじゃ?」


そうだよ。前売り券の処理をしないといけないからね。


「私も行こうか?」


おあいにく様。先約がいるんだよ。


そう言うと、玲子が右肩に顎を乗せながら言った。


「さてはデートだね」


何度言えば分るんだ。デートじゃない。


「私もついて行っていい?」


だめだ。


「ケチ」


ケチじゃありません。


「まぁ、良いか。いずれはうちに来るかもしれないし。慌てないでもいいか」


なんでそうなるんだよ。


「ほら、早く行った。行った」


分かったよ。


じゃあ、出かけてくるから。


「行ってらっしゃい。夕飯は外で食べてね」


また?


「デートなんでしょ?お父さんとお母さん、玲子と卓哉の四人はお祖父ちゃんの家に行って来るから」


母さんまでそういうことを言う。


デートじゃない!


自宅を出ると、俺は腕時計を見て、時間を確認した。


9時15分に公開されるため、待ち合わせは8時45分に設定した。まだ、30分以上あるから大丈夫だと思うけど、この間みたいに道草を食ったら遅れるかもしれないんだよな。


そう思いながら公園を歩いていると、素振りをしている近藤部長を見かけた。


「おう。滝村じゃないか。ちゃんと勉強しているか?」


それなりにやっていますよ。


「フランス語とかわからないだろ」


さっぱりですね。


「俺も苦労したよ。中井や鈴村もフランス語は分からないから最初の1年目は赤点すれすれ。2年目からは五十嵐や市川が入ってきたから教えてもらえたんだけどな。あの頃はホント、楽しかったよな」


市川先輩。その名前を口に出した途端、近藤部長の表情がどこか悲しい表情を見せた。


まだ、納得していないんですか?近藤部長は?


「市川のことか?そりゃ、そうだけど・・・、あいつが決めたことなんだ。何があったのかは分からないが、苦しんで答えを出したんだ。俺からはとやかく言うつもりはないよ」


そう言ったものも、近藤部長はやっぱり納得していないみたいだ。


いや、あの場にいた人ならばわかる。本当は辞めるつもりはなかった。だけど、どうしてもやめなければならなかったんだ。


裏で手を引いていたのは・・・言うまでもないだろ。


電話一本で解決できるかもしれないが、それは本当の意味での解決にはならない。岩崎さん自身が市川先輩を解放させないと。そのためには、あの手段しかないよな。


だけど、もししくじったら?俺はあの学校にはいられないかもしれない。


学校だけならばまだ良い。この町自体、住めないことになるかもしれない。玲子や卓哉にも迷惑がかかる。


そう考えると、この手段は止めた方がいいのかな・・・。


「滝村、何か悩み事か?」


えっ?近藤部長にそう言われたため、思わずそう答えてしまった。


「何か思いつめているような表情をしているぞ」


言わないでもいいかな。そう思ったが、これから俺がやることでとばっちりを受けるかもしれない。そうなったとき、近藤部長がつらい立場に追い込まれてしまう。ならば、あらかじめ話しておいた方がいいかな。


俺はこれからやる計画を近藤部長に伝えた。


「本気か!滝村!」


俺は本気です。こうしないと、市川先輩は帰ってきません。そして、岩崎さんも変わることはできないと思います。


「だけど・・・あまりにも危険すぎる!もうちょっと考え直したらどうだ」


もちろん別の手段もありますが、それをやった場合、この町が存亡の危機に立たされてしまいます。なるべくこの手段は使いたくないんです。


「存亡の危機?そんなに危ないのか?」


そう言われたため、俺はメモ紙を見せた。


「この電話番号は?」


宮内省宗秩寮の外線番号です。市川先輩のことをここに流せば、間違いなく動きます。ですが、この手段は使いたくありません。みんなが不幸になってしまうかもしれないんです。


「お前、そこまで考えているのかよ」


俺と市川先輩の出会いなんか指で数える程度ですが、剣道部に入るきっかけを作ってくれた人だと思っています。そんな人が苦しんでいる。見捨てるわけにはいきません。


それでも俺はまだ迷っている。このやり方で本当に岩崎さんの気が変わるのか。


「滝村・・・お前の好きなやり方を選べ」


近藤部長。


「俺にその話をしたのは、俺のところにとばっちりが来るのを恐れたからだろ?心配するな。そんなものは慣れているよ。やりたいようにやれ。市川を岩崎を・・・助けてやってくれ」


分かりました。


「それはそうと、時間は大丈夫か?どこかに行く途中だったんだろ?」


そう言われたため、俺は腕時計を見た。


ぎゃあああ、8時45分を過ぎている!また佐川に怒られる!


近藤部長、これで失礼します。


「滝村!剣道部の心得、言ってみろ」


不屈不撓(ふくつふとう)


「そうだ。どんなにつらいことや困難なことがあっても決して諦めるな!全力が立ち向かうんだ。滝村一樹!」


そう言われると、俺はダッシュで待ち合わせの場所へ向かった。


第18話 終了


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