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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
15.カイ・ウェルスと尻を叩く祝福
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15-24 えうにすがる者達

「青銅級えう?」「む、下っ端」「カイ様が下っ端? 先日、異界の主を討伐なさったカイ様が下っ端なのですか?」


 ギストルス広場、カイ家。

 アーサーと共に戻り、いきさつを話したカイは妻達に驚愕をもって迎えられた。


 そりゃそうだろう。

 エリザ世界が助けを求めるベルティア世界の異界を討伐できるカイが、下っ端の青銅級えう冒険者なのだ。


 格上のベルティア世界の中でも指折りの強者であるカイを下っ端扱い。

 アレクがいたら闇堕ちモノ。

 当然ミリーナ、ルー、メリッサも納得できない。


『私やとーちゃんに助っ人を頼む世界でカイが下っ端……』

『おかしな話だねー?』「まったくわふん」


 マリーナが首を傾げ、シャルは家を傾げる。

 ランデルでのほほんと暮らしているエヴァですら首を傾げるありさまだ。


「どういう基準えう?」「おかしい。まったくおかしい」「カイ様の何をどう評価したら下っ端扱いになるのですか」

「いやー、どうも『えう』が良くなかったらしい」

『『「「「えう?」」」』』「わふん?」


 カイの言葉を、子らと遊ぶアーサーが引き継いだ。


『その通りでございます。我らエリザ世界の者は皆、芋煮三神と共にえうを叫び激しく戦い抜いた者達。故にえうの言葉は神聖なものとして扱われております。特にこのギストルスの町ではその傾向が顕著。皆、門を潜るためにえう懸命なのでございます』

「つまり、お前ら二人のせいじゃねーか」

『『がぁん!』』


 カイが老オークとアーサーにツッコミを入れる。

 エリザ世界のえう代表者は老オーク。そしてアーサーは腹心のえう勇者。

 こいつらがこのような構造にしたに決まっている。

 二人はカイのツッコミに叫び、弁解を始めた。


『そ、そうでもしないとカイ様の世界がオークだらけになりますぞ!』

『今でも通行するエルフ達にえうがうるさいと苦情を言われるのに!』

「それは困るが静かにやれよ。怖いから」

『『えうっ!』』

「というより、ここまでにする必要ないだろ」

『いや、我らもここまでのありさまになるとは想像できませなんだ……』

『お恥ずかしい限りでございます』


 カイの言葉に老オークとアーサーがお恥ずかしいと頭をかく。

 えうと言うのもうちの子らを崇拝するのも良いだろう。

 しかし、ここまで来れば害悪だ。


「えうと実力は関係ないえう!」

「お前が言うと説得力あるなぁ、ミリーナ……」


 そう、えうはただの言葉。

 ミリーナから受け継いだ芋煮神イリーナが神の如き偉業を成し遂げたから力を持っただけのもの。


 えうはただのえう。

 心を救いはしても、異界に侵略され続ける苦境が変わる訳ではないのだ。


「当然えう! えうにそんな力があったらカイと出会わなくてもあったかご飯三昧えう!」「む。力がないから幸せ爆誕」「良かったですわ。えうにあったかご飯なんちゃらみたいな力がなくて本当に良かったですわ……すぺっきゃほーっ」「わふんね」


 元祖のミリーナですらわかっているのに、この世界はえうへの心酔半端無い。


 まあ、世界の神からしてこれだもんなぁ……


 と、カイが悲しげに祝福エリザを見れば心を読んだのだろう。

 祝福エリザがショックに叫ぶ。


『がぁん!』『ダメですね祝福エリザ』「お前はもっとダメだ」『がぁん!』


 神共、ちゃんと働け。

 そして世界をちゃんと動かせ。

 訳のわからない事ばかりしてるんじゃない。


 と、祝福ズを見て嘆くカイだ。


「ぶーさん」「アーサーぶーさん」「ぶーって言って?」「「「ぶーっ」」」

『ぶーっ……まあ異界と戦う者はここまで酷くはありません』

「そうなのか?」


 アーサーが子らと遊びながら語り出す。


『こう言っては何ですが、えうに心酔するのは先の戦いでは芋煮三神の芋助けでようやく戦えた者ばかり。神々が生まれ変わった今、異界との戦いにはとてもついて行けぬのでございます』

「あぁ……だから、えうか」『そうでございます』


 異界との戦いで勇敢に戦ったオーク達は、子らに会う栄誉を得た。

 しかし戦わなかった者はその栄誉を得る事はない。

 だから、別の事で認められなければ門の先には行けない。


 それが、えう。


 かつてのベルティア世界の世界樹の枝を失った聖樹教や聖教国のようなものだ。

 それを埋める新たな心の支えが必要なのだ。


「お前ら、持たざる者を甘くみたな?」

『『面目次第もございません』』


 ここまでこじれてしまえば修正は大変だ。

 えうの夢に浸った者達は実力を持つ者と乖離していく事だろう。

 実力はえうではなく努力によって得られるのだから。


「あぁ、本当にエリザ世界を何とかせんといかんのか……」


 端をカットされて願いにされてしまったが、むしろ幸運。

 こんな事を放置していたら、そのうちカイの世界が大変なことになる。

 エリザ世界とベルティア世界は、もはや切っても切れない関係なのだから。


「まあ、できる事はしてみよう」


 カイは腰の鍋をポンと叩く。


『さすがカイさんえうーっ!』「まず、お前がえうをやめろ!」『えうっ!』


 神がまず範を示せ。

 そしてカイは、祝福エリザにツッコミを入れるのであった。

一巻「ご飯を食べに来ましたえうっ!」発売中です。

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世界樹エルフ
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