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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
14.神はサイコロを振る
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14-13 エリザ世界は超たいへん

『ぬぅおおカイ様! エリザ世界をお助け下され!』

「は?」


 エルネの里、カイ宅。

 異界に続く芋煮蛇口付きの社から老オークが現れカイの家の扉を叩いたのは、エルフの食料危機が一段落した頃だった。


「あ、ろーぶーさんだ」「ろーぶーさん」「ろーぶーさーんっ」

『そうだぞー、老ぶーさんだぞぅーっ』

「「「わぁい」」」

『わぁい!』


 子らが群がり、老オークがにこやかに子らを抱き上げる。


『カイ様、しばし神と遊んでもよろしいでしょうか?』

「いや、ダメだろ」

『えうーっ!』


 急いでるんだろ?


 カイは心でツッコミを入れ、老オークを家に招き入れる。

 老オークは子らをまとわりつかせたまま、カイに事情を話しはじめた。


『カイ様、我らがエリザ世界が今、危ういのでございます』

「……だろうな」


 エリザ世界の神エリザは、師匠マキナに与えられた宿題でひーこら言っている。


『半年ほど前から異界の顕現が増加しはじめ、我らの防衛力を凌駕しつつあるのです。これも我らの神エリザが宿題にかまけているせいなのでしょうか?』

「まあ、そうだろうな」

『あぁ、なんたるザマだ。これだから我らの神は崇められないのでございます。宿題よりも仕事やらんかバカ神め!』『がぁん!』


 いやぁ、それを言ったらうちの神なんて遊びで不在だぞ?


 と、思ったカイだが老オークには関係ないので黙っておく。


 それに元々はベルティアとエリザの師匠であるマキナという神のせい。

 ベルティアとエリザをあまり責めるのもちょっと悪いと思うカイだ。


「神にも色々、つきあいがあるんだよ」

『それにしてもでございます。仕事があるからご容赦下さいと言えば良いではありませんか!』

「ろーぶーさん」「ろーぶーさーん」「だっこー」

『おぉだっこですな、だっこーっ』

「わぁい」「おはなし、わかんなーい」「むずかしーい」

『ごめんなさーい。今、ぶーさんの世界が困ってるんだよー……という訳なのですカイ様』

「今のお前の顔を見ていると、深刻な話に聞こえねえ」


 言葉は辛辣。

 しかし顔は抱きつく子らに甘々だ。

 満面の笑顔で子らをあやしつつ毒を吐くギャップが半端無い。


『カイ様から宿題よりも神の責務を果たせと言って頂けませんでしょうか』

「言ってはいるんだがな……」

『やらないとマキナ先輩が世界をぶん投げて来るのです。ですから宿題最優先!』


 カイが言葉を濁し、祝福エリザが言葉を引き継ぐ。


『何ですかなその、マキナ先輩とかいうお方は?』

「こいつらの師匠でな、気に入らないと世界に世界をぶつけて潰す神だそうだ」

『なんと恐ろしい!』


 まあベルティアとは違い完全不在ではないだろうが、エリザ世界も今は片手間。

 宿題をさせれば異界がはびこり、仕事をさせれば世界がまるごと大ピンチ。

 なかなか困った状況だ。


『カイ様が顕現される前よりは今の方がずっとマシなのですが、放置しておく訳にもいきませぬ。このまま行けば我らの世界はもちろんカイ様の世界の混乱も必至。今の内に異界を叩いておく必要があるのです』

「そうだな」


 老オークの言葉にカイも頷く。


 助けないという選択肢は、今のカイには存在しない。

 エリザ世界は今や大事なエルフ食料運搬路。

 ここが途切れるとエルフの食事事情が大きく影響を受ける。


 食料危機以降はどの里も備蓄しているのでいきなり飢える事はないが、長引けば里の農産物だけで暮らす事になる。穀物や豆や芋を作っている里はとにかく、果物だったり香辛料だったりする里はなんやかんやと大変だろう。


 それにエリザ世界に顕現した異界が、こちらの世界にやってくる可能性もある。

 この世界とエリザ世界を結ぶダンジョンはエルフの街道。

 安全でなければならないのだ。


「とにかく見てみよう」

「ろーぶーさん、ばいばい」「ばいばーい」「またねー」

『またねーっ』


 カイは老オークと共にシャル馬車に乗り、家の前の社から異界へと移動した。

 いつもはシャル馬車で通過するだけの異界だが今日は違う。

 カイはシャルに空を駆けさせ、窓から地をながめて顔をしかめた。


「これは……酷いな」


 見える範囲だけでも十個くらいの異界が見える。

 これだけの密度で異界が現れる事など、カイの世界ではほとんどない。

 イグドラが天に還る時とシャルがうっかり食った時くらいだ。


『カイ様が我が世界に顕現なされるまでは、この百倍はありましたぞ』

「あー、そうだったな」『はい』


 うちの子やっぱり超すごい。

 芋煮主時代の子らに感心するカイである。


 それにしても、やはり神はえげつない。

 今、エリザが片手間で世界を運営している事を知っているのだろう。

 だからこの世界に顕現して食らっているのだ。


 あれ? それじゃうちの世界はどうなんだ?

 イグドラだけだぞ? 世界主神不在だぞ?


 と、カイが首を傾げると答える祝福ベルティアだ。


『うちの世界はマキナ先輩が睨みをきかせていますので』

「エリザ世界にも睨みを利かせてやれよ……」


 ああ、下手に手を出すと世界を投げられてしまうのね。


 と、呆れ半端無いカイである。

 しかし呆れてばかりもいられない。

 ここが危ないとエルフの食料危機再びだ。

 カイは祝福ズを呼び出し願う。


「ベルティア、エリザ。手助けしてやれ」

『『願いは叶えられました』』


 祝福ズが戦うオーク達を手助けし、敵を駆逐「させて」いく。


『ガード! ここでガードです!』『剣の振りが遅い!』

『今です! 奴の胴にマッハパンチ!』『ここ、ここが弱点です!』

「口じゃなくて手を出せよお前ら!」

『『がぁん!』』


 聖教国の『耕せ』と同列にするんじゃない。

 状況を考えろ。


 と、カイは頭を抱えるのであった。

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世界樹エルフ
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