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13-5 三つの神を束ねてカイは頭を抱える

「なあ、イグドラ」『なんじゃ?』

「こいつら、何とかならないか?」『すまぬ。無理じゃ』


 カイ宅、露天風呂。

 カイは風呂に入りながら、いつものようにイグドラに愚痴を言っていた。


 目の前には二人の変態神がいる。


『『貴方が煎じたのは左の爪の垢ですか? それとも右の爪の垢ですか?』』

「どっちでもええわい」


 本当にどっちでもいい。

 というかどっちも出て来てるんだからどっちも煎じたに決まっている。

 白々しく困った神々だ。


「カイを神から守るえう」「む。カイはへなちょこ妻と子ががっちりガード」「そうですわ。私達がカイ様と裸の付き合いを許すのはエヴァ姉さんだけでございます」

「裸の付き合い言うな」

「わふーん?」「わふーんとはだかのつきあいー?」「なでなでー?」

『あらあら』『わぁい』


 そしてカイの周囲は妻達子達ががっちりガード。

 マリーナは露天風呂に入りながら、シャルは近くで皆をのんびり眺めている。


 カイ、ミリーナ、ルー、メリッサ、イリーナ、ムー、カイン、マリーナ、ベルティア、エリザ。

 これだけ入れば広い露天風呂もちょっと狭い。

 何とも奇妙な入浴風景だ。


『大体、余にベルティアとエリザが何とかできる訳がなかろう』

「いやぁ、お前がアテにした神様に頼めば『余はこれ以上、妙な事をされとうない』……そ、そうか」

「ずるいえう」「む。とんずら半端無い」「そうですわ」

『やかましい。汝らも力無き者の悲哀をさんざん味わっておるじゃろうが』

「お前のせいでな」

「えう」「む」「はい」

『ぐぬっ……』


 しかし、こんなでも一番アテになるのはイグドラだ。

 神の世界におけるカイの頼れる防波堤。

 これが決壊してしまったら、今の有様など比較にならない超絶世界がカイの周囲に現れるだろう。


『ま、まあこの際開き直るがよい。汝の左手にはエリザ、右手にはベルティア、そして天には余。言うなれば汝は三神を束ねておるのじゃ』

「頭抱える原因にしかならねぇよ!」


 かゆい所に手が届くのはイグドラだけ。

 ベルティアとエリザはかゆい部分に極大魔法をぶちかますような有様なので、いない方がはるかにマシ。

 カイの爪の垢で世界がピンチだ。


「大体、俺はそんなに大それた事をしたい訳じゃないんだよ。エルフが普通に暮らせる世界を作りたいだけなんだから」

「さすがカイえう!」「む。全くカイらしい」「どこまでも付いていきますわ!」

「「「わぁい!」」」


 その為にベルティアのはっちゃけを利用したのは事実だが、それは転んでもただでは起きない類いのもの。

 なくても何とかなったはずだ。


 エルフの寿命は千年を超える。

 人が一生を生きる間でも世界が変わり生き方が変わるのだ。エルフの生ならもっと大きく生き方を変える事が出来るだろう。


 カイが受けたはっちゃけ祝福は時間を短縮しただけだ。

 カイがダンジョンの主にならずともエルフはバルナゥに頼みアトランチスへと渡っただろう。

 カイが輝かなくてもいずれ聖教国の力は尽き、エルフは解放されただろう。

 カイがアトランチスを天地創造しなくてもエルフは地道に作物を育てて自然を増やし、やがては自然あふれる大陸へと変えただろう。


『ほぅ……ならば汝、あの里の長老の言う通り不老不死にならねばならぬのぅ』

「そんな未来まで付き合う訳ないだろ」


 イグドラの言葉にカイが答える。


「俺は神でも竜でもないんだぞ。なぜいつまでも俺が世話しなきゃいかんのだ。自分で足掻け。自分で頭をこねくり回して考えろ。そして自分の手足を動かせ。他力本願は他力次第。そいつが手を貸さなくなったら終わりだからな」


 カイがするのはそこに至る道を見せる事。その筋道をつける事。

 そこから先に進むのは後の世代の者達の仕事だ。カイがしなくても良い事だ。


 エルフ達は今はご飯と畑に夢中だが、やがては他の事柄にも目を向ける。

 カイがする事はエルフにとってきっかけでしかない。

 エルフは賢い。

 やがてはカイの見せた事にも目を向け、しっかりと掴むだろう。


「世界樹だってお前とシャルとマリーナが何とかしてくれる。エルフの未来はエルフ自身が何とかするだろう。俺が出来る事なんて道を探る事と見せる事、そして作る事ぐらいだ。後は自分で何とかしやがれ」

「さすがカイ、ぶん投げプロえう」「む。安定のぶん投げ感」「全くですわ。ぶん投げ神ですわ」

「ぶんなーげ」「ぶんーなげ」「ぶーんなげ」

『あらあら』『わぁい』


 カイがイグドラに言い放ち、妻子達がぶん投げっぷりを賞賛する。 

 そんな一家にイグドラが天で笑った。


『なるほどのぅ……ま、不老不死などベルティアとエリザが許すはずもないがな』

「へ?」『ちょうど良い。カイよ、そこの祝福に聞いてみよ』


 カイがベルティアに視線を送ると願いと認識したのだろう、ベルティアとエリザが語り出す。


『不老不死などもっての他』『カイさんには一刻も早く寿命を全うして頂き、ベルティア家に一家共々御逗留頂くのです』『千年くらい待ちましょう』『お早いお着きをお待ちしております』

「一刻も早い寿命の全うって、何えう?」「早く寿命で死ねって事?」「早く死んで欲しいのか長生きして欲しいのか良くわかりませんわ。矛盾していますわ」

『長生きして欲しいですよ』『ですが長すぎるのも困ります』『『ほどほどでお願いします』』

「……縁起でもねぇなこいつら。そんな予定はお断りだ」


 カイが呻き、神々にお断りを入れる。


『『……はぁ?』』「このやろう!」


 ベルティアとエリザは当然、お断りをスルーした。

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