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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
一巻発売記念月間 ランデル領館に頭を抱える領主を見た!
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50.カイ・ウェルズは分業制


「新入りを紹介する」


 アトランチスとオルトランデルを繋ぐ通路ダンジョンの主の間。

 ずらりとカイが整列する中、カイズ全体統括役のカイスリーが皆に告げた。


 カイスリーは初の第二世代である分割型カイズであり、強力な主を討伐した戦利品の高性能カイ。だからカイズ全体の統括も行っている。


 カイスリーの横に立つのはカイツー。

 カイツーは分割できない第一世代タイプのカイズの統括を担当する。


 単体運用しかできない第一世代の主な仕事はアトランチスの神殿墓所の調査。

 カイネットワークの活動には基本的に参加しない。

 速度が重要な情報収集の役には立たないとシスティが判断したからだ。

 だからシスティにこき使われる第二世代にはとてもうらやましがられている。


 まあ、それはさておき新入りカイズのお披露目だ。

 全員カイだからとおろそかにしてはいけない。カイの記憶を継承しながらも自ら技術を獲得する事もできるカイズには皆、個性があるのだ。


「カイハンドレッドワンです」「カイハンドレッドツーです」……

「すげえ高性能だ」「超高性能だ」「こんなスペックいらねぇ」「アレクの奴、また無駄に願いやがったな」「あいつ、カイに関しては本当にアホだな」……


 カイズがぼやく中、新たなカイズの自己紹介が続く。


「そして俺が最後の新入りカイ、カイツーハンドレッドだ」

「「「「作り過ぎだ。アレク」」」」


 一気に倍に増えた人員にツッコミを入れるカイズである。

 ハンドレッドワンからハンドレッドナインまでは超高性能。

 十台と二十台はバラツキがあり、三十台でようやく並の第二世代カイズと同等の能力に安定してツーハンドレッドまで続く。

 皆、第二世代の分割型カイだ。


「皆もわかっていると思うが、この補充はカイネットワークの負荷軽減が目的だ。平均五ヶ所の諜報と潜入もこれで半減。システィにも承認されているから作業は減る……はずだ?」

「「「「ほんとに?」」」」


 首を傾げて語るカイスリーの言葉に、皆で首を傾げるカイズだ。


「システィは増えた分だけ仕事を増やす奴だからなー」「上達しても仕事を増やすぞ」「生かさず殺さずだよな、あいつ」「生まれながらの為政者だわホント」「いいよな第一世代は、システィにあまり相手にされてなくて」


 第二世代カイズのぼやきに第一世代のカイツーはフッ……と笑う。


「相手にされなさすぎてマナの補給に事欠く有様だぞ俺らは……ここはいいよなぁ。主の間だからマナが常にあふれていて。アトランチスの墓所は補給がなかなか来なくて辛いぞー」

「「「「すみませんでした!」」」」


 第一世代には第一世代なりの悩みがある。

 そんなカイツーに土下座する第二世代カイズである。


 マナ補充がないというのは常に空腹状態という事だ。

 呪われていた頃のエルフと大して変わらないのである。


「いつでもマナを食いに来いよ」「歓迎するぜ」「たまには俺が代わってやる」「エルフは呪いから祝福に変わったというのにお前らときたら……ここで貯め込んだ魔石もってけ!」

「「ありがとう! 本当にありがとう!」」


 魔石をしこたま貰い涙目のカイツーら第一世代。

 美しきカイズ愛に全体統括のカイスリーは深く頷き、皆に告げた。


「そう。我らは互いに別個のカイズだがカイワンを介して繋がっている。我らは個にして群。至らぬなら助け、そして共に幸福を目指すのだ」

「「「「カイワンみたいだな」」」」

「まあ、俺らカイだからな」

「「「「そりゃそうだ」」」」


 わはははははは……皆で笑う。

 カイズの根っこはカイ。

 仲間同士の助け合いとぶん投げ精神はまるっと受け継いでいるのだ。


「システィにこき使われるのは俺たちに任せろ」「俺も墓所でシスティの気を引くような文言を見つけてみせるからな」「そうすれば多少はシスティの興味もこっちに向くはずだ」「これからも一緒にがんばろうぜ!」「先輩、お世話になります!」「俺は諜報」「俺は潜入」「俺は護衛」「俺は伝達」「俺は巡礼地商売」「俺は料理の道を進むぜ」「「「「さすがカイセブンティーン」」」」


 カイズが互いに励まし合う。

 互いの役割で互いを助ける。それがカイズだ。


「しかしカイワン、いいよなぁ」「……それは禁句だ」


 そして本人のカイ、カイズが言うところのカイワンもその中に含まれている。

 カイを幹として枝葉のように広がっているのが戦利品カイなのである。


「ミリーナ、ルー、メリッサとイチャコラ出来るなんてうらやましい!」「イリーナ、ムー、カインの転がり成長を近くで見られるのもすげえうらやましい!」「まあ、俺らも記憶は継承してるけど」

「この前の愛してるえうは良かったわー」「「「「まったくだわ」」」」

「その後の前屈みは困ったけどな」「「「「まったくだわ!」」」」


 談笑するカイズにカイスリーが頷いた。


「そう、それがカイワンの役割だ。妻達と子供達を可愛がって俺達に見せるという、重要な仕事があるのだ」

「「「「それは重要だ」」」」


 カイズが頷く。


「奴は癒やし」「癒やし担当か!」「俺たちの殺伐とした任務生活の救世主」「さすがあったかご飯の人だな」「今度はイリーナ、ムー、カインとのふれ合いを頼むぜ!」

「リクエスト出したら応えてくれるかなぁ」「「「「頼んでみよう!」」」」


 カイズ癒やし担当、カイワン。

 皆がうらやむ妻子とのイチャコラ担当カイなのであった。

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世界樹エルフ
― 新着の感想 ―
[一言] これって誰かが成り代わろうとしたら途端に破綻するんじゃあ…
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