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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
一巻発売記念月間 ランデル領館に頭を抱える領主を見た!
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48.カイ、元締めに待遇改善を要求する

「ダメよ」「えーっ……」


 ビルヒルト領、ビルヒルト。

 領館の執務室で、にべもない元締めにカイは呻いた。


「即答えう」「む。即答。超即答」「一発ゼロ回答ですわ。本当ににべもないですわ」

「「「ぶぎょっ」」」

『あらあら……』『わぁい……』

「まあ、そう言うと思ってたけどさぁ……」


 システィは戦利品の事なんて気にしてないだろうなぁ。


 と、カイは思っていたがやっぱりだ。

 それでも少しは気にしてくれればとダメ元で言ってみればやっぱりダメ。

 さすがシスティだ。


「文句を言われる俺の身にもなってくれ」「知らないわ」


 やはり即答。システィ強い超強い。


 しかしカイズの期待を一身に背負ったカイはここで引き下がる訳にはいかない。

 自分の分身にブツブツ文句を言われたり、慰めたりするのは何とも切ないものなのだ。


 しかしシスティは文句くらい聞いてやれと言わんばかり。

 カイは切り口を変えて訴える事にした。


「このままだとカイズが荒むぞ。精神状態は仕事の成否に大きく関わるんだから少しは改善してやれよ」「何? あんたそこまで不幸な人生送ってるの?」「お前のせいでカイズの不幸が半端無いんだよ」


 妻と子に囲まれて暮らすカイは超幸せだ。

 それをぶち壊して余りあるシスティが半端無いのだ。


「ま、カイズがあんたに愚痴を言うのはちょっと問題かもね」


 カイの事なら自分で何とかしなさいと突き放すシスティも、仕事に支障があると言われれば聞く耳を持ってくれる。

 しばらく考えたシスティはカイに解決案を提示した。


「じゃあ、諜報任務に就いていないカイズに限り七体分割で完全週休二日を認めましょう。毎日五体勤務で二体休み。どう?」

「……それ、休みって言うのか?」「休めるわよね?」「一部がな」


 なに? その脳が半分ずつ寝るみたいな話?


 と、昔誰かから聞いた寝ない動物の話を思い出す。

 脳が半分ずつ寝るかどうかはカイは知らないが少なくとも人間には無理だろう。

 そしてカイツーと宝物庫出身のカイズは休めない。分割タイプじゃないからだ。


「というかカイツーはどこで何をやってるんだ?」

「分割しないタイプは全員アトランチスの墓所送り。カイツーが指揮しているわ」

「あー、そんなのあったな……」


 分割出来ないカイズは分割による連絡が出来ない。

 だからそのような事があまり必要ない場所で活用されているのだ。

 カイネットワークに使えないから閑職。

 幸せなのか不幸なのかよく分からないカイズ達だ。


「負荷軽減になりそうな案はないのか?」


 とにかく分割して一部休むでは負荷軽減にはならないだろう。カイは別の譲歩を求める。

 システィはしばらく考え、答えた。


「なら、戦利品カイの数を増やすしかないわね」

「……それ、ダンジョンを討伐しろって事か?」

「そういう事ね。エルフ勇者の訓練のついでにアレクが願って増やしてるけどまだまだ全然足りないわ。あんたなら世界を掘って異界を顕現させられるでしょ」

「……」


 システィの言葉にカイは黙り込む。

 戦利品カイは顕現した異界の主を討伐して願い得られる戦利品。

 そこら辺の怪物では得られない。そのくらいの存在なのだ。


 顕現した異界を討伐するのは当然。

 エルフ勇者の訓練の為に異界を顕現させるのもまだいい。


 しかし、戦利品カイを得る為にわざわざ異界を顕現させるのか?

 そのためだけに異界の誰かを殺すのか?

 戦利品カイのために?


 そう考えると何とも気分が悪いカイである。

 異界はこちらを食うつもりで顕現していても気分は悪いものなのだ。


「仕事を減らす選択肢はないのか?」「ないわよ」


 システィはやっぱりにべもない。


「戦利品の幸せよりも王国の幸せ。正しく生きているのに不幸な人が一刻も早く幸せになる方を選ぶわよ」「そりゃ……そうだな」


 ぐうの音も出ないカイだ。

 戦利品カイは見た目も行動もカイだがやっぱり戦利品。

 魔道具だ。


 それの為に人を犠牲にするなど本末転倒。

 道具は人の役に立ってはじめて道具。道具が壊れるからと誰かが不幸になるのを見過ごす選択はシスティにもカイにもない。


 カイズのために交渉するカイであったが、異界の主を誘い込んで討伐出来ない、不幸な誰かも見過ごせないではどうしようもない。


 こりゃ……俺の負けだな。

 すまんなカイズ。俺のイチャコラで勘弁してくれ。


 と、諦めるカイである。

 そんなカイにシスティは笑い、助け船を出してきた。


「ヴィラージュで願いなさいな」「え?」

「竜峰ヴィラージュのダンジョンで願いなさい。主に願うよりは手間がかかると思うけど、あそこなら作れるかもしれないわ」


 竜峰ヴィラージュのダンジョンは五万階層以上。

 それだけのマナを異界から吸い上げているのだ。

 主でなくとも戦利品カイを作れる可能性はある。


「ま、バルナゥがどう答えるかは知らないけどね」


 カイの言う事をバッサリ却下するのにこういう案をしれっと出してくる。

 さすがはシスティ。

 これだからカイはずっと頭が上がらないのだ。


「……ありがとう」

「まったく情けないわねぇ。私は身ひとつでそこら中飛び回ってるっていうのに」

「お前のような超人と一緒にするな」


 戦利品カイもしょせんカイ。

 王族でも勇者でもない。

 カイは頭を下げながら、お前みたいな心構えなんざないよと毒づくのである。


「あ、火曜日の祝福を使えば出来るんじゃね?」

「やめておきなさい」


 もしかして神の祝福なら……

 と、呟いたカイの言葉をシスティが即座に却下する。


「なんで?」「あれで願うと完璧なカイ・ウェルスが出来かねないわ」「完璧ならいいじゃないか」「バカね。生身って事よ」「……ダメだな」「ダメね」


 膨大なマナに願って生身のへなちょこカイズではお話にならない。

 カイとシスティは即座に却下した。

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