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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
一巻発売記念月間 ランデル領館に頭を抱える領主を見た!
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39.カイ、宇宙へ

作家メシにて私の手抜きご飯が公開中。カイよりひどいぞ(笑)

http://labo.over-lap.co.jp/category/sakkameshi/

いわさき先生のご飯もチェックだ。


一巻「ご飯を食べに来ましたえうっ!」発売中です。

土日のお供にぜひどうぞ。

続刊にご助力頂けると幸いです。

よろしくお願いいたします。

『準備はよいか?』「ああ」


 次の火曜日、エルネの里。

 広場の中心にあるカイ宅の前、集まったいつもの面々にイグドラが告げた。


 いつもの面々が揃ってはいるが、今回は二班に分かれて作業する。

 宇宙で処理するミリーナ母に子らを預けたカイ一家とアレクら勇者の宇宙班。

 地上に堕ちた隕石を処理するバルナゥ、ビルヌュ、ルドワゥ、エヴァンジェリンとエルフ勇者の地上班。


 えう人ことエリザ世界のオーク達も地上班。非常時の異界避難誘導を担当する。

 ダンジョンが隕石で潰れる事はあっても異界にまで突き抜ける事はない。

 異界は別の世界。突き抜けるより先に世界の繋がりが切れるのだ。


 ちなみに、カイは元凶のアルハンにも声をかけた。


「カイ様。そのような事で商人が役に立つ事などありますまい」

「まあ、宇宙だからなぁ」

「しかしそれでは心苦しいので、これを皆様の食事にお使い下さい」


 と、丁重に辞退され、道の駅で使える大量の食事券を渡された。

 さすが商人。金にならないと判断すれば手間を全く払わない。

 そして助力アピールの為に援助する事も忘れない。

 手間と立場を素早く計算して振る舞うのはさすが大商会の商人である。

 食事券というのも実にセコかった。


「隕石をぶちのめして道の駅ご飯!」「いいね!」「今日の芋煮鍋はひと味違うぜ」「イモニガーッ」「「「イモニガーッ!」」」


 しかしセコくても食事券目当てのエルフ勇者はやる気満々。


 そもそもお前のせいだろアルハン……


 と、カイは思いはしたが言っても仕方がないのも事実。

 芋煮ダンジョンを思い出し、エルフを鼓舞できたからいいやと思うカイである。


「マオ、うっかり天から堕ちてこないで下さいね。あまり損傷がひどいと蘇生できませんから」「おうよ。まあ俺の芋煮鍋なら堕ちても大丈夫そうだがな」

「バルナゥよ、私はなぜここにいる?」『それは隕石と戦う我を見送る為』「お前は地上班だろ。見送る必要もあるまい」『ルーキッドともだちーっ!』「そもそも隕石ごときで何とかなるのかお前は? 友達なら何をもしても良い訳ではないぞ」『そ、そういえば陰湿者に隕石アタックを食らった事があったような……』「やはり大丈夫ではないか」『おおーふっ!』

『『とーちゃん、相変わらずだなぁ……』』「わふんっ」


 ミルトとマオ、ルーキッドとバルナゥも相変わらずだ。

 ビルヌュ、ルドワゥ、エヴァンジェリンも準備万端。

 地上班は万全の布陣だ。


『食べるよー。今日はたくさん食べるよー』

『カイ、竜牛味です。竜牛味でお願いします』

「わかった」


 まあ地上班はあくまで保険。

 この星をどれだけ傷つけずに済ませられるかは、カイ達宇宙班がどれだけ安全に宇宙で処理できるかにかかっている。


 この星に付きまとう石っころの数はおよそ二兆。

 シャルとマリーナにカイの火曜日祝福でしこたま食べさせ、二人が飽きたらぺっかーで土下座退場してもらおう。

 食欲は最大の防御なのだ。


『さぁカイよ、シャルに乗り込み飛び立つのだ。そしてこの星を石っころの脅威から救うのじゃ』「……いやぁ、一番の脅威はお前ら神なんだがな」『ぐぬっ!』


 そもそもお前らがいなければこんな石ころ来なかったし。

 神って奴は本当に面倒臭いなぁ……


 と、カイはシャルに乗り込んだ。

 今日のシャルは両替も道の駅も家も馬車も樽スポンもお休み。分割シャルは全員集合して全高五十メートル超の大木と化している。


「というか、中は俺んちなんだな」

「ただいまえう?」「ただいま」「本当にただいまですわ」

『あらあら』


 そして中はカイ宅そのまんま。帰宅と全く変わらない。 


『じゃ、行くよーっ』「おう」


 そしてシャルが動き出してもカイ宅は快適そのもの。

 窓の外の景色だけが変わっていく中、いつものように食卓に座って芋煮でも作ろうかと相談するカイ一家だ。


「アハハ、いつもと全く変わらない。さすがカイ!」「全く現実味の無い一家よね」「まあ、カイさんですから」「じゃあ俺が飯を作ってやる」

「えう!」「まさかの心のエルフ店貸し切り!」「素晴らしいですわ。本当に素晴らしいですわ!」


 アレクが笑い、システィが頭を抱え、ソフィアが頷き、マオが厨房に歩き出す。

 こんな非現実一家を前に緊張するのも馬鹿らしい。

 勇者達ものんびりくつろぎモードだ。


 そんな中、イグドラとカイはのんびりと会話する。


『余は残りの石っころと先日の対価で手一杯じゃ』

「先日のって……ああ、あの異界助っ人巨神が言ってたな。どんな対価なんだ?」『……聞くでない』「まあ言いたくないなら別にいいけど」『えぇい! 汝は面倒な事をするくせにそういう所は淡泊じゃのう! こういう時は空気を読んでしつこく聞くもんじゃ!』「面倒な事をしたのはお前の飼い主だろ!」『ぬがーっ!』

「おう、料理出来たぞ食え」


 神面倒臭い超面倒臭い。

 マオのご飯を食べている内にシャルはどんどん天へと昇り、空がだんだん暗くなる。星の外へと出つつあるのだ。


『着いたよー』「お、もう着いたか」


 しかし実感まるでなし。

 全くいつもの家の中。シャル家すごい超すごい。

 しかし窓を覗けば確かに宇宙。星空にぷかぷか浮かぶ石っころだ。


「石っころだ」

「浮いてるえう」「む。シャルではないのにぷかぷか浮いている」「そうですわね。それでカイ様、これからどうするのですか?」

「ちょっと外に出てみよう」「あ、ちょっ、待っ……」


 がちゃっ……カイが無造作にドアを開く。

 外は真空。中は一気圧。

 空気と共に外に放り出される皆である。


「うわっ、な、なんだこれっ」

「えうっ」「ぬぐぅ」「ふんぬっ!」

『あらあら』


 祝福で姿勢を正し、浮かびながら首を傾げるカイ一家。


「……! 、! ? ……!!」「は? 何?」


 そしてカイ達と同じように外へと放り出されたシスティの口パクに、さらに首を傾げるカイである。

 カイが見つめる宇宙の先、システィはくるくる回りながら必死こいて魔法を色々かました後、鬼のような形相でカイに突撃して来た。


「のわっ!」

「まるで真空魔法だわ! あんた私を殺す気? 殺す気なのね!」


 血走った目でカイに掴みかかるシスティだ。


「すまん。吸い出されるとは思わなくって」

「悪気はないえう」「む。まったく悪気はない」「それにしてもさすがは世界樹の守り。こんな場所でもへっちゃらですわ」


 空気がなくても大丈夫な世界樹の守り超すごい。


「アレクは?」

「僕は鍋の中だよ」


 聖剣『心の芋煮鍋』は、よそうまで鍋の中身を逃さない。

 当然空気も逃さないので宇宙空間でもしばらく平気。

 さすがはアレク、直感力半端無い。


「……システィも入れてやれよ」

「システィは一度宇宙を体験してみたいって言ってたから」「もう二度と体験したくないわ。私も鍋に入れてちょうだい」


 システィがアレクの鍋に滑り込む。

 マオもやっぱり鍋の中。そして竜の祝福を持つソフィアはへっちゃらだ。


「なんだこれ、俺らよりエルフ勇者の方が適役じゃんか」「私達は来るだけ無駄でしたね……システィの興味のおかげで無駄骨です」「くうっ……だって宇宙よ宇宙。一度位行ってみたいじゃない宇宙」「そのなんでもかんでも首を突っ込む性格、何とかした方がいいと思いますよシスティ」「ううう……」


 しかし鍋の中ではいずれ空気はなくなるだろう。

 カイはシャルに頼んで家を分割してもらい、皆で中へと転がり込んだ。

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一巻発売中です。
よろしくお願いします。
世界樹エルフ
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