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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
一巻発売記念月間 ランデル領館に頭を抱える領主を見た!
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8.シャルロッテ、お前もドリルか!

一巻「ご飯を食べに来ましたえうっ!」発売中です。

書籍化なんて二度と無い事かもしれんからはっちゃけろー。

『わぁい!』


 エルネの里、広場。


 しゅぱた、しゅぱたたっ、しゅぱたたたっ。


 家、宿、馬車、樹木……シャルが様々な形に変わる。

 まだまだ世界が目新しいお年頃。

 色々なものを見てマネるのが楽しいらしい。


「上手いもんだ」

「器用えう」「むむ、さすが世界じゅー?」「まったくですわ」

『その呼び方やめてーっ!』

「「「ぶーぎょっ」」」

『あらあら』


 カイは道具の手入れをしながら、ミリーナ、ルー、メリッサ、子らとマリーナは家の中でご飯を煮込みながらそんなシャルをにこやかに見つめていた。


 カイ宅はシャル。

 そしてカイ宅の前で変形を繰り返しているのもシャル。

 分割である。


「まさか分割するとは」「戦利品の俺と同じとか、すげえな……」

『えへーっ』


 どうやらカイスリーのマネをしたらしい。


「家が気まぐれに移動するのは困るえう」

「む。帰ってみたら家が出かけてる衝撃半端無い」

「そうですわ。家はどーんと、そうどーんと構えてくださらなくては困ります」

『むむむ。戦利品カイに出来るなら僕だってー』


 というミリーナ、ルー、メリッサの言葉に枝葉をすぱっと切り落とし、カイ宅を築いてみせたのだ。

 その有様を見てホッとするのは留守番役のカイスリー。


「これでカイワンのてきとーな掘っ立て小屋で留守番しなくて良くなった!」

「ワン言うな!」


 と、本人をコケにして喜ぶこと半端無い。

 このあたり戦利品カイもやっぱりカイである。


 そういやイグドラの世界樹の葉も、独立した何かではなくイグドラの一部だったなぁ……


 と、カイは昔を思い出す。

 だから死以外のあらゆるものを治してみせる世界樹の葉はエルフの呪いには効果が無かった。

 イグドラが効果を選択していたからだ。


 シャルのこれも同じ。

 見た目は完全に別でもどこかで繋がっているのだ。


『王じゃからのぅ!』「……お前いつでも出てくるのな。暇なのか?」

『何おぅ?』「バルナゥが嘆いてたぞ。ソフィアさんとのイチャイチャを見られて恥ずかしーってさ」

「それは恥ずかしいえうね」「む。覗きダメ、絶対」「そうですわ。人の情事を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえでございます」

『神なんてそんなもんじゃ』「それを明言する神はお前くらいだよ」


 イグドラの言う通りなのだろうが『お前の情事を見ているぞ』と面と向かって言われるのはなんとも嫌なものである。

 カイは俺らに関しては明言するなよとイグドラに釘を刺し、広場でしゅぱたと姿を変えるシャルに視線を戻した。


「ねえシャル、樽になれるー?」

『やってみるーっ』


 今、シャルは群がるエルフの子らが持ってきた樽への変形にチャレンジしている。

 自在にマナを操るシャルは自らの材質変化も自由自在。

 シャルの築いたカイ宅もかまどは石だし窓にはガラスが使われている。何にでもなれる超生物なのである。


 まったく、世界は広いな……


 カイは自らを縮めて樽の姿に変形するシャルを見つめて笑う。

 子らは歓声をあげてシャル樽の中に入り、シャル樽はスポンと小気味良い音を立てて子らを空へと打ち上げた。


「わぁーいっ!」「高いーっ!」「樽スポンーッ!」

『わぁい!』


 今のエルフは子らも世界樹の守りでがっちりガードされている。

 十メートル程度の高さに打ち上げられても怪我などしようはずもない。


 まるで遊具だな。

 だが、人間ではやるなよ?


 カイは道具の手入れを再開しようとして、シャルの周囲に目を剥いた。

 空間が、歪んでいるのだ。


「シャル! 元に戻れ!」『なんでー?』


 樽を傾げるシャルにカイは叫んだ。


「お前もドリルか!」


 そりゃそうだ。

 竜と同じく世界の盾なのだから。


 体のマナはバルナゥと同じく超高密度。

 針が布を貫くように一点にマナが集中すれば世界をあっさり貫くのだ。


 家の外に飛び出たカイは早く戻れとシャルを急かし、身の丈五十メートルの元の姿に戻らせる。


 シャルの周囲の空間の歪みが消えていく。

 どうやら異界を貫くまでには至らなかったらしい。

 カイは大きく安堵の息を吐いた。


「シャル。小さくなるの禁止」『なんでー?』

「異界が現れるからだ」『でも僕、世界を食べてないよー?』

「食べると異界がこっちに来る。重いとこっちが異界に行く」『うわぁ』


 シャルも理解したらしい、ブルリと幹を震わせる。

 世界を食いまくって異界の巨人を招いてしまったシャルは異界の恐ろしさを知っている。自分から異界を招いたり行ったりするような事はしないだろう。


『異界、ダメ、絶対』「……そうだな」


 まあ、いずれは食べてもらわないと困るんだが。


『じゃあ、どのくらいなら縮んでもいいのかな?』

「バルナゥが人間サイズで異界を貫いていたから、そのくらいじゃないかなぁ……イグドラ、そのあたりどうなんだ?」

『ま、そのくらいじゃの』


 好きな時に神を都合良く使うくせに神に何かと文句を言う。

 カイの適当っぷり半端無い。


『そっかー……もう樽スポンは出来ないね』

「「「ええーっ……」」」


 シャルの言葉に、エルフの子らが騒ぎだした。


「樽スポンー」「飛ぶー」「僕まだやってない……」

『ごめーん。怖い人が来て食べられちゃうからダメなんだ』


 比喩でも何でもない。本当に食いに来るのが困るところだ。


 が、しかし……解決は天からやってきた。


『分割すれば良い。集中するのが問題なのじゃから分散すれば良いのじゃよ』

『おおーっ。さすがかーちゃん!』『当然じゃ、もっと誉めるがよい』

『すごいよかーちゃん!』『のじゃ!』


 イグドラの言葉にシャルは喜び、枝葉をバッサリ分割してシャル樽をポコポコ作り出す。


『樽スポン、やるよーっ』「「「わぁーいっ」」」


 スポン、スポポン、スポポポポンッ。

 エルフの子らが空を舞う。

 相変わらずの何でもアリだ。


「切り落としても戻るのがすごいよなぁ」

『接ぎ木というもんがあるじゃろ。あれと同じじゃ』


 あ、なんか植物っぽいなそれ。


 と、妙な所で納得するカイであった。

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世界樹エルフ
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