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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
一巻発売記念月間 ランデル領館に頭を抱える領主を見た!
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4.うちのでかい犬がとんだご迷惑を……

一巻「ご飯を食べに来ましたえうっ!」発売中です。

書籍化なんて二度と無い事かもしれんからはっちゃけろー。

 ランデル領館。

 今日もルーキッドは頭を抱えていた。


「家賃が……払えん」


 そう、バルナゥ家主の領館の家賃が払えないのだ。

 まだかまだかと催促を受けすでに一週間。

 ランデル領主、はじめての家賃滞納だ。


 実は払えない事はない。

 しかしルーキッドはバルナゥの家賃支払いに、とあるこだわりを持っていた。


 支払いに使うのは未使用の金貨。

 鋳造してから誰も使っていない金貨、まっさら綺麗な美しい金貨で家賃の支払いをしていたのだ。


 最初は普通に出回っていた金貨で支払っていた。

 バルナゥが金貨を欲しているのはルーキッドとの友情の記念が欲しいからであって、金貨そのものにこだわりはない。

 ルーキッドが払った金貨なら、どんな金貨でも良かったのだ。


 しかし、その頃領館に住んでいたビルヒルト領主の長男カイル・フォーレがバルナゥの金貨磨きを手伝うようになってから状況は変わる。

 世話になっているのだから何かの役に立ちたいという気持ちだろう、あまりに熱心に金貨を磨くカイルに「これはまずい」とルーキッドが思うようになったのだ。


「金貨を磨いておりました」


 カイルが様子を見に訪れた母システィにこう言った時のシスティの視線を、ルーキッドは忘れる事はないだろう。


 あんた、うちの子に何させてんのよ。


 目力で語るシスティ怖い。超怖い。

 勇者は超人。

 そして元王女である彼女の政治力は片田舎のルーキッドなど足下にも及ばない。

 その気になればルーキッドなど魔法一発。そして言葉一発。

 ルーキッドが経験豊富な先輩領主でも、どうしようもないのだ。


 頭を抱えたルーキッドは国王に書簡を送り、定期的に新品の金貨と使用済みの金貨を交換してもらう約束を取り付けた。


 必ず金貨を送るから、アーテルベ様になにとぞよしなに頼む……


 バルナゥに名前をようやく憶えてもらえた国王グラハムも、ここで株を上げようと懸命。

 建国竜絡みではやたらと腰の低い国王グラハムは万全に万全を重ねた輸送計画を臣下に立てさせ実行し、ルーキッドは受け取った金貨で家賃を支払っていたのだ。


 しかし今回、その金貨がまだ届いていない。


 どこかで問題があったのだろうか……


 と、色々と心配なルーキッドだ。


『ところでルーキッドよ。今月の家賃はどうした?』

「……もう少し待ってくれないか?」

『そう言いながらもう一週間だぞルーキッドよ。家賃滞納とか我悲しい。この海よりも深き悲しみは汝の支払う金貨に刻まれるであろう』

「すまんな」


 バルナゥは寂しんぼだ。


 ……これ以上待ったらスねてしまうかもしれないな。


 ルーキッドはバルナゥに頭を下げ、部下に交換のために用意させた金貨をもって来させた。

 何年も流通したくすんだ金貨だ。


「今回の支払いはこの金貨で我慢してくれ。実は支払う金貨がまだ届いていなくてな……」『……』


 バルナゥはルーキッドが差し出した金貨をじっと眺め、ルーキッドに聞く。


『ルーキッドよ、届かなかった金貨はどこから来るのだ?』

「王都だが……」『あのボンクラめ!』


 くわっ……

 バルナゥの瞳にマナが輝く。


「待て! 金貨は来るから。必ず来るから!」

『我が怒っているのは金貨がくすんでいるからではない。そのような瑣末な事でルーキッドに頭を下げさせたグラハムが許せぬからだ! 待っていろボンクラ王! ガーネットの血縁でありながらこの不始末。我が直々に家賃をふんだくってやる!』


 ずどん!

 膨大なマナに反応して空間に穴が開く。

 バルナゥは空間を渡り王都ガーネットに乱入した。


『我の金貨! 我とルーキッドの友情金貨はどこにある! 答えよこのボンクラ王め! おおーふルーキッドともだちーっ!』

「も、ももも申し訳ありませんアーテルベ様! 街道で大規模な土砂崩れがあり輸送計画が大幅に遅延しております」

『宝物庫の戦利品カイを通じてシスティに知らせんかバカ者め! とにかく我とルーキッドの友情金貨を、家賃をよこせ!』


 バルナゥはグラハム王をさんざん罵倒した挙句に家賃分の金貨をふんだくり、街道を金貨金貨とわめきながら飛び土砂崩れに見舞われ立ち往生した輸送馬車を発見。ブレス一発で街道を開通させて馬車ごとまるっとランデルに空間転移した。


 王国の書物はこぞってバルナゥの様を書きなぐり、かくして竜は光りものが好きという逸話が出来たのである。






 そして後日。


「カイよ、急ぎの頼みがある」

「何でしょうか?」


 ルーキッドはカイをランデル領館に呼び出し、頼み事をした。


「宝物庫の戦利品カイからグラハム王に謝罪を伝えてもらえないだろうか」

「それは構いませんが、何とお伝えするのですか?」

「うちのでかい犬がとんだご迷惑をお掛けしました……と」

『おおーふっ!』

「この謝罪はいずれ犬と共にいたします……と、土下座して詫びてくれ」

「はぁ……」

『ルーキッド! せめて忠犬、忠犬で「ええいやかましい!」おおーふっ!』


 この駄犬め。


 と、建国竜を足蹴にするルーキッドである。


「何でもかんでもブレスでゴリ押しできるお前の基準を私に押しつけるなバカ者が。人の力は組織の力、それだけ複雑怪奇なのだ。お前のせいで王都での私の心象の悪化は確実。胃が痛くなるみみっちい嫌がらせが増えるのだ。どうしてくれるバルナゥよ!」

『ブ、ブレスでぶおーっと……』

「アホか!」『おおーふルーキッド許してーっ』「いいや今日はじっくり説教だ。私も時には怒るという事をお前にじっくり教えてやろう」『おおーふっ!』


 ルーキッドの説教は続き、バルナゥの謝罪も続く。

 なんだかんだで仲が良い二人だ。


 そしてルーキッドに頼まれたカイは、宝物庫の戦利品カイに後始末をまるっとぶん投げるのであった。

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