12-8 アトランチスの墓標迷宮に三丁目のハッちゃんを追え
「よし、行くか」「えう」「む」「はい」
「「「ぶぎょーっ」」」『オーク眼力ライト!』『あらあら』
「さあ行こうカイ! カイなら絶対大丈夫だよ。だってカイだから「やかましい!」えーっ……」「ま、火曜日だから仕方ないわね」「だな」「はい」
カイ曜日……もとい、火曜日。廃都市アトランチス。
カイ一家と老オーク、そしてアレクら勇者とベルガはエルフの神殿の前に立っていた。
イグドラから『とても嬉しいげふんげふん……ちと、まずい事が起きた』と連絡を受けたためだ。
どうやらイグドラの子が一人、芽吹きつつあるらしい。
喜びを隠せない口調で語るイグドラにカイは早すぎるとボヤいたが、他の子はまだまだ芽吹きは先。
生き物だから多少の予定外は仕方ない。
そろそろ世界樹の事も調べなければならないという事だろう。
と、カイは前向きに割り切って太古のエルフの墓標から世界樹の子が引き起こす災厄を細かく調べる事にしたのだ。
ついでに以前遭遇したゴブリン討伐も兼ねて。
今日は火曜日。
さらにアレク、システィ、ソフィア、マオら勇者にマリーナと老オークも連れてきた。万全のゴブリン対策である。
まあ、いつも通りでもあるのだが。
「相変わらず賑やかだな、お前らは……」
「いや、好きで賑やかな訳じゃないぞベルガ。大体アレクと老オークが悪い」「『えーっ』」
カイの言葉にアレクが叫び、老オークが目をぺっかぺっかと瞬かせる。
「だって今日はカイ曜日じゃないか」「知らん」「えーっ」
『芋煮三神に我が身を捧げるのが務めなのです!』「眩しい。めっさ眩しい! とりあえずその目の光を消しやがれ!」『神のお告げでございます!』「「「ぶぎょーっ」」」「じゃあせめて俺の方に視線を向けるな」『よそ見をして話すのは人として失礼に「奇行の方が失礼なんだよわかれ!」ぬぅおおおっ!』
うちの子可愛い超可愛い。
しかし老オーク可愛くない超可愛くない。
カイは視線をこっち向けるなと老オークを追い払い、神殿の門を潜った。
「「「ようこそアトランチス神殿へ!」」」
「……またか」
神殿で待っていたのはカイの行く所どこにでもいる戦利品カイである。
千人は軽く入れるであろう神殿の中、戦利品カイ達が机と椅子を持ち込み紙に何かを書き殴っているのだ。
「……何してるんだ、俺?」「見ればわかるだろ、墓所の記録だよ」
「……なんで?」「聞かなくてもわかるだろ」「……」
ぼやく戦利品カイに頭を抱えるカイである。
このような事をする奴など一人だけだ。
カイはしばらく頭を抱えた後、首謀者の頭をむんずと掴んだ。
「俺をどんだけこき使うつもりだシスティ!」
「だってエルフがちっとも居着かないんだもの!」
「当然だ。誰が草一本生えない地になど住むものか」
システィの言葉にベルガが深く、本当に深く頷く。
アトランチスは呪われたエルフが数十万人住んでいた頃も植物の蹂躙を許さなかった驚異の都市だ。
一日で森に沈んだオルトランデルやビルヒルトとは訳が違う。
ベルガは胸を張り、叫んだ。
「ここには、ご飯がないからな!」
「威張って言うことか!」
アトランチスが今も廃都市のままな訳である。
「あぁ、巡礼のエルフはよく来るらしいぞ」
「……ここにもあるのかよ」
「『俺が何とかしてやる、の地』と『あったかご飯の人、呪いを祝福に変える決意を示す、の地』と『あったかご飯の妻、ゴブリンにえんがちょされる、の地』と……」
「……ベルガ、もういい」
「恥ずかしいえう」「む。若気の至り」「えんがちょで良かったですわ」
どこにでもあるんだな、俺らの石碑。
と、げんなりするカイである。
食への執着半端無いエルフの感謝が半端無い。
せっかくの超都市なのに扱いは観光名所。
全盛期のハーの族が色々やってるのに宝の持ち腐れだなぁ……
と、カイがシスティを見ると彼女もやっぱり同感らしく、こいつら信じられないわと首を振っていた。
しかしカイとしては観光名所で構わない。
別に超技術がなくても困らないからな……
と、カイはアトランチスのひどい扱いを未来にまるっとぶん投げる。
システィがカイズに調べさせているなら楽が出来て良いではないか。
ここで世界樹の子がどんな風であったかを聞けばそれで終わり。
今日は楽な火曜日になりそうだ。
と、カイは机で唸る戦利品カイに近寄り聞いてみた。
「で、どこまで調べたんだ?」
「『我々の決断は正しかったのか?』あたりだ」
「……全然届いてないじゃんか」
太古のエルフが世界樹の実を食べてしばらく後の文言だ。
「全部の文言を地道に記録してるんだから時間かかるんだよ!」「そういうのは優先度の高い順にやるもんだろ」「どこに優先度の高い文言があるかわからん」
「じゃあ階層別に平行して進めろよ。お前ら分割できるんだろ?」
「できん!」「なんで!?」
「システィが連絡に使えないカイズをここに送り込んだからだ」「……」
どうやらここのカイズ、アレクが初期に願った分割出来ないカイズらしい。
さすがシスティ。
カイズを使い倒す事半端無い。
「それに俺らが分割できたとして、墓所を平行して調査できるくらい分割してもゴブリンに勝てると思っているのかお前は?」
「……一発死亡だな」
「だよなカイワン」「ワン言うな」
さすが俺。使えねぇ。
自分をアテにした自分を恥じるカイである。
「まあまあプッ、カイズも頑張ってるんだからプププッ」
やかましいわ。
カイは笑いをこらえるシスティに視線で怒鳴り、墓所の入り口を見据えた。
イグドラに聞けばいいと最初は思ったが『まさに植物の王。余の子はすごいのじゃ、すごいのじゃー』と親バカ全開。
まったく困った神様である。
まあ神の視点など参考程度でアテにはならない。
住む世界が違うから。
カイはため息をつき、階段を下りはじめる。
「よし、行こう」
「お弁当は万全えう」「おやつの焼き菓子も持った」「飴もじゃらじゃらでございます」
「僕のさすカイも万全「いらん!」えーっ……」
戦利品カイの先導のもと、カイ一行は雑談しながら螺旋階段を下りていく。
エルフの墓所は巨大な円盤が何百と重なる立体構造だ。
文字通りその身を神に捧げる当時のエルフ達に遺体は存在しない。
だからエルフは生前に言葉を記して墓とした。
そして円盤が墓で満たされると円盤を下に移動させて、上層に新たな円盤を構築した。
だから墓所は下に行くほど昔のエルフの言葉となる。
可動構造を備えた立体墓所。何とも面倒な事をしたものである。
「相変わらずすごい構造だなぁ」
「当時のエルフは暇だったえうね」「む。こんなのよりご飯、絶対ご飯」「ですわ」
「呪われる前のここの食生活は、今よりもずっと豊かだったそうだぞ」
「えうっ!」「ぬぐぅ!」「ふんぬっ!」「なんだと許さん!」
同行する戦利品カイの言葉にミリーナ、ルー、メリッサ、ベルガが叫ぶ。
太古のエルフも涙目だろう。これだけの技術があっても子孫の評価は散々だ。
あぁ、でも俺も聖教国で似たような事やったな。
輝いてミスリルを走らせたようなもんか……
と、カイは三人とベルガの様子に苦笑しながら螺旋階段を下り続け、目指す階層に到達した。
「実から生まれた子が異界を顕現させ、異界の主に食われた。敵は強大だ」
階段付近の墓に書かれた誰かの言葉。
ここから数階層にわたり芽吹いた世界樹が様々な事をやらかしていた記録が残っているはずだ。
前回は階段の近くだけを調べたんだよな。
今回はもう少し広い範囲を調べてみよう。
カイ達は階段付近に拠点を作り、数人のカイズに見張りを頼んで墓所の調査を開始した。
「枝を腕のように動かし気さくに挨拶する様は人の如く……さすが世界樹。ただの樹木じゃないのね」「すごいね」
「挨拶するんかい」『植物の王じゃからのぉ』
システィの読み上げた文言にイグドラが誇らしげに答えた。
どうやら挨拶するらしい。
意思を持ち語る植物だと聞いてはいたが枝を自由に動かすとは思わなかった。
さすがは植物の王といったところだとカイは素直に感心し、妻達と他の言葉を探して回る。
言葉はすぐに見つかった。
「根を巧みに動かし大地を疾走する姿はさすが神の子。エルフの誰も追い付く事かなわず。えう」「む。奴は速い。速すぎる」「音を置き去りにして駆ける樹木……これが植物の王か。ですわ」
「走るのかよ!」『植物の王じゃから当然じゃ。余の子は大地を駆け巡り、好きな所で根を張り大きく育つのじゃ。エルフごとき追い付けぬわ』
フットワーク軽いな植物の王。
と、感心するとともに呆れるカイである。
次に見つけたのはソフィアとマオだ。
「枝の羽ばたきは竜の翼の如く」「我が神の子、大空をかける姿の見事な事よ」
「飛ぶのかよ!」『植物の王を舐めるでない!』
なにこのハイスペック樹木?
太古のエルフが難儀する訳である。
もはやバルナゥのような竜と変わらない。
次はベルガが読み上げる。
「葉を自在に飛ばし獣を仕留め食らう。生まれながらにして強者。最高の狩人」
「食うのかよ!」『植物の王じゃからのぉ!』
ああ、そういやイグドラもエルフを食ってたな……本当に植物か?
と、呆れ半端無いカイである。
カイはなんだこれと頭を抱え、ひとつの結論にたどり着いた。
「あれか。植物に擬態した昆虫みたいなもんか。ナナフシか」
『汝は本当に失礼じゃのぉ……』
まあ植物なのか昆虫なのかはこの際置いておこう。
カイ達はいくつかの階層をざっと調べ、拠点で情報交換した。
「……調べれば調べるほど変な植物よね」「そうだねシスティ」
「全くえう」「む。変態樹木きたこれ」「スペック高すぎますわ」
「まあ、聖樹様の子ですからこのくらいは」
「音速を超えるとか一度見失ったら二度と見つけられん。それはそれとして俺のスイーツを食え」
『我が神よ、あーん』「「「ぶぎょーっ!」」」『あらあら』
「まさかここまでとは……バルナゥか神頼みで何とかするしかないな」
「カイなら大丈夫。だってカイだから「やかましい」えーっ……」
「相変わらず賑やかだな。お前達は……」
腕を動かして挨拶、走る、飛ぶ、泳ぐ、狩る、食う、寝る、やんちゃ……
およそ植物とは思えない記述に一同唖然だ。
『これが植物の王じゃ!』
いやもう植物じゃねえよこれ。
植物に擬態した動物だよ。
と、親バカに呆れる皆である。
異界の顕現でエルフ達が多大な犠牲を出すのも納得だ。
この超絶能力でエルフを振り切り、大地を食らって異界を顕現させたのだろう。
異界の顕現は日が経つほどに強大かつ複雑になり、討伐は難しくなるのだ。
「こいつら、素直にイグドラに助けを求めれば良かったのに」
『……絶対的な信仰とはそういうものじゃ』
そうすれば呪われる事もなかっただろう。
カイが呆れていると、イグドラが天から呟いた。
『神のする事だから何か理由があるはず。自分達には理解出来ない大いなる思惑があるはず……そんな訳なかろう。我らとて迷い、考え、足掻いておるのじゃ』
その通りだ。
神が全能ならこんなややこしく複雑な世界になる訳がない。
異界の大規模な侵攻を招く訳もない。
もし全能なら部屋の中で作られた畑で作物を育てるが如く淡々とした世界になるだろう。楽で効率的だからだ。
神は人とは違う道を歩いているだけの、ただ強大なだけの存在なのだ。
「ま、俺らはお前らを崇めていない。困ったらぶん投げるからそのあたりは心配するな」
「さすがカイえう」「む、ぶん投げ名人きたこれ」「出来ない事はまるっと誰かにぶん投げる。さすがカイ様ですわ」
『……それで良い。余も子の為に助力は惜しまぬ』
「じゃあまずはあのバカ神を何とかしてくれ」
『ベルティアは余の飼い主じゃから無理じゃのぉ』
「すぐに手の平返したえう」「む、さすが神。ご都合理不尽半端無い」「ずるいですわ。本当にずるいですわ」
『何おぅ』
皆で談笑しがら情報をまとめ、食事と休憩をとった一行は後の調査をカイズにぶん投げ、もう一つの目的である墓所の安全確保に乗り出す事にした。
ゴブリン討伐だ。
「ついに討伐の時えう」「む。えんがちょ暴言恨みを晴らす」「あの頃は事実でしたからあながち暴言ともいえませんわ……」「えうっ」「ぬぐぅ」
えんがちょと叫ばれ逃げられたミリーナ、ルー、メリッサがカイの回りを固めて歩く。へなちょこカイは相変わらずだ。
「まだゴブリンは形跡だけだね」「そうね。マナ探知にも引っかからないし」「相当底の方にいるみたいですね」「面倒くせぇなぁ。とっとと鍋の出汁になれ」「あんた、すっかり鍋武器に慣れたのね」「おぅよ」
アレクら勇者は武器を構え、カイ達に先行している。
勇者級冒険者は異界の主を討つプロだ。ゴブリンごときに後れを取る事はない。
「カイズ、どうせならお前が偵察に行けばよかったのに」「だから俺なんぞゴブリンにかかったら瞬殺だ」「カイツースリーは勝てるんじゃないか?」「そいつらはな。俺はアレクがもっと前に願ったカイズだからムリだ」「そうなのか……」「出来ない事はぶん投げる。それがカイ・ウェルスの生きる道だろ」「さすが俺。へなちょこ半端無い」
カイとカイズも雑談しつつ、周囲のマナを観察しながら下りていく。
階段近くの墓所の記述は信仰一色。
世界樹の子が生まれ疑念が生まれる前だからだろう、イグドラの根として全てを捧げる喜びの記述ばかりだ。
三億年前の異界侵攻がそれだけ酷かったという事だろう。
それを一掃したイグドラはエルフにとって、まさに救いの神であったのだ。
「ゴブリンを見つけたえう」「ずいぶん下」「数は十人程度ですわ」
階層を下りる事数十。
ミリーナ、ルー、メリッサがゴブリンのマナを探知した。
エルフのマナ探知範囲は三百メートルほど。人間よりもはるかに遠い距離をマナによって知覚する。
隠蔽魔法による不意打ちを警戒してはいたが、まったくの杞憂だったようだ。
「ベルガ、どう思う?」「ダンジョンからあふれたゴブリンの見張りだろうな」
カイの言葉にベルガは短く答える。
イグドラの話によるとここのダンジョンはあまり深くはないらしい。
『余が根の端でぺしぺし痛めつけておったからのぉ』「討伐はしなかったのかよ」『適度に維持しておけば呪いで力が奪える故、階層が増えぬ程度にしておいた。今もその恐怖が残っているのじゃろう、階層は増えておらぬ』「うわぁ」
さすがイグドラ。エルフ同様いびりまくりである。
周囲に警戒しながら下りると向こうもこちらを見つけたらしい。
悲痛な叫び声が聞こえてきた。
『ぎゃああああ! エルフが、エルフが来たぞーっ!』
『もう病気は嫌だぁああ』『えんがちょ』『えんがちょーっ!』
……変わらんな。こいつら。
妙な懐かしさを覚えながら、カイは階段を下りていく。
螺旋階段には二丁目だの三丁目だの書かれた札がかけられており、円盤の墓の上には住居が雑然と建ち並んでいる。
墓所はゴブリン達の住み家となっているのだ。
そういえば三丁目のハッちゃんがどうのこうのと言っていたな……
カイはどうでも良い事を思い出しながら階段を下り、ゴブリンを追い詰める。
墓所の入り口はアトランチスの神殿の一ヶ所のみ。
底は行き止まり……いや、顕現した異界しかない。
円盤上に建てられた住居にゴブリンが隠れていないかどうか探りながらカイ達は慎重に墓所を下り、やがて最下層へとたどり着いた。
『エルフ!』『病気持ち!』『奴らが来たぞ!』
「うわぁ……」
カイが呻き眉をひそめる。
階段からカイが見下ろすのは、すし詰めのゴブリンである。
エルフがよほど怖いのだろう、我先に異界へ逃亡しようとしているのだ。
「もう病気にかかってるからヤッてやるとか開き直ったりはしないのね」
『ヤればヤる程呪いは重くしておるからのぅ、当然じゃ』
「うわぁ……まあ、異界の奴らだから別にいいでしょ」
『システィ様! それはあまりにご無体……』
『汝らもこの世界でさんざんヤらかしておっただろうが!』
「「「ぶーぎょっ」」」
システィの言葉に老オークが騒ぎ、イグドラが叫ぶ。
しかしシスティの声に最も反応したのはイグドラでも老オークでも子供達でもない。
ゴブリンだ。
『『『『女!』』』』
ぎろりんぬ。
血走った瞳がシスティをねめ付ける。
あー、あれか。
こいつらにとって女はエルフにとっての食みたいなもんか。
女への執着半端無いのか。
『女!』『久々の女!』『人間の女だ!』『ヤれる!』『ヤッちまえ!』
「……あぁん?」
いきり立つゴブリンにシスティが笑い、身体の周りに炎をまとう。
何かしらの防御魔法だろう、飛び散る火の粉にゴブリン達がたじろいだ。
『やべえ、近付くだけで消し炭になるぞ!』『こいつもえんがちょかよ!』『ならばこっちの女は』「はい?」『『『こいつもダメだぁーっ!』』』
システィでアウトなら竜の妻であるソフィアは当然アウト。
エルフ、システィ、そしてソフィアに絶望したゴブリン達が叫ぶ。
『女の姿をした化け物ばっかり!』『せっかく異界まで来たのに!』『くそぉ、エルフといいこの女共といい、この世界にまともな女はいないのか!』
あぁ、この反応。
うちの里も食に関してはこんなだよなと思いながら、カイはツッコミを入れる。
「まともな女って何だ?」『俺らが襲える女だよ!』「なんでお前らが襲える相手を紹介せんといかんのだ!」『だってうちの世界の女共超強いんだもん!』「知るか! もうお前ら自分の世界に帰れ!」『『『女ーっ!』』』「知るか!」
今日は火曜日。
カイはイグドラに力を注がせて、左手をゴブリンにかざす。
神の祝福に願うは……水だ。
『『『『ぎゃああああ、水だああああ』』』』
「「「ぶぎょっ!」」」
かつてエリザ世界がカイのダンジョンに仕掛けた水攻めだ。
しかし神の全力バックアップを受けたカイが繰り出す水は尽きる事なし。ゴブリン達は渦巻く水に流されて異界の門へと消えて行く。
さながら水洗便所である。
『おお何とすさまじき神の力!』
「そういえばあんたらも水攻めしたわよね」
『あの水を流したおかげで飲み水にも事欠く有様でしたわい。まあ、あの頃の我らは世界すら風前の灯火でしたがな』
「「「ぶーぎょっ」」」
ぶぎょぶぎょぶぎょえうえうえうえう……
老オークと子らが笑う。
カイは円盤の底にひたすら水を流し込み、やがて全てのゴブリンを洗い流した。
そして主も逃亡したのだろう、異界も消えていく。
ゴブリン討伐完了。
水はくれてやる。
そっちの世界で金でも食い物でも好きに願いやがれ。
「イグドラ、奴らの呪いも解いてやれ」
『そうじゃな。余も神に戻った事だしそろそろ解放してもよかろう』
ゴブリン世界とは縁切りだ。
イグドラは愉快に告げた。
『えんがちょじゃ』
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