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そのエルフさんは世界樹に呪われています。  作者: ぷぺんぱぷ
12.秘境大陸アトランチス
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12-3 やる前から悩むでない。やってから穴埋めするのじゃ!

『カイよ、準備は良いか?』

「……あぁ」


 一週間後の火曜日、アトランチス。

 空舞うマリーナの背の上で、カイはイグドラの言葉に頷いた。


 眼下に広がるアトランチスを見下ろすカイの顔は、緊張に強ばっている。

 高いところが嫌なのもあるが、ちょっとミスれば大災害。

 大噴火や大洪水、アトランチスが海の藻屑と悲惨な末路のオンパレードだ。


 そんな大惨事を祝福とか称するこいつら何なのよ……?


 と、神という奴らに首を傾げるカイである。


 しかし泣こうがわめこうが火曜日はやってくる。

 そして頼れる皆もそれほど暇ではない。

 領地を持つルーキッドやアレクをはじめとした皆にはそれぞれ役割があり、オーク達はえうの修行に忙しい。


 今日の竜戦力はマリーナだけ。

 エルフは妻達子供達。異界は老オークただ一人。

 勇者もエルフも異界も竜も激減だ。


 こういう事にしゃしゃり出てきそうなシスティも「ヘマしたら折檻ね」と言い残して他の仕事に行く始末だ。


 システィにすら逃げられる祝福って何なのよ……?


 と、さらに首を傾げるカイである。


 そんな訳で前回の反省と改善点に頭をこねくり回して一週間。

 カイはマリーナの背に聖剣『心の芋煮鍋カスタム』をくくり付けてアトランチスに乗り込んだ。


 上空の方がわかりやすい。

 そしてとんずらやりやすい。


 小さな事からこつこつと。

 これが第一の改善点。視点の変更である。


『一時間竜牛カツ丼一杯でお願いします』

「……分割払いでお願いします」


 竜牛カツ丼一杯百五十万エン。

 独身時代のカイの生活費は一ヶ月十二万エンだから貸切乗竜賃はかなり高い。


 俺も竜牛飼おうかな……

 エヴァ姉と組めば何とかなるかしら。イグドラに頼んでたし。


 と、つい考えてしまうカイである。

 しかし飼えば情が移って食べられなくなるだろう。クリスティーナのように。

 祝福という神々の自己満足のおかげでカイの財布は寒くなる一方だ。


「ひいばあちゃん、カイは普通えう。めっさ普通なへなちょこえう。竜牛カツ丼は高すぎるえう。そういえば最近竜牛食べてないえう食べたいえう」「む。それは同感」「あのとろける味は至福です……ああっ、思い出したらよだれが」

「……すまんな」

「えええうミリーナはカイの芋煮が大好きえう!」「ミミミリーナ全く同感!」「そそそうですわ。私達のカイ様への愛は竜牛肉程度ではゆゆ揺るぎませんわ!」


 そしてフォローに失敗する妻達の追い込みも半端無い。 


 俺の為に本当にすみません……


 と、心で土下座するカイである。

 やろうと思えば稼げるが、金は面倒事も引き寄せる。

 この状況で欲にかられた人間に群がられてはたまらない。


 妻達子供達マリーナの一家八人が困らず生きていければ良いカイからすれば、竜牛はとっくの昔に高嶺の花だ。

 エルネの誰かに頼めば分けてもらえるだろうが、高価なものをホイホイ要求する訳にもいかない。

 だから食べたいと思う事があってもぐっと我慢のカイである。


 まあ、それは後で考えよう……


 と、カイはアトランチスを見下ろした。


「それにしても高いえう」「む、世界樹大火災のスーパージャンプを思い出す」「あの時はピーになってしまい、大変ご迷惑をおかけしました」

「「「ぶぎょー」」」

『オークスカイダイビングー! でも落ちないーっ』

「「「ぶぎょーっ!」」」

「……聖剣のマナが切れたら落ちるからほどほどにしとけよ?」


 カイは大空に身を躍らせては戻って来る老オークをたしなめる。

 エルトラネ製の聖剣『心の芋煮鍋』は中に入れたものをよそうまで決してこぼさない。


 カイがマリーナにくくりつけたこれは柄を握らなければ出られないように改造してもらったカスタム品。マリーナが墜落しても鍋の中身は大丈夫な逸品だ。


 こんなものでも用意しないとちょっとした揺れでアホな祝福が世界を襲う。

 自分の安全は世界の安全。

 妻や子の安全よりもまず自分のはっちゃけ対策。

 今のカイは何とも切ない立場なのだ。


『では、いくぞ』「ああ」

「地面の見張りは任せるえう」「む。まかせて監視員」「どんな細かい事でも逐一報告いたしますわ」『我らが神は我にお任せくだされ』「「「ぶぎょー」」」

「頼む」


 カイの右手がズシリと重くなる。

 見下ろす地はまたもや僻地。エルフも獣も存在しない。

 祝福が流れ込む重さにカイは眉をひそめ、左手を眼下の地にかざして願う。

 アトランチスの地が祝福を受け鳴動する。

 ちまり……地が蠢いた。


「五センチ動いたえう!」「その慎重さグッド」「今の所どこにも影響ありませんわ。その調子ですカイ様!」


 観測する妻達が騒ぐ。

 これが第二の改善点。ゆっくり静かに動かすだ。


 コツは芋の皮をむくのと一緒。

 ゆっくりむけば破けず延々むけたりするものだ。

 地も同じようなもの。

 ゆっくり動かせば地殻も破けずマグマもあふれないだろうと考えたのだ。


 そう。星などでかいふかし芋。

 静かに力を入れればズルリと滑り、シワが山となるだろう。

 これがカイの考えた、安全安心の天地創造である。


『……のう、カイよ』「何だ?」

『もっとがばーっと出来ぬものか?』「無理」


 しかし、天から祝福を送るイグドラは辛辣だ。

 空にいるカイの位置から見ても地味なのだから、はるか神の世界から見下ろすイグドラには全くわからないだろう。

 カイの知った事ではなかったが。


『天地創造などがばーっとやって、マグマがずばーっと輝くものなのじゃ』

「ずばーっとって……」『必要な手入れじゃ』「……」


 天変地異も神の立場では手入れ。

 この常識の違いが厄介なのだ。


『カイよ、汝は星は何もせずとも有り続けると思うてはおらぬか?』

「違うのか?」

『星とて永遠に不変ではない。めぐるほどに歪みは溜まり、吐かねば破局を招くものなのじゃ。汝も道具の泥を洗い、油をさし、時には部品を入れ替えるじゃろ。星も同じ事を行っているのじゃよ』

「なら、ちまちま吐いておけば俺らは困らないのに」

『動かせば歪む。それは手入れも変わらぬ。ある程度溜めてからやらぬと無意味どころか悪影響を及ぼすのじゃ。汝も伸びた髪を毎日切るなどせぬじゃろう?』

「……まあ、ヒゲくらいだな」


 行動とは労力と結果のバランスだ。

 結果が勝れば行動し、労力が勝れば行動しない。そんなものなのだ。


『じゃからのぅカイ、汝が頭をこねくり回してちまちまやってもどこかは必ず歪むもの。ほれ、地が歪んでおるわ』「え?」


 カイが慌てて地を見回す。


「見えないえうよ?」「む。どこにもない」「何も変わらないのですが……」

『汝らの視界の外じゃ、外。マリーナよ、より高く飛んでみよ』

『はい』


 マリーナが羽ばたき、より高い空へと昇る。

 カイ達の視界に次第に姿を現す、煌々と輝く赤のライン。 

 地の裂け目からあふれたマグマだ。


「えうっ」「むむっ」「あんな遠くに……地の向こうではわかりませんわ」

『汝ら、地は星を包んでおるのじゃぞ。どこかを動かせばどこかが裂けるに決まっておろうが。ちまちまやろうがずばーっとやろうが裂けるものは裂ける。穴埋めの手間が増えるだけじゃよ』

「じゃあどうすればいいんだよ……」


 呆然とカイが聞く。

 イグドラは自信満々に告げた。


『やる前から悩むでない!』「えーっ」

『やってから穴埋めするのじゃ!』「ええーっ……」


 皆、唖然である。

 しかしイグドラはぶっちゃけ続けた。


『考え悩んでもダメなものはダメ。穴埋めで済むなら穴埋めで良いではないか』

「超無責任えう」「む。それで済むなら役人いらない」「そうですわ!」

『そういう文句はとんずら込みで計画を練る汝らの夫に言わんかい!』

「えう!」「ぬぐ!」「ふんぬっ!」


 すみません。とんずら考えててすみません。


 妻達に心で土下座のカイである。


『カイよ、汝はアトランチスの未来を握っておるのじゃぞ。今ではなくはるかな未来を見よ。汝の子、そして孫が星のめぐりで実りを得られる地をアトランチスに作れるかどうかは汝の祝福の使い方ひとつにかかっておるのじゃ』

「お前らはやらないのか?」『カイにぶん投げた故、やらぬ!』「えぇーっ……」

『どうせ何をやろうが歪むのじゃ。そしてベルティアは何を言おうが祝福するのじゃ。はっちゃけよ、はっちゃけるのじゃカイ。そしてはっちゃけてから穴埋めするのじゃ!』

「しかしなぁ……」


 それでいいのかよ……?


 と、イグドラの言葉に悩むカイである。

 その返事はイグドラではなく、鍋を転がる者から返された。


「「「ぶぎょーっ!」」」


 イリーナ、ムー、カインである。


「お、おいっ…」

「ぶーぎょっ!」「ぶぎょーっ!」「ぶぎょーっ!」


 ころころころ、ぽすんっ!

 ころころころころころ、ぽすんっ!


 転がってはカイにぶつかり、また転がってはカイにぶつかり……

 子らはカイに突進を繰り返す。


 そんな有様に老オークが叫んだ。


『おぉ! 我らが神が、芋煮三神が嘆いておられます!』

「「「ぶーぎょっ!」」」


 そして子らも叫ぶ。

 その表情はいつもカイに見せる笑顔ではなく怒り顔だ。


「イリーナが怒ってるえう」「ムーも」「カイン、どうしたのですかカイン」

「「「ぶぎょーっ!」」」「おまえら……」「「「ぶーぎょっ!」」」


 伸ばしたカイの手を三人の子が転がり避ける。

 そのままころころと転がった子らは老オークの身体を転がり登る。

 老オークが静かにカイに語りかけた。


『カイ様、我らの世界の戦いを憶えておられますか?』

「……ああ」


 忘れる訳もない。


『我らが神は世界を救う為に我らの世界で芋作りまくり、芋煮まくり、異界ごと天地を吹き飛ばしまくりでございました。我らの地は呆れる程変貌いたしましたが、我らはしっかり生きております』

「「「ぶぎょー」」」


 老オークの言う神はエリザではない。

 イリーナ、ムー、カイン。

 カイの子となるために異界で戦い抜いた三人の赤子の事だ。


『我ら、後先など考えずただ生きる為に戦いました。世界を取り戻す事など誰もした事が無かったからでございます』

「「「ぶぎょ」」」

『そして必死に戦い世界を取り戻しました。あれこそが我らの天地創造。我らが神と我らは世界を壊し、新たな世界を手にしたのでございます』

「「「ぶぎょーっ!」」」

『それなのにカイ様の今の情けなさは何でございますか! やった事も無い事にぐだぐだうじうじ。我らが神はそんなカイ様の子に生まれたかったのではございませぬぞ!』

「「「ぶーぎょっ!」」」

『子らに学びなされ。後の事は後で考えれば良いのです。そして火曜日のカイ様にはそれが出来るのです。その御力でアトランチスを導きなさいませ。貴方の子である事を望んだ我らが神のように!』

「……そうだったな」


 経験から学び、そして考え悩む。

 それが大人というものだ。


 だが、経験とかけ離れた事柄は考え悩んでも仕方が無い。

 成功も失敗もした事が無いからだ。


 カイは人だ。神ではない。

 だから神の所業など知る由も無い。悩むだけ無駄なのだ。


「お前ら……ふがいないパーパで、すまん」

「「「……ぶぎょ」」」


 カイが子らに土下座する。

 子らは老オークを転がり下るとカイの回りをころころ転がり、カイの身体に転がり登った。


「「「ぶぎょーっ」」」

「ありがとな」


 イリーナ、ムー、カインが笑う。

 カイも笑い、立ち上がった。


 我が子に恥ずかしい姿は見せられない。

 カイの子を望んで戦い生まれた子ならなおさらだ。失望させるような親であってはならないのだ。


「……やるか」


 カイは頭を切り替える。

 人の経験で神の所業を考えたのが間違いなのだ。


 無難は捨てろ!

 やってから穴埋めするのだカイ・ウェルス!


「そうか。整地する場所を祝福で隔てればいいのか」


 ズゴン。

 カイがかざす手の先に輝く壁が現れる。

 その有様はまさに聖域『心の芋煮鍋』。

 カイに注がれる祝福が世界を隔絶させたのだ。


「カイが本気になったえう!」「華麗なやけっぱち発動!」「カイ様のやりたい放題が今、始まるのですね!」『あらあら』

「「「ぶぎょーっ」」」『そうです! それで良いのですカイ様!』


 皆がカイの様に笑う。

 後の世に神秘の壁と呼ばれる断崖絶壁の誕生の瞬間である。


 こんな調子でカイが毎週火曜にホイホイ増やした断崖絶壁に、はるか未来の学者達は頭を抱える事になる。

 カイの上達にともない形を変えるバージョンの壁であった。


 が、カイはそんな事知ったこっちゃない。

 後先考えていたらこんな事やっていられないからだ。


「マリーナ、あふれた噴煙を食ってくれ」

『まずいものを食べる度に竜牛ステーキを請求いたします』

「噴煙を竜牛味にするからそれで我慢してくれ」

『仕方ないですね。それで手を打ちましょう』


 めっさくだらない祝福の使い方である。

 しかしマリーナからすればそれで十分。竜は何でも食べられるからだ。


『もっしゃもっしゃうまい。噴煙まじうまいもっしゃもっしゃ』


 噴煙(竜牛風味)にマリーナまっしぐら。

 ブレス吹きまくり、食いまくり、舌鼓打ちまくりである。


『見事な竜牛味でした。おかわり』

「待ってろ」


 ぐぉん!

 祝福が炸裂し、ムクムクと地が隆起する。


 カイが作ろうとしているのは水の巡りだ。

 海から生まれた雲が風に乗り、地の奥まで水を運んで雨を降らせる。


 海、平地、そして山。

 その距離感は重要だ。

 近すぎれば便利な土地は狭くなり、遠すぎれば水はなかなか届かない。


 カイは地を海に沈め、海を陸に変え、山を動かし雲を作る。

 雨を降らせ、山を作り、雨を降らせ、海を動かし、地をならし、雨を降らせ……

 カイは淡々と、しかし派手に地に祝福を授けて回る。

 やがてこの地に水は巡り、生命を富ませるだろう。

 しかし今は阿鼻叫喚。マグマあふれる地獄である。


「あっちの地が裂けたえう!」「こっちも」「向こうの山が砕けましたわ!」

「マリーナ!」

『噴火もっしゃもっしゃ岩もっしゃもっしゃ砂もっしゃもっしゃ』

「「「ぶぎょーっ!」」」『おお、我らが神も喜んでおられます!』


 隔絶された地はカイの箱庭。

 そして幼竜マリーナの餌場。

 そしてそして子らの喜ぶパーパの仕事場だ。


『そうじゃ。そのはっちゃけが重要なのじゃ』

「ぶん投げたお前らが言うな」『のじゃっ!』


 ついでにツッコミも忘れない。

 カイは火曜日の深夜まで地をこねくり回し続け、やがて水の巡る地を作り上げた。

 断崖絶壁だらけ。落差二千メートル以上の滝だらけ。崩れまくりの山だらけ。

 何とも酷い土地である。


 しかしカイは気にしない。

 いや、気にするのはもうやめた。


「まあ、後で穴埋めすればいいか」


 これである。


「続きは来週、来週えうね」「来週をお楽しみに」「放っておいても年月がうまーく形を整えてくれますわ」『何億年後の話ですかそれは』

「「「ぶーぎょっ!」」」『そうですな。気にしない気にしない』


 わははははははは……


 カイも皆もこれである。

 大人は見るも無惨な成果を誇り、子らは喜び転がり回る。


 この無責任さこそが神。

 この適当さこそが神。

 長い年月と超絶ハイパワーでごり押しているだけなのであった……!






 二日後。

 カイは自宅で妻達に回復魔法をかけていた。

 火山灰(竜牛風味)を芋煮にかけてうまいまじうまいと食べるマリーナの姿に妻達も食べると芋煮に火山灰をかけ、うまい竜牛まじうまいとしこたま食べて腹をこわしたのだ。


「えうぅう……腹痛とか呪われてた頃以来えう」「メリッサ回復かもーん」「わ、私も自分だけで手一杯でございます。師匠がお見えになるまでご自分の回復で耐えて下さいませ……」

「……すまんな」

「えううぅ」「ぬぐぅう」「ふんぬぅぅ」


 味は竜牛でも火山灰は火山灰。

 人やエルフが食べるものでは断じてない。


『まったく、ヤワな腹ですねぇ』

「いやこれが普通だから」

『私の血でも飲みますか?』

「発狂するえう」「死ぬ」「こ、これ以上私達を追い詰めるのですか……」


 まあ、ソフィアが来ればどうとでもなる事。

 ベッドで唸る妻達に苦笑するカイである。


「カイさんこんにちは。ミリーナいますかー……ミリーナどうしたの?」

「実はな……」


 そんな中、現れたのがミリーナの幼なじみのスピーだ。

 結婚式のお礼にと現れた彼女はカイ一家の惨状を目の当たりにして定期的に竜牛肉を差し入れる事を約束してくれた。


「火山灰を食べるほど、竜牛に飢えていたなんて……」

「違うえう」「いわれなき誤解」「そうですわ。ただの火山灰ではありません。竜牛味の火山灰ですわ」

「火山灰を竜牛味と思ってしまうほど、竜牛に飢えていたなんて!」

「違うえう!」「ひどすぎる誤解!」「そうですわ! 本当に竜牛味の火山灰なのですわ!」

「わかりました! エヴァンジェリンさんの祝福のおかげで竜牛の飼育も業務拡大順風満帆。私がカイさんに竜牛肉を差し入れましょう!」

「えう!」「ぬぐぅ!」「ふんぬっ!」

「いや……高いだろ?」

「もちろん、しっかり対価はいただきます」

「へ? うち貧乏だぞ?」


 さすがは竜牛牧場経営者の妻である。

 しかしタダで、という訳ではない。


 対価はカイの名だ。


 あったかご飯の人御用達。


 そう銘打たれた竜牛肉は魔除けとして王侯貴族に珍重され、重要な催しでは必ず食べる破魔の肉となるのである。


 名前ひとつで大儲け。


 こういう事に気付く人が成功するんだなぁ……


 と、カイは感心するのであった。

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