01.剣鬼様、呼び出しを受ける
初投稿の稚作です。
かなり更新頻度は遅いと思います。
せめて誤字脱字には気を付けたい。
コンコン。
「入るぞ」
ノックした後、そう一言告げて俺こと神崎神谷はその部屋に入室した。
ここは死神局本局、そのトップたる本局長がいる局長室だ。
俺の前には左目に眼帯をした長身の男。
部下達は死ぬほど忙しいということを知っているくせにのんきにコーヒーなんぞ飲んでいる本局長こと千黒翼の姿。
「返事してから入れよ」
「大至急って言ったのはお前だろ?」
翼が軽く咎めてくるが俺は気にしない。
一応こいつは俺の唯一の上司にあたるが、俺とこいつの関係はおよそ5年くらいになるか。
20の時に出会ってから喧嘩して喧嘩して喧嘩して……あれ、喧嘩しかしてねえな?
まあいいや、とにかく立場なんぞお互い気にしない仲ってことだ。
もちろん弁えるべき時には弁えるが。
「これを見てくれ」
コーヒーを傍に置いた翼がファイルを手渡してくる。
俺はそれを受け取りパラパラと確認。
その内容に絶句……はしなかったが思わず目を細めてしまう。
「ツッコミ所しかねーんだけど……」
「残念ながら全て事実だ。文句なら真理さんに言ってくれ」
真理さんとは、翼の姉の旦那さん、つまり翼の義兄だ。
職業はヒモ、又は神か。
やる時はやる人だが基本的にはトラブルメーカーなのが困る。
話を戻そう。
書類に書かれていた内容は要約するとこうだ。
だいぶ前にあった戦闘の際、俺の目の前にいる本局長様が全力を出し過ぎたせいで世界の壁が崩壊、真理さんが大慌てで修復するという珍事が起きた。
しかしこの時、本人は修復したつもりがほんの僅かな〝やり残し〟があったらしい。つまり小さな穴だな。
真理さんは今頃になってその穴に気付き今度こそ完全に修復。しかしよく見てみると外から侵入者の入った痕跡が。
これはこれはさあ大変。普段は真理さんのような世界の管理者やシステムが世界そのものを隠しているおかげで無事だが、世界の外側を移動できるような化け物といったら世界1つを見つけた途端に丸々バクン!と丸呑みにできるような怪物だらけ。
まあ今回はわざわざ世界の中に侵入してくるような小物だったが、それでも世界の外からやってきた怪物なのは間違いない。
そういった怪物の主食は基本的に世界そのものとか世界一つ消滅できるほどのエネルギーとかその世界に住む全生命とかそういったスケールの物だ。
放っておいたら間違いなく世界が滅ぶ。
真理さんは全身から滝のような冷や汗を流して探し回った結果ようやく発見、確実に仕留められるよう翼が【最強】の証名を与えられるまで実質最強と言われていた名奈詩音さんを派遣。どうして【最強】本人に行かせなかったかといえば、世界の壁を壊した前科があるからだ。
名奈さんなら間違いないだろうと安堵した矢先『あと一歩で失敗しちゃった☆』と連絡が。
真理さんが再び血眼になって探し尽くした結果、今度は異世界へ通じる門を発見。
侵入者はどうやらそこから異世界に逃げたらしいとのことだった。
ちなみに《証名》とは世界から個人に与えられる称号のようなものである。
大昔に世界のシステムに誰かが(まず間違いなく面白半分に)組み込んだものであり、真理さんにも干渉することができないほど深い所に組み込まれているらしい。
名奈詩音さんについては今度でいいだろう。
俺は再び珈琲に口をつける翼に向かって言う。
「で、俺に異世界に行って始末して来いと?」
「ズズ……そそ、単独の戦闘力で問題なく、ちょうど今手が空いてて、なにより超常的な《勘》で隠密・生存特化と思われる侵入者を唯一追跡できる。お前しか居ないんだよ」
「隠密はともかく生存特化? 斬るしか出来ねえ俺が仕留め切れるのかよ、名奈さんがしくじったほどの相手だろ?」
「その名奈さんからの推薦だよ。なんでも『今の神崎くんなら問題なく斬り殺せる、私の万能を持ってしても逃げられたアレが最も絶望する相手だよ、相性的にもね』とのことだ。なんならこっちの世界に追い立てるだけでもいい、門の前で名奈さんが『次はない』って準備してたから」
「お〜怖っ。まあそれはともかく、いいぜ、最初から断るつもりなんかねえよ。仕事であり命令だろ、ならやるだけだ」
「ん」
翼が短く返事をして渡してきた鍵は世界の門を隠すように建てられた建物、その扉の鍵だった。