ようこそ非日常へ
エレベーターに乗った俺は、天王寺さんに連れられて何階かに連れて行かれているところだ。
何階か、という曖昧な表現なのはエレベーターに乗った天王寺さんはボタンを押していない。
ボタンが付いているプレートの一番下についている鍵穴に、懐から出した鍵を挿してエレベーターが動き始めたのだ。
にしても長い気がする。
このビルは外見が5階ぐらいしかなかったが明らかに長い。いったいどこのいってるのかさっぱりわからない。
勇気を出して聞こうと思ってもコミ障の俺が自分から話しかけることも出来ず、連れられるがままエレベーターでどこかに向かっている。
「長くてごめんね、一応地下20階に向かってるとこだから時間かかるんだよね」
地下20階?!
いやビルの下にそんなに階数あったの?!
「ち、地下?」
「そうそう、ほら、高すぎるビルだと目立つし広さとか制限されちゃうからね。」
さすが政府直轄、やることのスケールがデカイ。
いや、そんな問題ではないがとりあえず本格的にさっきの話しが現実味を帯びてきた。
でもまだ超能力とかは見てないし、なんかのアブナイ会社ってのも考えられる。もしかしたら俺モルモットにされたりする可能性も、あ、やばい、俺死ぬかも。
そんなこと考えてたらチーンと到着を知らせる音が鳴りゆっくりとエレベーターのドアが開いていく。
俺は目の前の光景に目を疑い、そして一瞬で理解した。
空を歩く人、水を出してそれに乗りふよふよ浮いている人、動物に変身している人。
あ、これあれだ、ラノベ展開だ。
さっきの話し本当だわ。
そこはさっきまでいたビルとは桁違いなほど広い。エレベーター出てすぐが研究施設になっているようで、色んな超能力者?が機械を身体に着けて計測なのかなんなのかよくわからないが能力を使っている。
「ここは超能力者の計測と能力解析、身体の管理などを行っているラボだよ」
すっかり隣にいるのを忘れていた天王寺さんの言葉に驚き「あ、そ、そうなんですか」とオドオド返事をした。
すると天王寺さんは「こっちだよ」と奥へと足を進める。向かってる途中、すれ違う能力者?の人たちの力に只只唖然としていた。
「あ、あれが小百合の弟くん?」
「へー」
「やっぱ強いのかなぁ」
など周りからジロジロ見られコソコソ話されてているようだが、怖くて見返せません。むしろガクブルです。
など冷や汗で顔を滝にしながら着いた場所は[セブンス・ラボ]と書かれた部屋だった。
「ここに我社随一の超人がいるから、挨拶してアドバイスでも貰うといいよ。」
天王寺さんは「えっと…」と俺が言葉を発する暇も与えずに「失礼しまーす」と陽気にドアを空けた。
と、同時にすごい勢いで天王寺さんの顔に拳がめり込み数メートル後ろに吹っ飛んで行った。
「?!?!?!?」
「天王寺!アンタまた私のお菓子取り上げたわね!」
どこかで聞き覚えのある声、いや、間違いなく覚えのある声が拳を天王寺さんにめり込ませた人物の口から発せられる。
「あら、カイト、早かったのね」
「あ、あ、姉貴!?」