丘の上の魔女 6
夜の気配が濃くなる頃、私は独り丘に残された。逃げようと思えば、難なく逃げられる。しかしそうしないのは、誰よりも私自身、
――私など居ない方が良い。
と、思っているからだ。
私が居る限り、ランクは<レギーネ>に縛られ囚われたまま、苦しむだろう。サーキーも私が居ると嫌な事をいつまでも忘れられないに違いない。ただ、こんな事になるのなら、クウ、ノーラン、ルノと関わりを持ったりしなかった。
3人には本当に申し訳ない。私と関わった事で、3人にも罰がくだるかもしれない。
私は、恐らく明日を生きられないだろう。この魂で何とか3人を、ランクを守らなくてはいけない。
ここからだと、家が見えない。ランクはまだ、地下に籠っているのだろうか?
私が帰っていない事にも気づかず、私の改良に血眼になっているのだろう。今が何時なのか分からないが、夕飯を食べず深夜まで籠っている事もざらにあった。
どうか気づいてほしいと願うのは、愚かな事。血眼になって探してほしいと切願するのは、馬鹿げている。
だってランクが愛しているのは、私では無いのだから。
ランクに愛されないのなら、私は魂なんて要らない。ランクに愛されないのなら、私はどうなっても構わない。
そんな人生に、意味など無いのだから。
やがて陽は完全に沈み、漆黒に支配される。町に明かりがポツポツと灯り、教会の十字架が薄く浮かび上がる。
ふと、空を見てみると月は無い。今晩は朔のようだ。魔女の死になんて相応しいのだろうか。
風が吹き木々達が大雨にも勝る音を出した。瞬間、町の明かりが蠢く。よく見れば、あれは町の明かりでは無い。
大勢の町民達が掲げる松明の明かりだ。
町民達は揺らめく炎と共に、丘を登ってくる。筆頭は、やはりサーキーだった。




