丘の上の魔女 4
丘に着いたらランクが居て<レギーネ>にしたように私も攫ってほしい。なんて妄想をしているうちに丘へと着いてしまう。あとはもう丘を登るだけだ。
先頭のサーキーがクウに指示をすると、愁いを帯びた瞳で「レギーネさんの処刑は夜です」と告げ、こうも続けた。
「およそ三時間後、用意ができ次第決行するそうなのでもっと早まるかもしれません。それまで、丘の頂上の木に縛り付けます」
「分かった」
「丘の上まであたしとノーランが行きます。お婆ちゃん達はここで待機するので。……ノーラン行くよ」
クウの背に隠れるように居たノーランは、クウよりも愁いを帯びている。しっかり者のノーランのこんな姿なんて見たくなかったが、年頃の少女なのだから仕方ないだろう。
3人で丘を登っていく。緩やかな傾斜にも関わらずクウとノーランの足取りは重い。私の後にふたりが着いて来ているようだ。私よりもふたりの方がよっぽど処刑前の顔をしている。
<レギーネ>なら、ふたりを励ますのだろう。しかし、処刑される私に励まされても不快なだけに違いない。
「怖く……ないんですか」
口を開いたのは、ノーランだ。
怖いという感情は無い。恐らく死の直前<レギーネ>は恐怖を感じていなかったために私に恐怖が受け継がれなかったのだろう。代わりに、強い後悔や悲しみを受け継いでいる。そもそも、私に受け継がれているのは<レギーネの感情と記憶>だけ。感情があっても私が感じているものでは無い。
少し考えてから私は言う。
「怖いというより悲しいかな」
「そうですよね、悲しいですよね。私、何度もお婆ちゃんに説明されたけど分からないんです。どうして、こんな事になっているのか……」
「年端もいかないふたりに理解を乞う方がおかしい。分からくていいんだよ」
「で、でも、私今からあなたに酷い事をするんですよ⁉ 訳も分からずに酷い事なんてしたくないんです!」
ノーランの悲痛な叫びが丘に響く。かなり不安定だ。それに比べ、表情は暗いがクウはとても落ち着いている。
「ノーラン、お婆ちゃんから話すなって言われているでしょ。お婆ちゃんに聞こえるよ」
「あんたおかしいよ。今から私達、この人縛るんだよ? それもこんなに寒いなか木に! どうしてそんなに落ち着いていられるの?」
「あんたが取り乱しているからあたしは落ち着いていられるんだよ。もしあたしまで取り乱したら、あんた余計パニックになるじゃん」
クウの声は微かに震えている。妹が自分の為に懸命に耐えているのを、ノーランは初めて知ったに違いない。
ノーランは大きく深呼吸をし、ひとまず落ち着いたように見える。




