丘の上の魔女 3
「ルノ。魔女と何を話しているの?」
サーキーだ。随分先頭居たはずのサーキーが、私達の所まで戻って来たようだ。
話し声が大きすぎたらしい。
「魔女って分かるまでは、友人やったもんですから。すみません」
「丘まであと少しよ。逃げないようにちゃんと見張ってなさい。ノーラン」
「はい」
ノーランはルノに一礼すると、サーキーの車椅子を押してまた先頭に戻る。クウは申し訳なさそうな顔をしている。
何度か振り返ったのは、声の大きさを示す為だったのだろうか。それを確かめるのには、遠すぎた。
サーキーから咎められ、落ち込んでいるように思ったルノだったが、サーキーが先頭に戻った瞬間、また語り出した。
ルノが単なるお喋りなのか、私に伝えたい事があるのか。私にはじっと聞く事しか出来ない。
「まぁ、そんなこんなで魔女レギーネの存在は消えたものやとサーキーさんは思ったらしい。でも残った心のシコリは次第に大きくなっていった。……大きくなりすぎてしまったシコリは、殺意へと変わってしまったんやとウチは思ってる」
「そして今日、って事か」
「せやね。そして今日、サーキーさんとレギーネは再会し、サーキーさんの殺意が爆発って所やね。クウとノーランが可哀想。巻き込んでしまって、申し訳ないって思うよ」
ルノは、そこまで話すと俯いてしまった。漏れ始めた微かな嗚咽が泣いている事を教えてくれた。
流す涙がある事が心底羨ましい。私には何も無い。涙も、心臓も、愛すら無い。生きてすらいない。私はレギーネでもリオンでも無い。私は何? 何の為にここにいるのだろう?
静かな問いは誰にも届かず、答えてはくれない。私の中の<レギーネ>ですら答えてはくれなかった。




