丘の上の魔女 2
太陽は教会の十字架よりも南にある。晴天の夕刻前、サーキーとノーラン、クウ、私とルノの順で丘へと向かっていた。
あの後、クウとノーランに簡単ながらもサーキーから説明があった。60年前に居た〈レギーネ〉という魔女の存在と、女達人との戦い、とどめを刺したのはサーキーで、当時貰った音の出ない銃が凶器である事。そして、魔女狩りの事。
ふたりはサーキーの話を真剣に聞きいていた。
私はどこか他人事で、あぁ、そんな事もあったな、等と思っていた。
「サーキーさんな、ずっと後悔してたんよ」
後ろのルノが言った。
「懺悔してたんは、人の道を外れた事じゃない。『あの時、逃げてしまった。留まっていればあの子を供養出来たのに』って、そればかりやった」
ルノがあまりにも独り言のように呟くから、聞き逃さないように必死になる。
「供養?」
「魔女の死体は朝、戻ってみたら無くなっとったらしい。だから、英雄の墓はあっても、魔女の墓は作れなかった」
「リオ……、レギーネは、どうしてあそこまでサーキーさんが荒んだのか分かる?」
「私には魂はあれど、心があるのか分からない。人の気持ちは到底分かり得ない」
「分かり得ない、って、随分古めかしい言い方やね」
他の3人にバレないように、ルノはクスクスと肩を揺らす。
「サーキーさんは、色々調べたらしいよ。田舎町やけど町長の妻やからね、ツテはあったみたい。それで、魔女が亡くなってすぐに建った研究所を見つけたらしい」
ルノは言葉を選びながら慎重に話していく。
何故今、そんな話をするのか分からなかったが、聞かなければいけないように思えてならなかった。
「そこには異端の科学者が数人居て、大きい器具がいっぱいあるらしい。サーキーさんは最大限に権力を使ったけど中に入るのは簡単じゃなかった。でもまぁ何とか入れた」
まるでその場に居たかのような、臨場感あふれる語り口だ。サーキーの話を何度も聞いたのだろうか。
クウは何度か振り返ったけど、ルノは気がついてはいないようだ。
ノーランとサーキーは先頭に歩いている。その雰囲気はお通夜より重い。
「奥に奥に進むと、扉があった。開けられなかったけど、扉の隙間から見えたのは、透明な棺みたいなのに入った人影。ゾッとして逃げ帰ったらしいよ。あれは間違いなく魔女レギーネやったって」
そこまで話すと、ルノはふぅっと息を吐いた。
透明な棺――それは、遺体が腐敗するのを防ぐためのものだろう。私には、どうして防ぐのか分からないが、ランクなら分かるに違いない。
サーキーが見つけてしまった研究所は、ランクのものだろう。見つかってしまったランクは、見つかっている事を知っていたのだろうか?
「それから何年か経ったある日、町のはずれで大規模な火事があった。野次馬に混じって行ってみると、サーキーさんの話にあった研究所が――」




