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丘の向こうの魔女  作者: ひぐらしあや
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丘の向こうの教会 5


「おーい、ルノー?」


 教会まで来たが、ルノの姿が見えずにいた。ほぼ一本道だったので、入れ違いは有り得ないだろう。かといってこのまま帰るのはルノに悪い。どうすればいいのか途方に暮れそうな頃、教会の扉が音をたてながら開く。


「あれ? 先客だ、珍しい!」


「あぁ、先日はどうも」


 教会に入って来たのは、クウとノーラン、それから――。


「ふたりの知り合いなの? もっと近くで顔を見せてちょうだい」


 ノーランが押す、車椅子に乗った老女がにこやかに言った途端、頭の中に残る〈レギーネ〉の記憶が怒涛の勢いで流れ込んでくる。


 めまぐるしく景色がフラッシュのように浮かんでは消え、また浮かんでは消えていく。その景色には色が薄く、全体的にセピア色をし、私はこれが〈レギーネ〉の記憶だと直感的に思った。

 気がつけば、私は倒れていた。顔に当たるチクチクとした芝生の感覚がそう教えてくれる。

 なんだか、全身が気だるい。感じた事のない痛みと熱で頭がおかしくなりそうだ。

 目を開けると、どうも夜らしい。視界はぼやけ、何となく赤いような気がする。辺りは暗く、そばには奴の亡骸と、遠くにテントと思しきものが見えた。

 これは、一度見た事がある景色。いや、〈レギーネ〉の死の直前の〈記憶〉。

 何がなんだか、訳が分からない。必死に思考を凝らそうとするものの、全く頭が回らない。


――ガサッ。


 何か聞こえた。今、確かに物音が聞こえた、何かがいる。

 正体を見ようとするが、体は全く動かず、視線だけをぎょろぎょろと、動かすと――いた!

 木の影に、銃を持ったサーキーの姿があった。その顔は、ひどく怯え、瞳孔も口も開いている。

 手に持っている物に気がつき、叫び声を上げながら、丘を掛けて行った。他の〈記憶〉とは違うサーキーの様子に、ハッとする。

 そうか、奴を殺したのはサーキーだったのか。


 結論に至った瞬間、また景色が歪み、動き出す。さっきと同じ景色達が鮮やかな色を取り戻している。

 一瞬、一瞬が輝き、景色に人物が浮かび出す。若かりしランク、サーキー、そして、最愛の娘。


――レギーネ、名前は決めたか?


――決めたよ。いい名前を思いついたからね。


――いい名前かぁ、聞かせてよ。


――ふふ、しょうがないなぁ。この子の名前はリオン! レギーネとランクをくっつけた名前だよ。まさに愛の結晶だね。


――あははは、それは確かにいい名前だ。



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