丘の向こうの教会 2
「……そんなに像が気に入ったんですか? 小さいのならあるんですけど、持って帰られます?」
「いいのか? それなら見せてほしい」
「見せるも何も、そこに飾ってある分です」
祭壇には、確かにそっくりな置物があった。
「あの感じの置物は、まだ倉庫にいっぱいあるんです。ここの町の人達は皆、向こうに行っちゃうから引き取り手が居なくて困っているんですよね」
向こう、とは、隣の町の事だろう。ここよりも栄えている町。歩いて行けるのだから、客がそっちに流れて商売人は皆困っているだろう。
教会はミサのたびに恩礼を貰い、その資金を運営の足しにしているものだから。
「ここは町からの補助が最低限で。……良くはしてくださるんですけどね、やっぱりきついです」
恐らく、町事態の経済状況があまり良くないのだろう。
可哀想だが、私にはどうする事も出来ない。
「なら、余っている置物を質屋に売ればいいじゃないか」
「ははは、確かにその方が効率とかいいんですけどね。でも、なんか罰が当たりそうじゃないですか。像には命が宿ると言います。それに仮にも教会に住んでいますし、神への冒涜行為は、したくないです」
「像には命が宿る?」
「ええ、ウチは思うんです。人が丹精込めて作った物には、その人の魂が込められてるんじゃないかって。魂は命そのものだと思うんです。だから、作られた物にも命って宿るんじゃないかなって」
「……」
「やだ、ごめんなさい。ただの妄想ですから、気にしないでくださいね。えへへ……」
ルノの理論は一理あると思う。私はずっと、〈レギーネ〉の遺骨で造られているから、彼女の〈記憶〉や〈感情〉が私に入ってくるのだと思っていた。
それによって、次第に私という人格が形成されたと疑わなかった。
しかし、ルノの理論なら、事実は変わってくるのではないだろうか。