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丘の向こうの魔女  作者: ひぐらしあや
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丘の向こうの教会


 ちょうど、昼間にひと休みした所まで歩いて来た。

 ボーッと遠くを見つめる。すると、一軒だけ明かりがついていた。その明かりで十字架がぼんやりと浮かんでいるのが確認された。

 あそこはルノの教会。確かに『夜中でも構いませんからね』と言われたものの、本当に行ってもいいのだろうか。多くの場合は社交辞令だろうが――追い返されれば帰ればいいだけの話だ。

 悩んでも仕方が無いから、行ってみる事にした。


 数十分歩くと、とうとう教会の門まで来てしまった。何故か門は開いており、はやり明かりが漏れている。

 ものは試しと思い、敷地内に入り大きな扉をコンコンと鳴らした。

 すると、すぐに扉が開かれた。


「来てくれて嬉しいです」


 その微笑みは、まるで私が訪ねてくるのを知っていたかのようで薄気味悪かった。

 どうぞ、と、誘われるままに教会に入る。初めての場所で、少し緊張する。

 天井は高く、横に長い椅子が真ん中の通路を挟みふたつ並んでいる。それが五列ほどある。

 そして、入って真っ先に目に入るのが、ステンドガラスと十字架を背負う像だった。

 像の前には祭壇があり、フルーツや天使の置物、パンなどが並べられている。


「凄い、想像していたよりもずっと立派だ……」


「ありがとうございます。適当に座っててください。お茶を持ってきますね」


「いや、いらない。それよりも、少し話をしようよ」


「うぅん……そうですね。それでは、名前を教えてください」


 ルノは短く唸った後、そう切り出した。そういえば、まだ名乗ってもいなかった。

 私は1番前の、祭壇が良く見える場所に座り、名乗った。


「……私はレオ……いや、リオン」


「レオ=リオン?」


「リオン=ベッタニー」


 口からでまかせだが、この瞬間から私は〈レギーネ〉ではなくリオンになった。ルノとの時間は〈レギーネ〉ではなく、私の意志だから。

 ずっと自分を押し殺して来た。少しくらい、私自身でいる時間があっても、神は咎めはしないだろう。

 そう思えるのは、ここが優しい光で満ちているからかもしれない。

 像を見つめながら、ルノとの会話も進めていく。


「ではリオン、この寒い中、どうしてコートひとつ羽織ってないんです?」


「私には感覚器官がない。寒さも暑さも感じない」


「麻痺しているとか?」


「生まれつき」


 正確には〈造られつき〉だ。技術がそこまで進歩していないらしい。それでも〈記憶〉があるから、何となく感じる気がする。

 もちろん、本当に気がするだけだ。


「へぇ、いいなぁ。ウチ、寒さも暑さも嫌いなんですよ。参ってしまいます」


 そういえば、ランクも暑いやら寒いやら騒いでいたな。最近は専ら、私に謝ったり怒鳴ったりするばかりだけど。


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