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枝葉  作者: 狐孫
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赤い目-2

 次の日から、美菜恵と話すことが多くなった。

雑談ばかりで、特に変な話は無い。

何処のケーキ屋が美味しいとかあそこのカフェのコーヒーは最悪だとか・・・。


次郎の方は、心配そうに此方を見ている。

「次郎、どうした?」

「いや、なにも。」

こんな感じで、話が続かない。


まあ、良いか。


美菜恵は、一月ぐらい平和に過ごしたと思う。

その間の一週間ぐらい、紗也は行方不明になりました。

たぶん、瞳の次期本家の企みだと思うが。

それは、別の話…。



美菜恵とは会える日は、毎日喋っていた。

講義も殆ど被っているし…。


新しい友達が出来た感じだ。

少し気になっているのは、たまに体調悪そうだったり。

フラフラしていたりする。


此方に気がつくと気丈なふりをする。

さりげなく、聞いてみても大丈夫としか言わない。

何でも無いらしい。

もうしばらく様子を見て、強制的に病院に連れて行くかと考えていた矢先。


美菜恵が入院したと学校に知らせが入り、休学届が出された。

休学届ってそんなに悪いのか?

かなり心配になる。


美菜恵の入院したらしい病院を探してみる。

暇だったときに、年賀状でサプライズでもしようと思い美菜恵の住所は調べておいた。

美菜恵の家の近くの病院て言ったら、一件だけだった。


さてと、携帯電話で祖母に確認しておかないといけない。


「紗也です。聞きたいことがと・・・。

 祖母の機嫌を気にしながら話す。

 最近、電話で話した急に能力を持って、直ぐに眼に封印された娘が居るんですが、

 見舞いに行ってもよろしいでしょうか?」

本家の長にお伺いを立てる。

瞳として行動する訳では無いがそれに近いため、独断では行動できない。


「見舞いに行くのは構わないが、その娘に会うのは止めた方が良い。」

少し寂しそうに言う。


「何故です?」


「きっと、辛いぞ。それだけだ。」


「はあ、なんで辛いんですか?」

「それは行けば解る。

 紗也よ。

 感情に飲まれるな。

 人前では絶対に能力を使うな。

 これらを絶対忘れるな。」


姫塚家の本家の長の言いつけ。

「わ、わかりました。」

若干緊張が走る。


少し重い足取りで、美菜恵が入院した病院へ向かう。

受付で、入院している部屋を確認して面会を求める。


反応が少し変。

面会謝絶では無いようだが、取りあえず覚悟が必要か?

病室に向かいながら、絶対に能力は使ってはいけないと決意する。



ノックをして、一言いってから美菜恵の病室に入る。

顔を見る。

すると、美菜恵が言った。

「ああ、君か。

 美菜恵に何の用?」


「いや、お見舞いに。」

美菜恵の様子が変だ。


「そっか、ここは病院だったね。

 悪いところなんか無いんだけど、ちょっと動けなくてね。」

 苦しげに、かすかに笑う。


やっぱり、違和感がある。


「君は誰?」

「美菜恵だよ。

 きっと、君の知らない美菜恵。

 別の人格と言っても良いかもしれない。」


「え?」


「記憶喪失って訳でも無いから、君が紗也君て事も解るのだけど。

 僕がどういう感情を君に向けていたかは解らない。

 どんな行動を取っていたか知らない。」


「私は、長くない。

 美菜恵はもっと君と居たがっているかも知れない。

 けれど私はもう限界が近い。」




「どういうこと?」


「知らないかも知れないからと・・・。」

前置きをして話し始める。


「以前、次郎に刺された事がある。

 血は全く出なくて怪我もしなかったが、それから力が使えなくなったらしい。」


力が何の力か解らないらしいが・・・。


「すまなかた。

 断片的に、君を巻き込んだことは覚えている。

 どうやら、あの刺されたのが原因だと想う。

 胸を刺されて怪我をしない訳が無い。

 今なら何となく解る。

 あれは、きっと力を封印されたんだ。

 ちゃんと力を使えないのに、無理矢理私の中に押さえ込んでいる。

 その影響が、じわじわと体と心を蝕んでいたんだろう。

 次の朝から毎朝、体調不良に変な頭痛がずっと続いてた。

 体中が痛いし息をするのも苦しい。

 胸を掻きむしりたくなる様だった。」


感情のこもらない瞳で、紗也を見つめる美菜恵。


「美菜恵が私と入れ替わるときに伝言を残して行った。

 紗也、ありがとう。少しの間だったけど楽しかった。

 あとは、紗也に関する記憶や感情を私に残さずに殆どを持って行ったな。」


静かに、喋る美菜恵。


「この後数日で、脳が封印の影響に耐えられずに意識が消滅する。

 意識がなくなったらドナーにされるらしい。

 そう言う、同意書にサインさせられた。」


「次郎に封印を解かせれば、治らないの?」

原因が次郎の封印ならとそれを外せば良いと思う。


「それはきっと、無理だろうな。

 一度、次郎に封印が解除可能か聞いた記憶がある。

 そのときは、無理だと言われたよ。」


「私から次郎に聞いてみる。」


「いいよ、紗也。このままで。

 もう疲れたから・・・。

 強く望めば後、二回ぐらい人格交代が出来るかも知れないけど。

 美菜恵の伝言は伝えられたから。」


そっか・・・。

美菜恵の体調のことは次郎に聞いてみて、一応、祖母に相談してみよう。

この状況じゃ、絶対に助けてくれないと思うけど。


たぶん、美菜恵は餌に使われたのだろう。

より強い瞳や眼の能力者を釣るための生け贄。


そして釣られた次郎。

次郎のおかげで、久子や先輩は釣られなかったのか。

それとも、仕組んだ側の人間なのか・・・。


情報が少なすぎて、考えても解らなかった。



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